3 騎士


 山の中を歩き回っていたゼフィーは、ようやく見付けたそれに大股で近づいていった。

 手頃な石を積んだだけの、言われなければ気付かないようなあまりに簡素な墓だった。


 骨は入っていない。正確には、骨さえ残らなかったのだ。ただ一握の砂だけが、この下に収められていると聞く。それがライゴウ=ガシュマールの遺した全てだった。


「世界をも揺るがして、結果がこれか。付き合い切れん愚図どもばかりであったな」


 悪態を並べて吐き捨てて、剣を抜いて墓に突き立てる。予備として用意したものだが、意外なところで役に立った――二百年ほど前に調達した、当時の愛剣だ。


「……我らの奇妙な縁もこれまでだ。二度と迷って出るではないぞ、色男よ」


 しばし墓を見詰め、決別の言葉を告げて、ゼフィーはその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る