第1話異世界最初の2分間・・・どうしてこうなった!!
周り一面草原だった。
暖かい風が俺の頬を撫でるかのように吹いている。
そんな広大な草原にいるのは俺相原榑人と横の青い髪のウサギの耳をはやした美少女と鼻息を荒く立てている、虎の顔にしっぽに蛇をを付けた体長およそ4メートルは超えてるであろう生物だった。
はてはて、どういう状況だろうか?
横の女は目を、丸くして「なにこれ」的な目で俺を睨み、その横の女を見て鼻息を荒くする謎の生物。
とりあえず、ちょっとぐらいこの生物触ってもいいよね!!と思ってしまった。
ということで、満面の笑みで謎の生物に近づくと俺のほうに顔を向けた謎生物と目が合った。さすがにばれたらしい。
とりあえず、言葉は通じなさそうだからアイコンタクトで会話を試みようと思う。
(ちょっと君のこと調べてもいいかい?)と目で伝えると。
(ちょっとそこの横の女頂戴。)というような目で俺を見る謎生物。
そしてそんな俺たちを見て口をあわあわしている落ち着きのない女。
異世界最初の30秒にしてかなりカオスな状況が出来上がってしまった。
研究したい俺、あわあわする女、女がほしい野獣。どうして異世界30秒目からここまでのメンツがそろったのか?まあ、そんなことはいい。
それよりも俺は無視されたことをいいことに謎生物にそっと近づきボウボウに生えている体毛を1本抜き取った。
だが謎生物は特に気にした様子もなくいまだに女を見つめて鼻息を荒くしている。
女を囮?生贄?して俺は先ほど抜き取った体毛を観察する。
ワイヤーぐらいの細さながらかなりの強度を持っているように見える、それと抜き取ってから数秒で元々の色であったオレンジ色から黒色に変色した。
体毛や観察をして新種の生物の対応や生態について考えていると、横から悲鳴が聞こえてきた。
「ちょっと、そこの青年。
そんなキメラの体毛をじっくり観察してないで、私を助けたりしてはくれないかな?」
「こいつはキメラという名称なのか。」
と言ってまたまたキメラを観察していたら・・・横の女が叫んだ。
「ちょっと君、無視はよくないよ。
これでも私、月の女神なんだけど・・・てかなんで私がこんな平原にいるの?」
なんと、この女自称女神らしい。
あ、そう言えば、あのイケメン神なんか神連れてくとか適任がいるとか言ってた気がする。
ということはこの女・・・俺の実験女神か。
自称じゃなかったのか・・・。
「悪い、なんか俺が神様に頼んでモルモット用の神様お願いしたから、異世界に同行させられたみたいだぞ?」
「え、なにモルモットって?てかなんでそんな他人事の上に疑問形なの!?
どの神様のせいなの!?もしかしてアポロンさん!?」
と言って百面相する女神。
そういや、あの神の名前聞いてなかったっけ?
あ、でも。
「あいつ序列2位とか言ってたな。」
「序列2位ってことはやっぱりアポロンさんじゃない!!
なに、私なんで上司に人間なんかのモルモット用の女神として貸し出されたの!?」
そうは言うが、別に今は神よりこのキメラのほうが調べたいんだが・・・もういいや、この女神無視しよ。
そう決めた俺は、また再びキメラに目線を送ると。
何と目を放していた間にキメラが3体に増えているではありませんか!!
メスのようなキメラに、先ほどの荒い息を立てていたキメラに、この2体より少し小さなキメラ・・・もしかして親子だろうか?
ということはこの生物は生殖活動が可能ということか?
と考えていたら、メスキメラがオスキメラのほうを向き・・・怒っている?
なんかだんだん読めてきた、つまり自分の夫が浮気しそうになっていたわけか。
なんというか生物にも嫉妬感情があるという話は初めて聞いた。
まあ、そんなことよりも今は2体が立て込んでいる。
ちょうど1体の子供キメラは離れたところにいる。
ちょっとだけなら観察してもいいよね?
と思いさっそく近づいたら横から蛇のようなしっぽが迫ってきて…吹き飛ばされました。
あばら骨が何本か折れた音がしたがそんなことよりあの蛇もしかして虎とは別に意識があるのかもしれない。
でもこれはいい、抵抗してくるのか、いいじゃないか!!
動物だもんな、怖いか?怖いよな?でも俺はお前が知りたいんだ、だって異世界に来てみた初めての生物だ。興奮してるんだ、だからこそそれをお前にぶつけてやるよ。
「いい、いいじゃないか!!
それでこそ異世界だ、だからこそなにがなんでもお前を知り尽くしてやる!!」
そう言ってまた策なんてないがキメラに向かって走り出した。
最高に狂った笑みを浮かべながら。
研究したい、ただその思いだけが今おれを動かしていると実感できる。
そんな時、またしっぽが横から迫ってくる。
よく見てしっぽを掴み、土台にして乗り越える。
そしてあと1メートルほどのところに迫ったときに・・・それはやってきた。
草原の向こうから轟音が響いた。
その音は4キロほど先から聞こえた。
音の発生源には・・・俺を前の世界で殺したドラゴンがいた。
あいつも研究したい、だがっ!!
今来るべきはお前じゃない、今はお前なんかよりも目の前のこいつだ!!
そう思い俺はキメラの子供に向かって拳を振り上げ盛大に殴り飛ばした。
そして当然のごとく俺の腕に痛みが走った。
しょうがないことだろう、俺はキメラの体に痛みを与えられるほど強くないのだから、当然俺は鉄にでも殴りつけたような痛みを感じたよ。
でもこの痛みが俺を生きているという実感を感じさせてくれる!!
痛い、だが面白い!!
前世では危険なんかない安全が約束されたような環境で他人に用意された生物を研究していた。
だが、この世界ではどうだ?
自分が好きなように、自分の好きな生物を、自分で調べれる。
やはり転生したのは間違いじゃなかった、そこにいるキメラも、あの遠くにいるドラゴンもまだ見ぬ生物がたくさんいるだろう?
なら、こんな痛みなんかどうってことない。
「お前を俺のモルモットにしてやるよ!!」
そう宣言してまた殴りつけようとすると、
「ああ、もうっ!!なんで2分間でこんなに状況がカオスなのよ!!
でも時間がないからしょうがないか・・・えぇい、なるようになるでしょ。
初級しか使えなくなったみたいだけど・・・しょうがないよね、ランダム転移!!」
そんな女神の言葉とともに俺の視界は光に包まれた。
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