意外
五十嵐が大きな欠伸をする。
「うーん……お腹空いた。」
「何か買ってこようか?今、家には何もないし。」
「いや……私が何か買ってくるよ。そこのコンビニ行くけど、何か欲しいものある?」
「あー……じゃあ、何か、菓子がいいな。」
「あいよ。」
五十嵐は立ち上がって、ツバ付きの帽子を被った。
「なんで男物の帽子なんだよ。」
「カッコいいだろ。」
五十嵐はニッと笑って部屋を出る。
「おーい、玄関の鍵閉めてくれよー。」
どうやら外に出たらしい五十嵐が、玄関のドア越しに話している。
「おーう。」
連城は返事はしたものの、動くのが面倒くさくて、床に寝転んだ。
連城の家のドアがいきなり開いた。
思わずアパートの陰に隠れたが、出てきたのは連城ではなかった。
五十嵐さんだ。
いつものような仏頂面でアパートの階段を降りている。
自転車に乗って走り去っていく五十嵐さんを見て、ホッとした。
家族が外出中なのはわかっていたけれど、五十嵐さんは計算外だ。
危うく鉢合わせするところだった。
能天気な連城と違い、五十嵐さんは目敏い。
遭遇すれば、まず疑われるだろう。
正直、昨日も五十嵐さんのせいで、計画が頓挫しそうだった
五十嵐さんが沼沢に何を言ったのかは知らない。
しかし、最悪、沼沢が逃げ出すことも有り得た。
沼沢が「家に引きこもる」という手段を取ったからよかったが。
手元のリストを見る。
五十嵐さんはリストには載っていない。
ある名前は、あの四人と、連城だ。
玄関のドアが開く音がした。
「おかえりー、五十嵐。早かったな。」
立ち上がり、玄関に向かう。
だが、返事がない。
「…は?」
玄関に立っているのは、五十嵐ではなかった。
俺は驚いて固まる。
「…なんで?」
「やあ、こんにちは。連城。」
木森は笑った。
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