第25話 託児所殺人事件 08
カメラなあに?
この託児所にもあるし、記憶と視界が正しければ、この部屋に来るまでの間にも監視カメラがいくつもあったはずだ。
であれば、そこに映ったものを見れば、犯人は一発で分かる。
ポンコツ刑事も流石に犯行に及んでいる犯人を見分けられないこともないだろう。馬鹿にし過ぎか。
そう少し反省した所で、
「ねーねー。あれってなあに?」
兄の問いに母が答える。
「あれはねぇ、カメラよぉ」
「カメラ?」
「……そうか!」
ポンコツ刑事が再び大声を上げる。察しはいいようだ。うるさいけど。
「おじいちゃん!」
彼女は老体の前まで足を運ぶ。しかしおじいちゃんはないだろ、おじいちゃんは。お前は孫か。
「あの監視カメラの映像に犯行の瞬間が見つかるかもしれないので、見せていただけないですか?」
「えっと……その……あの……」
ご老体はしどろもどろになる。ここで急病発生したのか、と少し心配になるが、そうではなく、何か言い出しにくいことがあるようだ。
「さあ! 提出を!」
「その……申し訳ありません」
老人が頭を下げた。
「コストダウンの為、この託児所にあるカメラは全て――『偽物』です」
「偽物だってっ!?」
「正確にいえば、ただの飾りです。犯罪抑制用の」
それで殺人事件が起きてしまっているのだから元も子もない。
だが、注目してほしいのはそこではない。
私は次のメッセージを兄に伝える。
『ダレガシッテタ』
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