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「なんでこんなところに連れてきたわけ? どーすんの? 馬鹿なの? 死ぬの? あたしこんな所で野垂れ死ぬの?」


彼女は俺に向かってブチ切れた。俺の胸元を両手でつかみ前後に振る。


「アンタなんとかしなさいよ! 守護天使なんでしょ!?」


彼女はひとしきり俺を力まかせに揺らすと、じっと俺の顔を睨みつけて、その後顔を歪め力なくその場に崩れ落ちた。


「やっぱり、私達……」


崩れ落ちた彼女は声を震わせて言う。


やっぱり私達――。


ただ静かに泣き始めた彼女を見下ろしたまま、俺は彼女の言葉に応えることなく今後をどうするべきか考えた。


半端な慰めは彼女の逆鱗に触れる気がした。そもそも彼女をいたわるような優しい言葉なぞ俺の頭では思いつかない。無視するのがきっと正解だ。


辺りはジャングル。鬱蒼と生い茂る木々に、むき出しのはらわたのような黄土色のぬかるんだ大地。空はまだ明るいが見渡すかぎり木々しか無く、生物は確認出来ない。


俺は彼女を放置し木に登る。


「ちょっとアンタ、どこ行くのよ!?」


彼女の感情の問題を片付けるよりこの場を切り抜ける手掛かりを探したほうが有益だ。何の手がかりもないこんな場所で惚けていても仕方がない。現場の情報を得るため俺は行動する。


泣きじゃくる彼女を無視して俺は木のてっぺんを目指す。幹を伝い限界まで登り、そこで枝葉をかき分けて視野を確保する。


空をみて、周辺と太陽の方向を確認する。


少し離れた場所に飛空艇の残骸と思われる物が見えた。


「ちょっと! ナニしてたのよ! こんな時に! 馬鹿じゃないの!?」


彼女は降りてきた俺にヒステリックに叫ぶ。


何と面倒な女か。こんなシチュエーションでどんな言葉をかければ彼女を慰められるのかなど俺にわかるはずもないのに。


俺はそんな彼女を無視して残骸があった方向へと歩きだす。


「は!? 待ちなさいよ! ちょっと! なに? 何なの!? 馬鹿なの!?」


喚き散らす彼女を放置し俺は進んだ。後ろの方で更に大きい声で叫ぶ彼女の声が聞こえたが、俺はそれを完全に無視した。


暫く歩くと、飛空艇の残骸と思われる尾翼と後方胴体部分が木々を押し潰す様に引っかかっているのが見えた。


ぱっと見た感じでは人の居る形跡はなかったが、辺りを慎重に見回し生存者が居るかを確認する。


泥濘んだ大地に人の足跡らしきものは見当たらない。


飛行機の後方胴体は無くなっている。


残骸の形状を見るに、俺の座っていた席を中心に球状に切り取られたのだろうと思われる。


『〈パッケージ〉』


手をかざし、命令言語コマンドを発すると残骸が綺麗にその場からかき消えた。

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