第11話 2人からのスタート
「契約書に何が書かれているのか、私も詳しくは分かりません。本来、執権次郎様も一部持っているはずですが、ここに連れてこられた時は、それはヒドイ格好で」孔雪梅は顔を赤らめていった。
はっと自分の服を見ると、パジャマだ。
確かに、俺はあのヤバイ儀式までの記憶では、下半身は裸だった。何しろ、2日間糞尿を垂らしていた。
「このパジャマ、もしかして・・・」
「そうです!私のです!!」
確かに孔雪梅は背が高いし、俺も細いほうだから、パジャマなら以外と共有できるものなのか。それにしても・・・ヤバイ、興奮してきた。
「なにをもぞもぞしていらっしゃるのですか?執権次郎様」
「いや、なんでもない。それより、君は俺の家臣という事は、何でも言うことを聞くわけだな」
「左様でございます。執権次郎様」孔雪梅は目を輝かせた。
「じゃあ、教えてくれ。梅ちゃんはなんで君は俺の家臣になった?」
「私も龍様と契約を結んだからでございます!執権次郎様が結んだ、犬神の儀による契約のような、恐ろしい絶対的な契約ではございません。ビジネスライクな契約でございますが。」
「その内容は何だ?教えてくれない?」
「業務外につき、お答えしかねます。執権次郎様」
「なんだ。なんでも聞いてくれるわけでもないのか。まぁ、そりゃそうだよな。会社の社長だって部下にキスしろと言ったらセクハラで捕まる世の中だもんな?」
「キスして欲しいですか?執権次郎様」
「へ?」
「いや、キスぐらいだったら、別にいいかな?って思いまして。執権次郎様の為に忠義がそれで示せるなら・・・」
「いや!いいです。冗談冗談!ゴメン変なこと言って」
次郎はクッションで下腹部を隠しながら、慌てふためいた。
「それよりさ、梅ちゃん。その執権次郎様ってのやめてくれない?龍が俺に執権になれとか言ってたけど、なんか慣れないな」
「執権は、帝国において、事実上最高位でございます。こんな名誉な事はございません。執権次郎様」
「そんでさ。俺達これから何やるの?」
「帝国を築く為に、これからやらなければならない事は山積しております。執権次郎様」孔雪梅は早速ノートパソコンを取り出して、何やらファイルを開いた。
「こちらがこれから執権次郎様が執り行う計画となります。まず、最初の仕事はこれです!」
プロジェクト管理表なものをクリックすると出てきたタイトルに次郎はたまげた。
<孔雪梅と偽装夫婦を演じながら、コツコツと木津根村の住民から信頼を築き、1ヶ月後に行われる村長選挙で村長になる事>
●人口2千人弱の木津根村は
●選挙運動期間は7日と決められているが、2代続けて60年以上選挙をした事の無い村であり、公職選挙法による選挙日の告知などもされた形跡は無い。
・・・・・・
まだまだ長く、レポートが続いている。どうやらここに書かれた内容を読みこめば、なんとかなるように作ってくれているみたいだ。
「梅ちゃん。これから俺、ここに住むの?」
「申し訳ございません。執権次郎様。今は村長になる為に、志の高い真面目な青年でいていただく為、このような粗末な住居で申し訳ございません。ここで2人でしばらくは慎ましくも温かい家庭を演じてまいりませう!!私は筆頭家臣として、執権次郎様の健康と安全を管理する事は当然として、あらゆる助力ができるように準備してきておりまする!!」
逃げようかと思ったけど、孔雪梅は天然っぽくて可愛いし、ここに2人で住んでいいみたいだし、めしも旨いし、ちょっとやってみるか。
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