第81話 山田太郎殺人事件 34
◆
翌朝。
太陽が昇り、辺りが十分に明るくなった時間帯。
私達は全員『幻の塔』に向かっていた。
向かう目的はただ一つ。
あの塔にいるはずの山田太郎に会いに行くためだ。
塔の崩壊に気を付けながら、入り口の扉を開く。
塔の中は案外壊れていなかった。
「山田さーん。いませんかー?」
ポンコツ刑事の大声が響く。
すると一階の奥の部屋から、ドンと小さく音がした。
音がしたほうへと一行は駆け寄った。
するとその部屋には、窓の近くにあった手すりに結び付けられて伸びているロープによって両手を縛られていたスーツ姿でラバーマスクの男性がいた。
とてもぐったりとした様子だ。
「いました!」
ポンコツ刑事が真っ先に声を掛けて駆けつける。
「山田さん大丈夫ですか!?」
「……」
ラバーマスクが力なく上下する。意識はあるようだ。
ポンコツ刑事が手に持った刃物で彼の繋がれているロープを切りにかかる。
「すみません。本当は昨日の内に助けられれば良かったのですが、暗い中で半壊の塔に入る作業は作業は止めておいた方がよいと判断したので、迎えませんでした」
「……」
別に構いませんよと言わんばかりに首を横に振る。
「あ、取れました」
彼を傷つけないようにロープを切断することに成功したようだ。
はらりとロープが落ちる。
「そして、はい」
ガチャリ。
ポンコツ刑事がラバーマスクの男性のフリーになった両手に、手錠をはめた。
「……」
ラバーマスクが動揺した様に顔を上げる。
「あ、罪状述べますね」
ポンコツ刑事は、えーっと、と間を置いて告げる。
「シバさん、ゴミさん、イチノセさん殺害容疑で、山田さん、貴方を逮捕します。……あ、違いましたね」
そう言ってポンコツ刑事はラバーマスクに手を掛ける。
ラバーマスクの男は脱げないように抵抗するが、ポンコツ刑事は力づくで一気に引きはがす。
そしてついに、その素顔が白日に晒された。
「ニイさん。貴方を逮捕します」
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