第26話 帰還
「うっ・・ここは・・」
次郎は目を覚ますと、見覚えのある応接間だった。
「あっ!執権次郎様!!孔雪梅は久しくお待ちしておりました!」
部屋には、食欲のそそるいい匂いが充満している。
テーブルを見ると、
「あ、次郎さん。ようやく目が覚めた。よかったよかった。梅ちゃんからは聞いていたけど、心配したぞー。」ビールを飲みながら長宗我部はほろ酔い気分で言った。
やはり、あれは夢オチでは無く、現実に起きた事だったのか。テレビを見ても、今のところは報道されていないが、時間の問題だろう。
「さあ!今日のメイン料理は、芋頭扣肉です!京芋と豚バラ肉の蒸しものですね!」
「梅ちゃん!どの料理も最高だね。長生きしていれば、いい事もあるもんだ。俺は大器晩成だったんだな」長宗我部は嬉しそうに言った。
「さぁ次郎様、これからも忙しくなりますよ!鳥居家は遺産相続するにも、全員主たる層は惨殺されましたし、鳥居さんは、拘置所の生活となります。まずは、トリイサンの荒波社長とコンタクトを取り、全面的な支援を取り付けなければなりませんね」
孔雪梅は、この調子じゃ、全ての顛末を既に知っているという事か。やけに早い。孔はこんな可愛い顔して、龍と同じく人の生き死になどどうでもいいタイプという事なのか・・
「それにしても、荒波が支援なんか本当にしてくれるのかな?」
「してくれますとも!!執権次郎様!荒波社長は、ポイントオブノーリターン渡りましたのです!!」
「ポイントオブノーリターン?」
「戻れないところまで気付かずに行っちゃったって事でございます!執権次郎様!何しろ、この惨殺事件の直前に、鳥居さんの全財産を極秘裏に預かって、鳥居さんの意思を継ぐ密約を交わしているんです!通帳も印鑑も、鍵もあらゆる委任状も荒波社長は託されちゃったんです!これを警察にリークしたら、大変な事になるんでありまする!」
「つまり、鳥居さんの起こした惨殺事件に、荒波も関与していると見られて、鳥居家の問題ではなく、トリイサン全てを巻き込んだ事件性を疑われ、とんでもない事になるという事か。」
「早速、荒波社長に電話してみてくださいませ!」
「一応、鳥居さんの演技していた時に、木津根村の次郎村長から問い合わせが来る、という事は言っておいたけどさ。何て言ったらいいものかな」
「社外はもちろん、トリイサン社内でも悟られないように立ち回り、木津根村のプロジェクトを成功させろという命令を下すのでありまする!」
「その為に、
「そうでーす!トリイサンの会社のお金を使うんじゃなくて、鳥居さん個人の金でやるんですから、それを全部
「あの人を、脅すの?」
「脅すと言うより、提案するって感じですね。さ、電話かけますね。10人も切った人が何言ってるんですの。余裕ですよ。執権次郎様!」
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