5 少女
ガガン墜落現場に程近い峠道。翡翠の鎧で身を覆った大男が、力強い歩調で闊歩する。
誰か探しているのか、時折足を止め周囲を見回す。ややあって、木陰で本を読んでいた浅黒い肌の少女に近づいていった。気付いた少女も読んでいた本から顔を上げる。
「想定外の事態だったが、うまく利用できたな。今頃準備もすっかり整っているだろう。あとはコイツをパトロンに届ければ、今回の御役目は全て終わりだ」
本の表紙を翡翠の騎士に見せる――吸血鬼キリィ=ポーターの日記だ。
少女が立ち上がる。長い筒状の部位が目を引く奇妙な道具を肩に回した帯に備え、軽妙な足取りで歩き出す。翡翠の騎士が、やはり無言のまま後に続いた。
途中、ガガン墜落現場を見やって、少女が少しだけ足を止める。
「いい仕事だったよ、ユートムの。だが本番はここからだ。主役は我らで、他は脇役」
静かに笑む。それは鉄のような意志と溶岩のような熱を帯びた凶相だった。
「お前たちが死者を蘇らせるなら……我らは世界を殺すまでだ」
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