四月第三週 火曜日 夜

 風呂上りの濡れた髪をバスタオルで拭きながら、俺はデスクトップPCでブラウザを起動してTw○tterをチェックしていた。ニュースアカウントのリストを作成しており、一日に一回はこうしてチェックしているのだ。

 俺はTw○tterでつぶやいて誰かとコミュニケーションを取るよりも、ニュースなどのツイートを眺める割合の方が多い。アプリ開発のこと以外で、今日の講義の相談のように誰かに意見を求めるようなことは滅多にしなかった。

 ……まぁそれは、俺が今までTw○tterでほとんどアプリ開発者たちとしか交流していなかったというのもあるのだが。

 今眺めているリストの一覧には、『ファミリーレストランチェーンのスグログループが大手IT企業の野田グループと吸収合併?』『天才!若干一二歳で生物学と脳医学の博士号取得!』といったつぶやきが載っていた。

 今度は、俺のフォロワーのつぶやきの一覧を表示させる。写真をアップロードしてるつぶやきが多い。花見の後、大島さんが食べ物の写真をアップしていたことで、『エル』内で食べ物をアップロードするのが流行っているのだ。それがどう転んだのかわからないが、付き合っているカップルが二人同時に、同じ物、ほとんどが食べ物だったが、を同時刻にアップするものも流行っていた。写真のつぶやきが多いのは、その所為だ。

 付き合っていれば一緒にいる時間も多くなり、同じものを食べる機会も多くなる。必然的に同じ写真をアップロードする回数も増えるため、この流れはある意味当然かもしれない。だが、この同時に同じ写真をアップロードするのは、ちょっとやりすぎなんじゃないか? わざわざ私たち付き合ってます! っていうのをアピールしているように思えて仕方がない。まったくけしからん。早く俺も参加したい。

 一通りTw○tterのつぶやきをチェックしたので、ブラウザを落とす。

 するとディスプレイに、ブラウザの裏で動いていたファイルのダウンロード画面が表示され、あ、ちょうどダウンロードが終わったみたいだ。ウィルススキャンを通過し、ファイルの安全性を保障するアイコンが表示される。続いてファイルをインストール。インストールしているのは今日渡部さんに強引に参加を求められたFPSだ。

 インストールが完了し、アプリケーションが起動。『Ultimate War XX』という名前が、ディスプレイにでかでかと表示された。

 俺はヘッドセットを装着し、既に起動してある音声チャットアプリ越しに待たせていた相手を呼び出した。

「もしもし? お待たせ」

『Fuck! おせぇえぞこの遅漏野郎!』

 大音量で返ってきた合成音声に、俺は思わず一度ヘッドセットをはずした。

「お前うるせーよ! 鼓膜破けたかと思ったわ!」

 ボリュームを調整する。こんなもんでいいか?

『Fuck! 知るかバカやろう!』

 うん。もうミュートにしよう。そうしよう。

「つーか何なの? チャット越しに荒々しい口調になるのは、まぁ今日チャットしていた時に予想していたものよりも大幅にずれてるけども、まぁ許容できる範囲だよ? ギリギリ! ギリギリね?」

『Fuck! うだうだ回りくどいんだよ! 一体てめぇは何が言いたいんだ!アァ?』

「……まぁ話が続かないから、一番疑問に思ってる点を聞かせてもらおう。何で合成音声なの?」

『Fuck! 決まってんだろうド低脳が! 一人でやるソロプレイもあるが、FPSの醍醐味と言ったら団体戦だ! 団体戦に必要なのはチームワーク、つまりコミュニケーション能力が重要になるってぇわけだ!』

 ……俺の挨拶を散々無視してた、コミュロスのお前がコミュ力を語るのかよ。

『じゃあネットゲームで円滑にコミュニケーションをするにはどうすればいいか? 決まってる! 答えは一つだ!』

「まぁ、音声チャットに落ち着くわな」

 ネットゲームは、複数ユーザが同時にプレイするのが基本だ。自分一人で解決できない問題も、他のプレイヤーと協力すればどうにかクリアすることが出来る。

 もちろん一人でプレイするソロプレイという方法もあるが、それだったらネットゲームをする意味があまりないと、俺は思う。特にFPSは、渡部さんが言った通り団体戦が面白い。

 FPSとは、簡単に言ってしまえば自分が一人の兵士となってプレイするゲームだ。プレイヤーは銃や機関銃を持ち、戦場を駆け巡る。ヘッドセットから聞こえてくる、鈍重な銃声と爆撃音。キャラクターがダメージを受け、ディスプレイが一瞬赤に染まる。

 ……だが、まだ俺は倒れてはいない! 手榴弾を敵に向かって投げつけ何とかピンチを脱出したものの、このままでは自分が力尽きるのは時間の問題。衛生兵は、衛生兵はどこだ? 衛生兵! 衛生兵! いやもう最高っすよホント! 血沸き肉踊るとはこのことデスはいっ!

 他にも敵を倒すだけではなく、陣地を制圧したりするフラッグ戦なんかもあるのだが、とにかく自分一人で戦うよりも複数人協力し合って戦った方が断然楽しい。

 そんなわけで、他のプレイヤーと意思疎通を図るためにFPSを含むネットゲームには文字ベースのチャット機能が付いている。これを使って意思表示をしながらゲームを進めていくのだ。

 だが、この機能は難点がある。いちいちキーボードで、文字を入力しなければならないという点だ。次の瞬間には自分のキャラクターが死んでしまうかもしれないのに、ちいちキーボードなんて打っていられない。打つ余裕があれば撃つ。それがFPSだ。

 あともう一つ。ゲームによっては、キーボードの特定のキーを使ってプレイをするものがある。W、A、S、Dはプレイヤーならほぼお馴染みと言っていい。この四つのキーは、大体キャラクターの移動に使うことが多い。

 だが、このキーが使えないと意思疎通なんてできっこない。母音の一つであるAが使われているのだ。日本語の五分の一がゲーム中で使えなくなる。

 定型文をF12など、普段使わないキーに割り当ててショートカットキーとして呼び出すことも出来るが、柔軟性にかけている。GO! GO! GO! とだけ言われても、一体どう動けばいいのかさっぱりだ。すると意思疎通をするためには、ネットゲームに付随していない機能を使うと言う選択肢に行き着く。そこで出てくるのが、音声チャットだ。

 ……音声チャットは、いい。ハンズフリーでしゃべりながらプレイでき、ほぼリアルタイムで意思疎通ができる。プレイしながら「後ろががら空きだぜ!」とか「援護する!」とか平気で言ってしまうのだ。アドレナリンがどばどば出ているので、全然恥ずかしくない。

『そうだ! 肥溜めで生まれたくせによくわかってるじゃねぇか!』

 酷い言われようだが、コミュニケーションロスを解消するために、音声チャットという解にたどり着いた俺を褒めてくれているのかね? これ。

『だったらもうわかってんだろ? そんな中音声チャットで一人女のプレイヤーが参加した時の状態がよ!』

「あー」

 ……なるほど。事情は大体わかった。ネットゲームはプレイヤーの割合がダントツで男が多い。その為、女性プレイヤーと知られるといい格好をしようとする男性プレイヤーが大体現れる。俺も人のことは言えないのだが、そういうタイプは女性経験が少ない。

 何かとゲーム内のアイテムを貢いだり、ストーカーすると手に負えなくなる。ネットゲーム内で普通に付き合うようになったカップルでも、一度別れると結構悲惨だ。

 生身でないため相手のプレイヤーをゲームを辞めるまで殺し続けて引退に追い込んだり、壮絶な結末を迎えたと言う話を聞いたのも、一つや二つじゃない。

 もちろんそれは一例だ。ネットゲームで知り合って現実で結婚し、幸せな家庭を築かれる方々だっているのだ。でも、渡部さんは残念ながら後者の経験はないようだった。

『ったく、アイツらこっちが女だとわかった途端シロウト扱いしやがって! 何が俺が守ってやる、だふざけんな! 余計なおせわだっつーんだよ!』

「お、おおぅ……」

 ……何やら思うことがあるらしい。

 合成音や口調が荒いのは、そうした輩への渡部さんなりの自衛手段なのだろう。

『そのくせ負けたら、女だから手加減してやっただァ? てめぇがよえーんだろうがクソが!勝手に彼氏面して、こっちに気がないとわかると雌豚扱いだァ? 冗談じゃねーぞ!』

 ヘッドセット越しに聞こえる振動音。渡部さん、壁ドンっすか?

『こっちはこっちで調べる楽しさを味わいながらゲームしてぇんだ! てめぇのちょっとWikiでかじった講釈聞くためにゲームやってるんじゃねぇえ! 半端な知識しかねぇ癖に、勝手にしゃしゃり出てきて、論破されたからって逆切れしてんじゃねーぞ! 女だからって、女だからってなめんじゃねぇええ!』

「……お前、だから金田先輩にあんなに噛み付いてたのか」

 渡部さんが、『演習Ⅰ』で金田先輩に喧嘩を売った日のことを思い出す。あの時、確かこいつは、半端者に教えてもらうことなんてない、って言ってたっけ。

 渡部さんには渡部さんなりに、色々思うことがあったのだろう。俺は少し、こいつのことを誤解していたのかもしれない。

 だが、あれはやり過ぎだ。

『Fuck! わかってんじゃねぇか!』

「だからって、あれは言い過ぎだろ」

『ああァ? てめぇぶっ殺すぞ!』

「まぁ聞け。まず金田先輩がお前を注意した発端は何だ? お前が、学校指定のWind○wsとLin○xをインストールしてこなかったからだろ?」

『それはッ!』

「それがわかってるから、お前も四條先生の言うことに納得して俺とペアで隔離されてるんだろ? しかも、お前が噛み付いた金田先輩と一緒のテーブルにさ」

『そうだけどよォ……』

「自分でもう気づいてないかもしれないけど、お前が金田先輩にやってることって、全部お前がネトゲで自分がされてきた『嫌なこと』だぞ。自分がされて嫌だったことを他の誰かにやるってことは、自分がそのクソ野郎と同じになるってことだ。意味はわかるだろう?」

 きっと、渡部さんも自分でその事に気がついている。

『そうだよォ……。でも、じゃあ、どうしろっていうんだよッ!』

 だからこそ、悩んでいるんだ。

「……お前はどうしたいんだよ」

『ハァア?』

「俺は人間、悩んでる時には既に答えが出てることが多いと思うんだ。でも、自分のプライドとか色んなもんが邪魔して、中々自分で決めた答え通りにできなかったりするのさ。だからそんな時、誰かに背中を押してもらいたかったりするんだよ」

 そうじゃなかったら、何でお前は今日俺をFPSになんて誘ったんだ?

「でも言っておくよ? どっかの誰かさんは背中を押すことは出来るけど、実際に歩き出すのは自分の意思がないと出来ないんだ。歩きたくないんなら、背中押されても踏ん張ればいいんだからね」

 今まで俺が話しかけても無視してたのに、聞き間違いかもしれないのに俺をFPSに誘ったのは、自分でもどうにかしたいと思ったからじゃないのか?

 ……だったら、もういい加減一歩踏み出せよ!

『……それでも、それでも踏ん張っちまう時だってあるだろうが!』

 それでも一歩を踏み出そうとしない渡部さんに、俺は無性に苛立った。

 そうかい。そんなに素直になるのが嫌なのか。

「なんだ。渡部さんは、踏ん張りきれないほど背中を蹴飛ばして欲しいのか」

 だったら俺がその背中、蹴飛ばしてやるよ!

『なッ、んだとぅゥうう!』

「まぁ、うだうだ言ってても仕方がない。ちょうどおあつらえ向きに、俺たちは今ゲームをしようとしている。だから、『ゲーム』をしよう」

『勝手に話を進めるなァ!』

「一対一の一本勝負。初期装備にして、フィールドは小規模エリアの市街地にしようか。プライベートエリアは渡部さんが作ってよ。渡部さんが勝てば、一つだけ俺に何でも命令できる権利をあげよう」

『……てめぇが勝ったら、あのTAに謝れって言うのかァ!』

「いいや」

『何……?』

「渡部さんの、したいようにすればいいよ」

 ヘッドフォン越しに、渡部さんがブチギレた音が聞こえた。

『ふっざけやがって! 上等だァ! 吠え面かかせてやるゼェ! 何で、何でテメェにそんなこと言われなきゃならねぇんだよぉおお!』

 渡部さんの言う通りだ。自分で言ってて耳が痛すぎる。女の子から告白してもらうのを目標としている俺に、こんな偉そうなことを言われたくないだろう。全く同意見だ。

 ゲームに既に登録済みのアカウントでログインして、渡部さんが用意してくれたプライベートエリアへ移動する。『Ultimate War XX』は仲間内だけでゲームが出来るように対戦エリアに鍵をかけることが出来るのだ。

 対戦が始まる前に自分のキャラクターを選択。選択肢は四つだ。簡単に説明しよう。

 突撃兵:名前の通り、狭いフィールドで突撃するスタイルが得意な兵士。マシンガンを持っており、これで弾をばら撒きながら敵陣へと突っ込ませる。

 衛生兵:攻撃力はあまりないが、その代わりダメージを受けた場合治療して自分を回復することが出来る。これは、自分自身以外にも味方のプレイヤーも治療することが出来るため、団体戦では重宝される。

 偵察兵:遠距離攻撃が得意な兵士。スナイパーライフルを装備しており、スコープを覗き込むことで、遠くの敵もよく見えるようになる。ライフルは一発撃つと次の弾を込める、リロードに時間がかかる。

 工兵:ロケットランチャーを持つ重装備の兵士。乗り物を分解したり、修理したりすることが出来る。攻撃力がある分、移動速度が遅い。戦車やジープが登場する中・大規模フィールド向き。

 それ以外に共通してナイフ、単発ずつしか撃てないハンドガン、そして手榴弾を二つ各兵士は所持している。

 他には課金すれば性能の高い武器も使えるが、今回は無課金の初期装備。対戦相手が選んだキャラクターは、ゲームが始まってみないと分からない仕様となっている。

「じゃあ、始めようか」

『いいぜッ! ぶっ殺してやるよ!』

 ゲームが、スタートする。

 画面の上真ん中に二人の兵士の顔が一つずつ表示された。俺と渡部さんの残数だ。互いに一つということは、一回死んでしまえば、その時点で『ゲーム』が終了する。

 残数に挟まれる形で表示されているアイコンは時間のカウンターだが、今は斜線が入っている。その意味は制限時間無制限。生き残っていた方が勝者の、サドンデスマッチであることを示していた。

 戦場は狭い市街地。移動していればすぐに交戦に入るだろう。と思っているそばから、俺のディスプレイの右側に爆音と共に硝煙が上がった。

 渡部さんが手榴弾を投げたのだ!

『オラァどうした! ジッとしてたって勝てねぇぞ!』

 画面左上に狭い市街地フィールドのマップが表示されている。そこに赤と青の点が二つ点灯する。赤が俺で、青が渡部さんの位置だ。

 一定以上接近したため、互いの位置が表示されたのだ。渡部さんはすぐそばにいる!

 硝煙の中から渡部さんの操るキャラクターが飛び出してくる。マシンガンを撃ちながらこちらに突っ込んできた。渡部さんが選んだキャラクターは、突撃兵だ!

 これは『Ultimate War XX』の中だから使える技だ。『Ultimate War XX』では、プレイヤーが投げた手榴弾は、自分のキャラクターにダメージを与えない仕様となっている。その為、このように目くらましとして手榴弾を 使うことができ、更には近くにいる敵にもダメージを与えれるという戦術が取れるのだ。渡部さんは、本気で俺を殺そうとしている!

『くたばれッ!』

 ヘッドセットを通して、突撃兵がばら撒くマシンガンのけたたましい叫び声が、渡部さんの絶叫が聞こえる。だが次の瞬間、全く別の音が俺のヘッドセットから聞こえた。

 この禍々しい戦場を、一直線に切り裂く音だった。渡部さんにも聞こえたはずだ。

 俺が操作する、偵察兵のスナイパーライフルが唸りを上げた音が!

 だがスナイパーライフルはリロードに時間がかかる。次にリロードが完了している頃には、俺のキャラクターは渡部さんの突撃兵に蜂の巣にされていることだろう。

 だが、その心配をする必要はない。

 結果は既に、画面に反映される。

『ヘッドショット、だとぉおおお!』

 弾丸がキャラクターの顔面に命中することを、ヘッドショットという。FPSにおいて、それは即死を意味するものだ。画面の右側に、どのキャラクターが誰のキャラクターを倒したのかが表示されていた。ヘッドショットの場合はそれに追加して、骸骨に銃で撃たれたアイコンが追加される。

 それが今、画面に表示されているのだ。

 それは、俺のキャラクターが、渡部さんのキャラクターをヘッドショットで倒したと言う表示だった。

「……ま、といわけだから」

『オイ、ちょっと待て!』

「往生際が悪いなぁ。ともかく後は渡部さんがしたいようにすればいいよ。俺は落ちるね」

 ヘッドセットから渡部さんの罵声が聞こえてきたが、俺はかまわず『Ultimate War XX』と音声チャットのアプリを終了させた。

 ヘッドセットを取りながら、先ほどのプレイを反芻する。渡部さんの敗因はズバリ、俺を甘く見すぎていたことだ。

 俺が他のゲームでFPSの経験者だと、渡部さんは既に知っている。だからこそ、俺を舐めずに手榴弾を使って確実に仕留めに来たのだ。手を抜いていたわけではない。

 だが、渡部さんは知らない。

 俺がかつて、真剣に二次元に行ったり二次元の美少女を三次元に連れてこようと、本気の本気で考えていた重度のオタクだということを。

 そんな俺が、『Ultimate War XX』をプレーする前に、全く何もしなかっただろうか?

 そんなわけがない。大学の帰り道にスマホで『Ultimate War XX』のオフィシャルサイトを全て眺め、プレイ方法を熟知し、家に帰ってからも『Ultimate War XX』の攻略Wikiをしらみつぶしに当たっていたのだ。

 ついでに言えば、『Ultimate War XX』の前作に当たる『Ultimate War X』はかなり高校の頃やりこんでいる。アニメとマンガを控えることはできても、これだけは辞めれなかったのだ。

 渡部さんが俺との会話の中で、俺がフィールドに市街地があることを知っていたり、プライベートエリアの存在を知っていることに疑問を持たれていたら俺が前作の経験者であることがバレていたかもしれないが、それは杞憂に終わって何よりだ。

 本当はもっと和やかな雰囲気でプレイ中にそのことを話して渡部さんを驚かせたかったのだが、成り行き上こうなってしまったのは仕方がないと思うしかないだろう。

 四條先生にも渡部さんの件はどうにかするように頼まれていたし、それにあんなにおびえた金田先輩を見るのは忍びなかった。

 まぁひとまず、この件はひとまずこれで解決するだろ。

 だが、結果的に俺は自分の抱えている問題を渡部さんに八つ当たりするような形になってしまった。あの苛立ちを、抑えることができなかった。

 デスクトップPCの電源を切る前に、もう一度Tw○tterを確認する。あるメーカーのモバイルルータに不具合が見つかり、デフォゲが変な値になってしまうらしい。よく見ると、夏輝が使っているモバイルルータだった。その他では、小川先輩と大島さんがコンビニスイーツの写真をアップロードしているつぶやきが印象的だった。

 

 次の『実習Ⅰ』の講義の時間。

 金田先輩に渡部さんが謝罪し、金田先輩がいまだかつてないほど狼狽し、その様子を見ていた四條先生が自分の手柄だと言わんばかりのドヤ顔をしていたことを、ここに付け加えておく。

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