加害
「は……?なんで……なんで、木森が……?」
俺は思わず後退りをする。
土足のまま、木森は我が家の廊下に一歩、踏み込んだ。
「ああ……連城はちゃんと気付いてくれるんだな。」
「…は?」
「昨日の沼沢なんて、俺がちょっと帽子深く被っただけで、全然俺だって気付かなかったからなぁ。」
昨日……沼沢?
沼沢は、昨日……
「まさか……まさか、木森。お前……」
「そうだよ、俺だ。俺が、俺が全部、やったんだ。」
木森は片手に持った金属バットを掲げる。
「最初は事故に見せかけようとしたんだけど……毒を使っちゃった時点で、それは無理かと思って。それに……。」
ため息をついた木森は、頭を掻く。
「……五十嵐さんが、沼沢の家に行ったり、その時にはガスの臭いはしなかったとかを沼沢の母親に言っちゃったせいで、大方の犯行時刻とか、人為的なものであるとかいろいろバレちゃって。」
金属バットをなぞる。
指に冷たい感触。
「正直、今回も五十嵐さんのせいでヤバいんだよなぁ……ホント邪魔だなぁ……五十嵐さん、やっぱり殺し……」
そこまで口にした時。
視界の端に連城が見えた。
慌てて避ける。
先程まで自分の顔があった場所には、連城の拳があった。
「なっ……!」
連城が睨み上げてくる。
いつも温厚な連城の、見たことがない顔だった。
尾田をイジメている時にしてくる注意だって、穏便に済ませようと笑いながら話してくる奴だ。
なのに、なのに、なんだ、この鋭い視線は。
金属バットを持つ手が震える。
落ち着け、武器を持っているこっちが有利だ。
そうだ、思い出せ。
こいつが最初に、尾田をイジメてる時に。
呑気に注意なんてしてきたから、他の奴らの注目を集めたんだ。
こいつがきっかけで。
三井たち四人が、馬鹿にし始めてきたんだ。
こいつが、こいつが……。
「あ、あぁあぁあぁあぁあ!」
木森がバットを振り回し始めたが、連城の頭は冷静だった。
こいつが俺の友達を酷い目に遇わせた。
そのことが。
いや、それ以上に。
「絶対に……。」
俺が。
「……許さねぇ!」
五十嵐を守る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます