第3話


 〝南部通り〟――探偵事務所〝リアレンティオ〟――



 早朝、〝リアレンティオ〟の一室。客間とは別の――デスクが置いてあることからおそらく仕事部屋……にしては仕事と関係なさそうなものもちょいちょい転がっていた。

 

 となるとおそらく、私室だろう。


「…………――、…………――」


 そんな私室の広げられたソファベッドの上では一人の男が規則正しい寝息を立てていた。かけられている毛布は薄いもので男の呼吸に合わせて上下している。

 まるで、時計が時を刻んでいるかのようだ。

 

 その部屋には男以外の人影も存在していた。

 

 人影は眠っている男を一瞥すると、男が眠っている方とは逆の方――部屋にある窓へ向かうと閉じられているカーテンを勢いよく開いた。

 

 シャッという音ともに現れた窓からは朝日が入り込み綺麗に男を照らしていた。男は本能的に光から逃れるため寝返りを打とうとするが、それは人影によって阻止されてしまった。


「ほら、レーヴさん! 朝ですよ! 今日はお仕事って言っていたじゃないですか、起きてください!」

 

 人影――ミーリは男――レーヴがかけている毛布を思いっきり引っ張って取り上げる。


「……あと五分」


「何ベタなこと言っているんですか!」

 

 布団をはいでも起きようとしないレーヴをミーリはゆさゆさと揺らす。

 さすがにそこまでされては寝ていられなかったらしく、


「ふわあ、おはよう」

 

 とレーヴは大きなあくびとともに上半身を起こしていた。

 

 起き上がったレーヴは未だ寝ぼけ眼で若干うつらうつらとしている。さらに、服はパジャマ等の寝るときに着るゆったりとした服ではなく、ジャケットと黒いパンツという寝るには固く不適切な服だった。


「もう、おはようじゃないですよ! ソファじゃなくてちゃんとベッドで寝てくださいよ。あー、しわになっちゃっているじゃないですか……髪もボサボサですし、」


「いやー、昨日ちょっと作業してたら遅くなっちゃって……」

 

 たはたはと笑いながらレーヴは頭を掻いた。

 ただでさえ乱れている髪がさらに乱れる。


「今日の模擬戦の準備ですか?」


「そうそう。AAFのシステムチェックをしていたんだけど、気にしだしたら止まらなくなって、終わったときには夜の三時過ぎだったかな?」

 

 レーヴが言った言葉を聞いてミーリは呆れたような顔になった。


〝グランヴェルン〟の街は夜でも明るい。〝リアレンティオ〟の位置する通りは〝四製通り〟ではないためそこまでではないが、〝四製通り〟は夜にオープンし朝まで営業する店もあるほどだ。


 そういった街で暮らしていれば、夜の三時に起きていたことなどたいしたことではない。ないのだが、翌日に大事な仕事――〝リアレンティオ〟としては大仕事といってもいい仕事の前日、当日(?)に起きていていい時間ではないだろう。

 一応、仕事のための作業なのでミーリも怒りはしない。もしレーヴが遊びに言っていた場合はわからなかったが。


「ええと、それで色々面倒くさくなってそのままソファで……って感じかな?」


「体調は大丈夫なんですよね?」

 

 ミーリの目に疑わしげな感情が見え隠れしていた。


「あー、熱っぽい感じとか関節に違和感もないから大丈夫だと思う」

 

 レーヴは少しの間自身の体調を確かめるように額に手を当てたり、首や肩を回したりしていたが、問題ないと結論づけた。


「それなら、よしです! とりあえずその格好と見た目じゃまずいですから、レーヴさんはシャワーでも浴びてきてください。その間に私は朝ご飯作ってきますから」


「わかった。本当にごめん。あとありがとう」

 

 そう平謝りしつつレーヴは風呂場へと向かっていった。






 

 時間と場所は変わって〝リアレンティオ〟一階。キッチンとダイニングが一緒になった部屋では、今現在ミーリとレーヴの二人が向かい合って食事をしていた。


「今日の模擬戦というかパーティーの開始は一一時からだから、うん、後三時間くらいあるかな」

 

 レーヴはトーストを頬張りつつ部屋に掛けられた時計を見る。


「レーヴさん、食べながら話さないでください。お行儀悪いですよ」


「ああ、ごめん。でも再確認しておかないと不安でね」

 

 弟をしかる姉のような会話だ。

 

 年齢から言えばレーヴの方が上なのだが、〝リアレンティオ〟ではこういった光景がわりとよく見られる。

 仕事などはキチンとしているものの若干私生活が怪しいレーヴと基本的に真面目だが少し天然が入ったミーリ。

 なんだかんだこの二人の相性はいいのかもしれない。

 

 レーヴが何かを思い出したかのように自らの手をたたくとミーリに話しかける。


「あ、そうだミーリ。パーティーに着ていく服は決まった?」


「はい。一応ドレスコードに引っかかりそうにない服がありましたから、それを着ていく予定でしたけど……そういうレーヴさんは?」


「心配しなくてもスーツくらいは持ってるって。とは言ってもその下にパイロットスーツも着ておかなきゃいけないけどね」

 

 実にアンバランスな格好になりそうだ。

 

 レーヴはそう言って苦笑いをした。

 

 AAFに乗るためには専用のパイロットスーツが必要になる。濡れたシャツのように身体のラインが明確に浮き出るようなものではないが、身体をGから保護するためにある程度は肌に密着するように出来ている。

 水着よりは遥かにマシというのが率直な評価だろうか。

 

 なぜ、レーヴがそんな格好をしなければならないかというと社長に模擬戦だけでなく、その前のパーティー(製品発表会と親睦会を兼ね備えたようなもの)にも参加してほしいと言われたからだ。


「でも、そのパーティー、本当に私たちも行っていいんですか?」

 

 ミーリは直接社長から聞いたわけではないので、少し不安がっているようだった。まあ、社長からパーティーへ誘われることなどそうそうない……というか、人間関係によっては一生に一度すらないだろう。


「別に問題ないみたいだよ。模擬戦相手で依頼したのはこちらだから是非参加してくれって。ただ、決められたエリアから離れないようには言われたけど。そこは他の参加者に迷惑を掛けないようにってことだろうね」


「そうなると、食事なども報酬の一つということでしょうか?」


「多分ね」

 

 そう言ってレーヴは肩をすくめたが、脳内では別のことを考えていた。


(おそらく俺とミーリを足止めしている間に俺のAAFのデータをとるつもりだろう。外からのスキャニング程度はともかく、システムを探られるのはちょっとな。それにしてもあの社長、穏やかそうな顔つきの割にちゃっかりしてる。腹に一物抱えてなければ社長なんかやってられないんだろうが……)

 

 レーヴは自分たちをパーティーに参加させる社長の思惑には気づいていた。そもそも、〝リアレンティオ〟に依頼しに来る時点でそうであろうことは想像に難くない。

 

 とはいっても、気づいたからといってあの時点では依頼を受けざるを得ない。折角、探偵事務所としては微妙だが、評判がよくなってきた矢先に大企業である〝シェプファー社〟の依頼を断りでもしたらどうなるかはわからない。悪い噂が流れるだけですめば御の字くらいにはマズいことになるだろう。

 

 何か仕事でも入っていればよかったのだろうが先日、社長が来たときには仕事など一件も入っていなかった。まあ、それも下調べした上であの社長は来たのだろうとレーヴは推測している。証拠はないので所詮レーヴの想像だが。

 

 ちなみに、ここまで想像しているレーヴがなにもしていないはずもない。

 

 簡易的なものとはいえ対策はキチンととっていた。

 

 前日、というか当日の夜明け近くまでレーヴが作業していたのは、このためだ。

 

 レーヴの予想では、模擬戦が始まる前のパーティーでの時間的に出来そうなのは、〝外部からの簡易スキャニング〟と〝システムチェック〟の二種類だけだった。

 

 AAFは基本的にフレームに装甲をつけている構造上のため、分解するのは容易ではない。

 

 〝シェプファー社〟の設備と技術員であっても、ほんの一、二時間程度ではフレームから装甲を外すまではできたとしても、外して調べた後、元に戻すのは不可能といえた。

 

 ならば、対策は簡単だ。外部スキャニングに関しては精度も低く、おそらく装甲の外殻+αが参考程度にわかるくらいなので気にしない。

 

 そもそも外部スキャニングは遠距離から敵の大まかな種別などを知るために戦場で使うのが元々の使用法だ。それが転じて、整備の場では装甲の破損確認などに使われるようになった。

 

 レーヴが気にするべきはもう一つの方――〝システムチェック〟の方だ。

 

 システム――厳密にはAAFコックピット内にあるコンソール(モニター)には制御OSが入っていることはもちろん、各種ログなどが記録されている。主なものは使用兵装や行動ログだろうか。

 

 つまり、そこからデータを抜き出してしまえばそのAAFのことが大体わかることになっているのだ。

 

 それを避けるにはコンソールにロックを掛けておけばいいが、相手は仮にもAAFを作っている〝シェプファー社〟だ。単純な電子ロック程度、すぐに解除して、元に戻しておく程度造作も無いだろう。事実、戦場ではAAFが奪取されることはあまりあることではないが、珍しくもない。

 

 ならば、レーヴのAAFにアクセスした時点で発動するカウンターウィルスでも仕込んでおけばいいのだろうが、そんなことをすればまず恨まれるだろう。もしかしたら、難癖をつけてくるかもしれない。

 

 だから、レーヴはシステムの一部(AAFの武装ログ・レーヴ専用に最適化された戦闘データ等)を物理的に切り離してスタンドアローン化することにしたのだ。これにより、コックピット正面に取り付けられたコンソールにアクセスしてもこれらの情報は盗まれない。

 

 さらに、念のために武装や稼働状態のログなどもダミーデータとすり替えていた。

 これならば万が一とられても大丈夫だといえる。

 

 ウィルスを仕掛けられる可能性もあるが……まあ、それに関しては、レーヴはいっさい心配していなかった《・・・・・・・・・・・・》。

 

 朝食を食べ終わり、二人の大まかな準備が終わった頃、タイミングよく〝リアレンティオ〟の入り口に取り付けられた来客を知らせるベルが小気味いい音を立てた。

 

 それと同時に、レーヴの名を呼ぶ声が聞こえた。聞きやすい若い男の声だ。


「レーヴォルス・アシュトン様はいらっしゃいますでしょうか?」


「今、降ります」

 

 返事をしつつレーヴとミーリは一階へ降りる。すると開かれた玄関にはスーツ姿の男が立っていた。身長はレーヴと同じくらいで大男とは呼べないが小柄でもない。ただ、スーツの上からでもわかるほどに体つきがしっかりしている。

 

 男はレーヴとミーリを一瞥すると、


「レーヴォルス・アシュトン様とミーリ・ルーベンス様ですね。私は〝シェプファー社〟秘書スヴェン・レイフォードと申します。本日はよろしくお願いします」

 

 名刺をレーヴに手渡しお辞儀をした。随分と丁寧な対応だ。大企業ともなればこういったところもちゃんとしているのだろうか? とレーヴは一瞬考えるも今まで大企業に関わったことがないためよくわからなかった。


「表の通りの前にAAF用のトレーラーを用意しております。レーヴ様のAAFは武装をすべて外した状態でお乗せください。ミーリ様は先にこちらの車の方へどうぞ。レーヴ様も終わり次第ミーリ様と同じ車へ」

 

 レーヴ達が答えないのをスヴェンがどう捉えたのかはわからないが、これからの予定について話し始めた。やや、早口だが必要な情報はそろっている。


「わかりました。すぐにとってきます」

 

 レーヴもスヴェンに答えると今回の模擬戦で使うAAFを取りに行くべく〝リアレンティオ〟横の倉庫へと向かう。

 

 ミーリはスヴェンに促されるように、裏通りに存在すること自体が間違っているかのような車へと恐縮しながら乗り込んでいく。ミーリが乗り込んだ車は黒塗りのスマートな車で、内部も革張りと大変豪華なものだった。


 車はAAF程ではないが一般人が手にするのにはいささか高い。ただでさえ、そんな存在である車なのにミーリが乗ったのはそれ以上のものだ。ミーリが縮こまるのも当然といえた。


(お、落ち着きません。レーヴさん早く来てください!)

 

 ミーリがそんなことになっているとはつゆ知らず、レーヴは自身のAAF――〝クラウン〟を倉庫から出している最中だった。当たり前だが、コックピットに乗り込んで操縦している。

 

 通りへと出たレーヴは〝クラウン〟が周りの建物などに当たらないようにゆっくりと操りながらトレーラーへと歩みを進める。


(……歩きにくい)

 

 レーヴは〝クラウン〟の中で操縦桿を握りながら悪態をつく。

 

 街の郊外――裏通りのような所だといってもAAFが通行できるほどの広さは確保されているのがこの〝グランヴェルン〟という国だ。

 

 だが、今現在レーヴはこの通りを苦心しながら〝クラウン〟を進める羽目になっていた。

 

 なぜなら、人が多く一歩進めるのさえ注意しなければならない状況になっていたからである。

 

 普段、この通りはそこまで人が多くないのだが、今日に限ってはなぜか人が多かった。

 

 レーヴは気づいていなかったが、その理由は見たこともない豪華な車とレーヴが操るパステルグリーンの装甲をしたAAFが珍しいためだ。

 

 一応、見物人達も、AAFの移動に巻き込まれないよう数メートルほどは距離をとっているため、大丈夫ではあろうが、レーヴの神経をすり減らす一端となっていた。

 

 予想よりも時間が掛かりつつもレーヴはトレーラーの架台に〝クラウン〟に駐機態勢(屈ませる)をとらせると、コンソールから小型端末を抜き取る。


(これでよし)

 

 一つ頷いて、小型端末をしまい込むと、そのままコックピットから降りる。

 すでにトレーラー上では〝クラウン〟が倒れないように足下を固定している作業員達の姿があった。

 作業員達に軽くお願いしますと挨拶したレーヴは、車の方へとやや早足で向かっていく。

 

 自分のせいではないはずだが、本能的に遅くなったことを理解しているのだろう。

 

 レーヴが車に乗り込もうとすると、車外で待っていたスヴェンには報告がいっていたのか、それとも顔に出していないだけなのかはわからないが何も言われることはなかった。

 

 しかし、車に乗った後でミーリからは少し小言を言われてしまう。


「レーヴさん、遅いですよ」


「人が多くてトレーラーに積むのにちょっと時間掛かっちゃって。待たせたのは悪かったけど、なんでそんなにふくれてるの?」

 

 ミーリはレーヴが指摘したとおり頬が若干ふくれあがっていた。その様は大変可愛らしいのだが、私怒ってますとアピールするにはわかりやすい。


「こんな高級な車の中、一人で待っていることに緊張したからです!」


「あー、ごめん」

 

 ミーリの理由がよくわからないながらもレーヴは謝った。女性が男に対して怒っているときは謝れば大抵上手く行くと幼いときに教わった。

 子供に教えるものとしては間違いなくよくない知識のはずだが、今回は役にたったようだった。


「ふう、レーヴさんが来てくれたおかげか少し落ち着いてきました」


「なら、よかったかな」

 

 この手法が合っているのかはわからないが、ミーリが落ち着いたならそれでいいと考えることを放棄した。

 

 中でそんな会話をしつつ、黒塗りの車は目的地である〝シェプファー社〟へと向かっていく。

 

 同じ〝南部通り〟にあるだけあってそこまでの時間は掛からなかった。

 

 大凡、二〇分~三〇分といったところだろうか。


 〝シェプファー社〟の前で停止した車から降りた二人は目の前にある建物を見上げる。

 

 そこにあったのは巨大なビルだった。さすがに〝グランヴェルン〟中心部に存在する〝ラヴェイラ〟ほどではないが、そこは天下の大企業。当たり前だが、〝リアレンティオ〟の普通の一軒家と事務所が合体したような建物とは格が違う。


「大きいですねー」

 

 ミーリもその大きさには圧倒されているようだった。


「そうだね」

 

 レーヴも同意する。


 〝シェプファー社〟の建物は大きさもだが、外壁は殆どがガラス張りで、太陽光をキラリと反射している様は、ビルに清潔感を与えるのと共にまるでこちらを威圧しているかのようだった。

 

 スヴェンはそんな風に建物を見ている二人を田舎者と見下した様子もなく、淡々としていた。


「それではミーリ様はパーティー会場の方へ。私がご案内させていただきます。レーヴ様の方はこのまま模擬戦が行われる――」

 

 そう言って、スヴェンはビルと繋がっている大きな楕円状の建物の方を向く。


「あちらの弊社のアリーナの方で武装の確認などをお願いします」

 

 そういえばそれがあったとレーヴはビルから目線を外し、スヴェンが示した建物の方を向く。

 

 レーヴのAAF――〝クラウン〟は非武装の状態でトレーラーに乗せてある。このままでは模擬戦は出来ないというわけだ。


「わかりました」


「え、レーヴさんは一緒に行かないんですか……」

 

 スヴェンの話を聞いてまた、一人で待つのは少し嫌だなとミーリは思わず顔を暗くしてしまう。パーティー会場は車より豪華で人が多いことが明白だからだ。

 

 そんなミーリの表情をレーヴはどう捉えたのかわからないが、


「大丈夫、ミーリのその服似合っているよ。可愛いからパーティー会場でうくこともないって」

 

 ミーリの格好を上から下まで眺めるとニコリと笑みを浮かべ、肩をたたいた。

 

 ミーリの服装はパーティーでは定番といったドレス姿だが、彼女の可愛らしさによく似合う淡いピンクを基調に白や赤などで整えられたおとなしめのもの。

 

 スカートの裾の部分もあまり開きすぎていない――所謂Aラインと呼ばれる種類――であるため、派手なドレスではないのだが、背伸びをして無理に着ている感もでていない。

 それが、逆に彼女の魅力を存分に引き立てているといっていいだろう。


「い、今更ですか……」

 

 ミーリはレーヴの発言を聞いて、大変微妙な顔をした。

 

 自分の格好(服装)を褒められて喜ばない女性はいない。

 

 だが、ミーリがレーヴにこの格好を最初に見せたのはここに来る前――つまり〝リアレンティオ〟にいるときだ。さらに、その後、車に乗っているときなんかは常にこの格好だったわけだ。

 

 これでは確かにミーリの言うとおり〝今更〟だろう。

 

 だが、『え? なんか間違った?』みたいな疑問符を浮かべた顔をしているレーヴを見ているとまた、怒るのもばからしくなってしまった。


「わかりました。服装に疎いレーヴさんでさえいうなら大丈夫ですね。そんなに可愛いなら、もしかしたらパーティー会場の男性から言い寄られちゃうかもしれませんね」

 

 ミーリは悪戯っ子が浮かべるような笑みでそう言うと〝シェプファー社〟へと歩いて行く。

 

 それを見たレーヴは困ったように頬をかくとスヴェンの方を向く。


「あー、ミーリに変なのが近寄ってこないように見ていてもらってもいいですか?」

 

 本来、社長の秘書であるスヴェンに言う言葉ではないのはわかっているが、それでも言わずにはいられないレーヴだった。

 

 スヴェンはそんなレーヴを見て、少し驚いたように一瞬目を見開くがすぐに元の冷静な顔へと戻る。

 

 そして、


「ご安心ください。社長にお二人のことを任されていますので」

 

 恭しく頭を下げた。


「じゃあ、お願いします」

 

 レーヴもスヴェンへと頭を下げる。

 

 スヴェンは一言『はい』とだけ言うとミーリの後を追っていく。

 

 レーヴはそれを見て、トレーラーと一緒にアリーナのほうへ向かうのだった。


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