プラズミ
ライブ会場を飛び出した三人は
特に三人の目を引いたのは、その中で一番大きかった、デパートよりも大きい、岩のような頭部に何本かの脚がついているものだ。その両腕には斧のような鋭利なカマがあり、それがデパートを少しずつバラバラに分解していた。
「フォーチュンはまだ来ないのか!」
「駄目だね。まだ時間がかかりそうだ」
「あはは……あのデパートが豆腐に見えてきた」
「正気度すり減らしてる場合か」
鬼電はスマートフォンをキーボードのように両手で操作し始めた。
「こうなったら、秘密兵器を投入するしかないな。父さん母さんに見つかって面倒になるけど……。プラズミたん!」
「プラズミ、準備完了なのでス!」
「来い! 天才が造り上げしスーパーロボットなスーパーガーディアン! プラズミッ!」
どこかで地響きが鳴り、地下から巨大なガーディアンが現れた。鬼電のガーディアン・プラズミである。プラズミは頭から足元まで、全てが真っ赤に塗られていた。表面に光沢はなく、ざらざらした、悪く言えば粗悪な鉄を使っている印象が見受けられた。コックピットのジェットが噴射して、鬼電のもとへ一直線に向かってきた。
「鬼電サン! 3秒後にジャンプでス! 3、2、1……!」
「ふんっ!」
不格好なジャンプを決めた鬼電を、真っ赤なコックピットが連れ去っていった。コックピットは無事にプラズミの頭頂部に着地した。
搭乗の際に頭をぶつけた鬼電は、ゴシゴシと頭を擦りつつ、奈落獣の数を確認する。巨大奈落獣を入れて5体だった。
プラズミのコックピットは、据え置きゲームのコントローラーのようなものと画面だけというシンプルな設計になっている。というより、複雑なものを作るのが面倒だっただけである。十字キーで歩いたり走ったりの移動が可能で、10個ほどあるボタンを押せば武器などが勝手に発射されるという仕組みになっている。動くことによる体重の演算操作は鬼電には無理なのでプラズミたんが勝手に行う。
鬼電はコックピットに吊るしてあった自作の説明書をパラパラとめくる。大部分が白紙と無駄にデカい絵だったので後部に投げ捨てた。
「プラズミたん、武装は何が使えるんだっけ?」
「適当に作ったブレードと、『鬼電・オブ・サンダーボルト』が使用できまス!」
「よし、じゃあ早速『鬼電・オブ・サンダーボルト』を……!」
「ところで鬼電サン、メチャクチャ狙われてますヨ」
鬼電がサンダーボルト発射のボタンを押すと同時に、奈落獣が一斉にプラズミへの攻撃を開始した。プラズミと一緒に、コックピット内もガッコンガッコンと揺れる。放たれた雷撃はなんだかんだ奈落獣の一匹に当たった。その奈落獣は一瞬にして炭と化したが、他の奈落獣は依然としてプラズミへの攻撃を止めない。
「プラズミたぁ~ん! どうにかして~!」
「ア、そういえば。プラズミはジェット装置で空を自由に飛べるんでしタ!」
「そういえばジェットも作ったんだったね」
「思いつきで作った、ナンチャラカンチャラ・インターフェース機能もありましタ!」
コックピットに赤いゲージが表示された。敵もしくは敵の攻撃までの距離を、棒の長さで判別できるようにしようという鬼電の天才的な思いつきによって作られた。名前は鬼電が適当に付けた。
「ロボットなら始めから言ってよ!」
「スイマセン! 忘れてましタ! ついうっかり!」
「物忘れ機能、削除するね……」
コックピットのキーボードを叩いて物忘れ機能は綺麗に消去された。
「攻撃がきていまス! ジェットで回避を!」
「リズムゲームが得意な僕なら、これくらい楽勝だよ!」
鬼電がジェットボタンを押すより前に、機体が大きく揺れた。奈落獣の体当たりは普通にプラズミへ命中した。
「損傷率、40%くらいでス……」
「台パンしていいのかな?」
「攻撃を避けてからにしてくだサイ」
鬼電がジェットボタンを押す。プラズミはスッ……と宙へ浮き、2秒後にドッシーンと着地する。コックピット内に微妙な空気が流れる。
「ジェットとは。推力で飛行する装置のことである。ネットからの引用デス」
「飛んだって言わないよね今の」
「前から言おうと思ってたんでスけど……計算、間違ってましたヨ」
鬼電は気まぐれでジェット噴射の計算をしようと決断した。鬼電はそのような高度な計算式を立てられないので、プラズミたんがネットで式を検索して、単純計算になったものを鬼電に解かせた。鬼電は計算機を使わず、
「ロボットが空気を読むな」
「読んでませんヨ。巨大奈落獣が攻撃してきまス」
「……」
鬼電は無言でボタンを押す。プラズミはスッ……と宙へ浮き、奈落獣から発射された光線を回避した。その後ろでは、光線が直撃した一軒家がドロドロに溶けていた。
「……」
「鬼電サン?」
鬼電は無言でボタンを押す。プラズミはスッ……と宙へ浮いた。
「やばい。浮くのめっちゃ楽しい」
「空気を呼んでくだサイ」
ドッシーンと着地した。
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