4 教団
「……と、いった次第でござる」
クオンツァにて。神弟の前にひざまずき、今回の事件の報告を終える。声がかからないことから、イーブリーは己の主君が何か思案していることを察した。
「報告に至らない点がございましょうか?」
「いや、そうではない。今回の不死人騒動を改めて大局的に考えていたのだが、いささか不審な点に気付いてな。話が広まるのが少々早過ぎるとは思わんか」
「それだけの話だったということでございましょう。今のユートム教の優位をも……」
「そうではない。もっと最初の段階……東雲慈乃が不死人と旅を始めた頃のことだ。いったいアルメルティはどこからこの情報を手に入れた?」
「あそこの犬は不死人と旧知の間柄にござる……かの者が話したのでは?」
「どうかな。あの犬が個人的に不死人のことを知っていたとしても、それが目覚めたことや、アルメルティを目指したことを都合よく感づいたとは思えん」
「なるほど。何者かが情報を流した筋があるということでございまするか」
「それはいったい何者だ? どうしてそんなことをする必要があった。どんな利がある」
「……今回の一件、ラトリウム中の目が不死人とその周囲の動向に注がれましてござる。あるいはその者らの目的はそこにあったのではありますまいか」
「陽動ということだな。それも世界の全てを欺くほどの」
「されば……その者ら、相応の規模の陰謀を企てているのやもしれませぬな」
また面白い事態になるかもしれない。面の下で、イーブリーは喜悦に顔を歪めた。
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