第14話 ポンポコポン

なにやら外が騒がしい。ほとんど、自然の音しかしないようなこの集落で、初めての騒音だ。窓から覗いてみると・・・気味悪い集団が集まっている。あれだ。市町村合併反対運動の時の狸の被り物をしている連中だ。


「ポンポコポン!ポンポコポン!けがれた狐よ立ち去れい!ここは聖なる狸国たぬきこく!ポンポコポン!ポンポコポン!狸はご利益りやく狐はけがれ弘法様こうぼうさまの狸国!狐のいる場所ございません!ポンポコポン!ポンポコポン!」


「なにあれ?楽しそうだな。被り物して、介護施設のお遊戯よりもレベルがずっと高い。太鼓叩いてポンポコポンか。面白いね」


「感心してる場合じゃないですよ。執権次郎様。仕掛けてきましたね。すんなり勝たせてもらえるかと思ったんですが。狸穴まみあなの手下ですよ。あれは」


「へ?俺達に言ってるの?あれ?ポンポコポンって?」


「ポンポコポン!ポンポコポン!今日中に村から立ち去れい!さもなくば、明日は地獄行き!ポンポコポン!ポンポコポン!今日の丑の刻までに立ち去れい!穢れたこの家焼き討ちじゃ!警察も消防も来やしない!水も電気も使わせん!ポンポコポン!ポンポコポン!」


つい窓からポンポコポンに見とれていると、孔雪梅がポンポコポンに向かっていく。いつの間に?


「すみません。皆様、お祭りか何かが今日はございました?それとも私達に何か御用でございますか?」


女狐めぎつね出てきたポンポコポン!女狐火炙めぎつねひあぶりポンポコポン!災いもたらす売女ばいた淫婦いんぷ!何しに来やがったポンポコポン!」


段々、ポンポコポンが興奮してきた。暴徒化手前の熱気だ。窓から見ていた次郎は助けに行こうと考えたが、孔雪梅の事だ。考えがあっての事だろう。もうしばらく見守る事にした。


「キャッ!やめてください!あっ!ちょっと!ダメ!!イヤン!」


上から見ていると、どう見ても孔雪梅が自分から集団の中に入って行ったようにしか見えないんだが、もみくちゃにされて、輪姦されかかっているようにも映る。何をやってんだ?あいつは??


「ポンポコポン!ポンポコポン!」


なんか、ポンポコポンもこの状況に興奮してきてるぞ!どうなるんだ?


女狐めぎつね供えろポンポコポン!けがれをおとすぞポンポコポン!生贄いけにえ捧げろポンポコポン!」


あ、連れされていった。あちゃー。俺は見殺しにしちゃったのか?生贄いけにえって、あいつら正気か?あっ、電気が切れた。さっき水も電気も使わせんって言ってたけど、まさか本当に止めやがった。水道を確認すると、水も止まった。とんでもない奴らだなあ。


ふっと見ると、ちゃぶ台にメモが置いてある。


「執権次郎様!選挙日に会いましょう!検討を祈ります!というか闘いはまだ始まったばかり。これぐらいは朝飯前ですよね!」


あ、全ては手の内ってわけね。まぁそうだよな。孔雪梅があんな爺さん達にやられるわけがない。






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