180話 トレーシー・マッカリー

「……失礼しました」


 トレーシーが俺たちの目の前に座り、恥ずかしそうに頭を下げる。

 汚れたドレスを着替え、髪を整え直し、メイクもばっちり直して、鼻には綿を詰めている…………っておい!


「なんて残念な仕上がりなんだ……」

「……美人なのにね」


 こそこそと、エステラと意見交換を行う。同意見のようだ。


 現在、食事の準備を進めているということで、俺たちは引き続き応接室にて待機している。

 トレーシーの着替えもあって、もう結構長くここにいる。正午はとっくに過ぎている。予定より早く着いたにもかかわらずだ。


 ちなみに、応接室には背の低いテーブルを挟むように四人掛けのソファが向かい合って置かれ、上座にひときわ豪華な一人掛けのソファが置いてある。


 てっきりトレーシーはそこに座ると思ったのだが、四人掛けの上座に着席した。


「さぁ、皆様もどうぞおかけください。そして、少し貧血気味で、真っ先に腰をかけてしまった非礼をお許しくださいね」

「いや……うん。しっかりと体を休めるといいよ。貧血は、怖いからね」

「ごふっ!」

「ぅぉおいっ!? また鼻血噴いたぞ、この領主!?」

「エステラ様、ご自重ください」

「えっ、ボク!? ボクのせいなの!?」


 鼻血に驚く俺、ナタリアに叱られ戸惑うエステラ。そんな俺たちのわちゃわちゃした空気をよそに、テーブルに飛んだ赤いしぶきを慌てて拭き取っているネネ。

 いやいや、まずはトレーシーを拭いてやれよ。またドレスが汚れるぞ。


 しかし、そんなことなど気にする素振りもなく、心なしかきらきらとしたゲッソリフェイスでトレーシーが弱~く微笑む。


「も、……申し訳ございません…………お優しいお言葉をかけていただいて…………つい……」


「つい」で鼻血を噴くな。

 やはりというか、ここの領主も変態カテゴリーに属しているようだ。領主ってこんなんばっかだな。……胸もぺったんこだし。


「ボ、ボクたちも、座らせてもらおうか……ね?」


 トレーシーが来るまでは好き勝手に座っていたのだが、トレーシーがどこに座るのかが分からなかったために、着替えが終わる頃を見計らって立って待っていたのだ。が、しかし…………今は違う理由で座るのが難しい。……服、汚されたくないしな。


 しかしながら……


「はぁ…………本物、なのですね……」


 エステラを見つめるトレーシーの目がヤバい。

 完全に恋する乙女の目だ。


 まさかこいつ、エステラを男だと思ってんじゃないだろうな?


 あまりに熱い熱視線を受け、エステラの表情が少し強張っている。


「は、初めてでは、ないですよね? 以前、二十九区の領主の館で会った時はもっとこう……普通、だったような気がするのですが?」


 エステラよ。言葉を選んだつもりかもしれんが、それは暗に「お前、今スゲェ変だぞ」と言ってるようなものだぞ? まぁ、変だけど。


 しかしながら、トレーシーはそんな言葉のニュアンスに不快感を見せることもなく、照れ笑いを浮かべた。


「あの時は、他の領主もおりましたし、あぁいった場で個人的な感情を露呈させるのは憚られますので」

「それは、まぁ、そうですよね……はは」


 あの重苦しい場で、「エステラ様、萌え~」とは出来ないよな。

 まぁ、納得だ。


「あ、あの、エステラ様。どうぞ、お座りください」


 緊張しつつ、トレーシーがソファを指し示す。

 ガッチガチだな。


 こんなので、よくあの時素知らぬ顔を貫けたもんだな。

『BU』の同調圧力ってのは、こういう感情すらも凌駕するものなのか……?

 だとしたら、相当息苦しい組織だな『BU』ってのは。


 なんにせよ、いつまでも突っ立っているわけにはいかないので、俺たちはソファに向かう。

 とりあえず、ひときわ豪華な椅子はスルーして、トレーシーの向かいの四人掛けのソファに並んで腰かける。

 俺とナタリアでエステラを挟むような配置だ。


「改めまして、トレーシーさん」

「は、はいっ!」


 エステラに名を呼ばれただけで、トレーシーの瞳の中には無数の星がきらめき、つむじからはハートが次々に飛び出していく。……ような光景を幻視した。

 こいつは、本気でエステラのことが好きなんだな。その好きのベクトルがどこに向いているのかは、今のところ分からないが。


「ほ、本日は、お招きいただきありがとうございます。改めてお礼を……」

「お礼だなんてとんでもないです!」


 か細い声が、その時ばかりは大きくはっきりと吐き出され、エステラの肩がビクンと震える。

 自身の大きな声に、見る見る顔を赤く染め、トレーシーはソファの上で身を縮める。


「す、すみません……大きな声を出してしまいまして」

「あ、いえ。お気になさらずに」

「はぁ……お優しい。エステラ様」


 エステラの言葉に、トレーシーはうっとりとした視線を向ける。

 もはや、何をやってもエステラならそれだけでいいといった感じだ。


 チラチラと、こちらに助けを求めるような視線を向けるエステラ。だがすまんな。俺の手には負えねぇよ。

 どうやら、こいつはエステラの管轄のようなので、俺は丸投げを決め込むことにした。


「トレーシー様。お食事前ですが、皆様にコーヒーをお入れしましょうか?」


 テーブルの血を拭き終わったネネがトレーシーにそう持ちかけると、先ほどまでぽや~んととろけていたトレーシーの目が一瞬で鋭く釣り上がる。


「ネネッ! 会話の腰を折るとは何事だ!? 弁えろ!」

「も、申し訳ございませんっ!」


 突然の大声に、俺たちは三人揃って「びくっ!?」と体を震わせた。

 豹変だ。

 なんなんだこの変わり様は? 本当に同一人物かと疑いたくすらなってくる。


 戸惑う俺たちをよそに、トレーシーはなおもネネを叱責する。


「そもそも、コーヒーは食後と相場が決まっておるではないかっ! 貴様には常識というものがないのかっ!?」

「か、重ね重ね申し訳ありませんっ!」

「もうよい! 下がれ!」

「は、はい! 失礼いたします!」


 慌てて頭を下げ、ネネが足早に、走らない程度の速度でドアへと急ぐ。

 ドアの前でこちらへ向き直り、もう一度深く頭を下げて退室しようとするネネ。

 そんなネネに、再びトレーシーの怒号が飛ぶ。


「ネネッ! お客様を残して部屋を出る給仕長がどこにいる! そこまで下がれとは言っておらん!」

「もっ、申し訳ございませんっ!」


 風切り音が聞こえそうなほどの勢いで頭を下げ、きょろきょろと室内を見回した後、ネネは俺たちのいるテーブルから限りなく離れた部屋の隅へと移動し、所在なさげに部屋の角に立った。

 そろっと、こちらを窺うような視線を向け、目が合いそうになると慌てて視線を逸らす。

 ……すげぇ、怯えてるな。


「…………申し訳ありません、皆様」


 ほんの一瞬、眉間に深いしわを刻んだ後、トレーシーは弱々しい笑みを浮かべて謝罪の言葉を口にした。

 何に対する「申し訳ありません」なのかが分かりにくい。

「ウチの給仕長がドンクサくて――」なのか、「怒鳴るような姿を見せてしまって――」なのか。


「そういえば、四十二区にはコーヒーを飲む習慣があるのですよね? 私、とても嬉しかったです」


 話題を変えるように、声音を変えてトレーシーがしゃべり出す。

 四十二区の情報を持っているということは、『BU』として調べさせたのか、個人的に興味を持って調べさせたのか……はたまた、エステラ好きが高じて遊びにでも来たのかもしれない。


 なんにせよ、自区の名産品が大好きな領主の領内で流通しているということが素直に嬉しいようで、トレーシーは頬を赤く染め幸せそうな表情を見せている。


 ……だからこそ、余計に違和感がある。

 こんな純粋な笑みを浮かべるような人物がどうして――


「エステラ様は、……その、……コーヒーはお好きですか」

「えぇ。最近は結構飲むようになりましたよ。この二人も、コーヒーが好きで、特に彼はかなりコーヒーにうるさい男なんです」

「まぁ、そうなのですか。では是非、我が区のコーヒーをご賞味いただきたいですわ」

「…………」

「…………」

「…………ネネッ!」

「は、はいっ!」

「私が『ご賞味いただきたい』と言ったのだ! なぜすぐにコーヒーを用意しないっ!?」

「もっ、申し訳ありません!」

「謝罪など要らぬ! すぐ行動を起こせっ!」

「はいっ、ただいま!」


 ――給仕長に対してはこんなに語気が強くなるのか。そして……


「…………っ」


 どうして、怒鳴った後にはいつもこれほどまでに悲痛な表情を浮かべるのか。


「申し訳ありません。度々……」

「あ、いえ……お気になさらずに」


 場の空気がいちいちぎこちなくなる。

 そして、その度にトレーシーは取り繕うように笑みを浮かべて空気を変えようと明るい声で話を始める。


「そういえば、エステラ様は我が区のコーヒーをお飲みなったことはあるのですか?」

「あぁ……まぁ。一応……。街の喫茶店でいただきましたよ」

「いけません!」


 グッと身を乗り出し、トレーシーが必死な視線を向けてくる。


「街の喫茶店のコーヒーは、本物のコーヒーではないのです!」


 どこかのグルメが口にしそうなセリフを口にして、トレーシーはまた悲しそうな表情を浮かべる。


「コーヒーは、入れ方一つで味が大きく変わります。香りも全然違うものになります。だからこそ、美味しいコーヒーを入れるためには細心の注意を怠ってはいけない……ですが、この街では『豆の消費量』が定められており、コーヒーのように需要の少ない豆は無理矢理にでも消費しないと使い切れなくて……」

「その結果、味よりも使用量を増やすことが優先されている……ってわけか」

「…………は、はい。とても、悲しいことなのですが」


 俺のタメ口に怒りを感じた素振りはなかった。

『癇癪姫』なんて呼ばれ方をしている領主なので、こういう非礼には口やかましく突っかかってくるのではないかと思ったのだが……スルーだ。

 そればかりか、やや避けられているような感じすらする。


「飲む人のことを考えれば、あのような入れ方は出来ないはずなのですが……ままなりませんね」


 トレーシーはやりきれない想いをその表情に表す。

 こいつ自身は、コーヒーを美味しく飲んでもらいたいと思っているらしい。

 まぁ、コーヒー豆の産地である二十七区の領主なのだから、コーヒーの需要が増えてくれた方がありがたいだろう。

 あと、何より、作物を作るヤツはそいつに愛情を注ぎ込む傾向が強い。

 モーマットが、「ウチの野菜は天下一品だ!」などと豪語しているように、愛情を注いで栽培すればその分、作物やそれが原材料となる製品には並々ならぬ思い入れを抱くようになる。


 ――ってことは、今ネネが入れてくれているコーヒーは期待してもよさそうだ。


 おそらく、喫茶店のコーヒーはローストも挽きも適当か滅茶苦茶かのどちらかだったのだろう。とにかく豆を消費する。それが第一目標となっていたのだ。

 そんなもんが美味いはずがない。


 だが、トレーシーはコーヒーを美味しく飲んでもらいたいと思っているようで、それならばおかしな入れ方はしないだろう。

 こいつがまともな発想の人間でよかった。


「コーヒーは味にこだわり、最良の分量を、最良の方法で使用する――そして、余ったコーヒー豆を豆のまま押しつけるのが基本ですのに……っ」


 って、こら!

 押しつけるのが基本とか、よく平気な顔で抜かせるな、この領主は。

 全然まともな発想ではなかったようだ。


 コーヒーはあまり馴染みのない飲み物で、需要自体が少ない。だから、コーヒーを売りにしている喫茶店には、あまり客が入っていなかった。

 客がいないので、コーヒー豆を押しつけることも出来ない。

 だから、コーヒー豆を乱暴に使用するしかない。

 結果、クッソ不味いコーヒーが出来上がり、そしてまた客足が遠のく…………という、負のスパイラルにはまり込んでいるようだ。


 バカだなぁ。

 味が合わずに離れた客は、二度と戻ってはこないぞ。

 誰しも、不味いものは口にしたくないのだ。食わず嫌いなんて言葉があるほど、人は口に合わない食べ物を避ける。飲み物だって同じだ。

 そして、食べ物を選ぶ基準には、これまでの経験に基づいた「信頼」が大きく作用する。


 第一印象が「不味い!」だと、二度目はない。

 たとえ、美味いコーヒーが別の場所に存在していたとしても、だ。


「お、お待たせ、いたしました……コーヒーになります」


 カートにカップを載せてネネがやって来る。

 トレーシーの表情が一瞬強張るが、今回は怒声を飲み込んだようだ。

 もしかしたら、「コーヒーに『なります』とはなんだ!?」って、店員の接客態度に厳しい系男子的な指摘をしようとしたのかもしれない。


 怒声こそ飛ばなかったが、それでも、トレーシーの鋭い視線を感じているのだろう。ネネはガチガチに緊張しているようだ。

 カチカチとカップとソーサーがぶつかる音を立てながら、コーヒーが俺たちの前へと配られる。もうちょい、落ち着け。


 さて……と、配られたコーヒーに目をやる。

 立ち上る香りはいいし、色もきれいだ。今回は期待出来そうだな。


「さぁ、皆様。どうぞお召し上がりください」


『コーヒーは食後と相場が決まっている』と言った口で、俺たちに食前のコーヒーを勧めてくる。

 どうにも、こいつの人格には不自然なまでの歪さを感じる。


 エステラと目配せをして、同時にカップを取る。

 どうせナタリアは俺たちが飲んだ後でないと手を付けないだろうから、俺とエステラが先にいただくことにする。

 コーヒーを飲むようになったとはいえ、エステラはジネットのコーヒーしか知らない。

 一人で先に飲ませて感想を求められでもしたら、言葉に窮する可能性がある。そのため、俺も同時に味を見ようというわけだ。


 喫茶店での失敗があるから、今度は恐る恐る口を付ける。最悪、クソ不味くても吐き出したりしないように用心しなくては。


 コーヒーを口に含むと、とても強い酸味を感じた。

 隣でエステラの肩が跳ねる。……あぁ、そういえば、こいつは酸味の強いコーヒーは飲んだことなかったかもなぁ。

 戸惑っているのが丸分かりな目で俺へ視線を寄越してくる。表情に出さないようにしているのだろうが、横目でチラチラこっち見てたら不審に思われるっつうの。


「癖は強いが、いい味だ。キレがあって印象深い味だな」


 ジネットのコーヒーは、どちらかといえばコクが強くクセになるが、後味が爽やかなので食事を邪魔しないような味わいだ。

 一方こちらは、コーヒーを楽しむためのコーヒーといった味わいで、インパクトが非常に強い。通が好みそうな味わいを持っている。

 それ故に、コーヒー初心者のエステラには、ちょっと良さが分からないかもしれない。そう思って助け船を出してやったのだが……


「そ……そう、ですか…………お、お口に合いましたのであれば、こ、光栄……です」


 トレーシーが妙におどおどしはじめた。

 エステラに対する照れとは明らかに違う、恐怖に似た反応……なんというか、男が苦手なのかと思わせるような怯え方だ。まぁ、女領主ってことは箱入り娘だろうから、男慣れしていないのかもしれないけどな。


「確かに、今まで飲んでいたコーヒーとは全然違う味だね」

「本当ですかっ? ……よかったぁ」


 エステラの言葉を、「他とは一味違って美味しい」という意味合いで解釈したのだろう、トレーシーの表情がぱぁっと晴れやかになる。

 エステラの本意は、「これボクの知ってるコーヒーじゃない……飲みにくい」って感じなんだろうけどな。


 にしても……


 トレーシーという人物は表情がころころとよく変わる。変わり過ぎると言ってもいいくらいだ。

 エステラに向けるとろけるような表情と、俺に向ける恐怖を滲ませた表情、そして、ネネに向ける必要以上の憤怒の表情と……その後に覗かせる悲痛な表情。


 どうにも噛み合わない。

 俺の中でトレーシーという人物が上手く組み上がらない。


「あの、申し訳ありません。一つよろしいでしょうか」


 ナタリアが姿勢よく挙手をしている。といっても、小学生のように腕をぴーんと伸ばしているのではなく、顔付近にそっと添えるような小さな挙手だ。

 控えめな挙手をしながらエステラへと視線を向けている。

 コーヒーに口を付けたようで、カップの縁が少し湿っていた。


 発言の許可をエステラに求めるのは、ナタリアの発言の責任がエステラに向かうからだ。

 エステラがトレーシーへ視線を向けると、トレーシーがこくりと頷く。

 こういう回りくどいやり方で発言の許しを得た後、ナタリアはネネへと顔を向ける。


「ミルクと、可能であればお砂糖をいただけますか?」

「ミルクと、砂糖……ですか?」

「はい。四十二区では、コーヒーにミルクとお砂糖を入れていただいているのです。ですので、可能であればこちらでもそのようにさせていただきたいのですが、よろしいですか?」


 あぁ、そうか。と、俺は今さら思い至る。

 ナタリアはともかく、苦いのが苦手なエステラはいつもミルクをたっぷり入れてコーヒーを飲んでいるのだ。

 俺はいつもブラックで飲んでいるから気にもしなかった。


 エステラが恥をかかないよう、自分が欲しているというていで、エステラのためにミルクと砂糖を要求したのか。気遣いがこまやかだな、給仕長。


「四十二区では、コーヒーにミルクとお砂糖を入れるのですか?」

「え……」


 ナタリアの言葉を聞いて、トレーシーがエステラに尋ねる。

 ここら辺がややこしいのだが、貴族の中には他所の給仕とは口を利かないという者も少なくないそうだ。あくまで、自分と話す権利があるのは対等な地位にいる者だけだと。

 トレーシーもそうなのかもしれない。


 で、質問を向けられたエステラはというと……


「え、えぇ、まぁ。コーヒー本来の味わいを堪能するためには、ブラックが最適なのかもしれませんが、その…………そ、そう! 子供! 大人から子供まで、幅広い人たちにコーヒーの美味しさを楽しんでもらおうと、そのようにしたんです!」

「それは素晴らしい発想ですわ、エステラ様っ」


「コーヒー苦いから飲めな~い」という本音を上手く隠して、上手いこと取り繕っていた。

 外交上手というか、口八丁というか……きっと今ごろ、心臓が悲鳴を上げているんだろうな。聞こえてきそうだよ、外壁が薄いから。


「ネネ。すぐにミルクとお砂糖を用意なさい。私も飲んでみたくなりました」

「は、はい……ですが、砂糖は、その……とても高価ですので、我が館にもあまり在庫が……」

「ネネッ!」

「は、はいっ!」


 そうして、また、トレーシーの表情が変わる。

 この豹変ぶりが『癇癪姫』などという呼び名を生み出したのだろう。


「お客様をもてなすのに、出資を渋るとは何事だっ!? 貴様は私に恥をかかせる気か!?」

「も、申し訳……」

「もう聞き飽きたわ、そのセリフは! 直ちに厨房へ行きミルクとお砂糖を持ってまいるのだ!」

「で、ですが、現在ランチの準備中ですので、砂糖を持ち出すのは……」

「足りぬのならば買ってまいれっ! お客様をお待たせするな! 走れ、ネネッ!」

「は、はい! 直ちに買ってまいりますっ!」


 半泣きで頭を下げ、ネネが部屋を飛び出していく。

 本当に買いに行くつもりらしい。


 四十二区付近で出回っている砂糖は、一部貴族から『貧民砂糖』などと呼ばれている。なのでおそらく、今ネネが買いに行ったのはいわゆる『貴族砂糖』の方なのだろう。かなり高価で希少らしいが……果たして、手に入るのかな。


「………………っはぁ」


 ドアが閉まり、足音が遠ざかっていき、やがて聞こえなくなると、トレーシが苦しそうにため息を漏らした。

 まるで、空気にトゲが付いていて、喉を引っかきながら吐き出されたかのような、苦しそうなため息だった。


「一つ、いいですか?」


 エステラが、苦くて飲めないコーヒーのカップを指でなぞりながら、トレーシーへと問いかける。

 最初は視線を合わせずに、トレーシーがこちらを向いたと確信した後にそっと視線を向ける。

 この動きは相手に、「こちらはすべて分かっているのだぞ」ということを無言のまま伝える効果がある。

 相手が自分の目を覗き込んでくるのは、同時に向いた視線がぶつかるよりももっと強い威圧を感じるものだ。「相手は勝利を確信しているからこそ臆さないのだ」と、脳が勝手に解釈してしまうから。


「今、ここには、ボクたちしかいません。……内緒話をするには、打ってつけではないですか?」

「え…………いえ、でもそれは」

「ボクは、今日を境にもっとあなたと親しくなりたいと思っていますよ。トレーシー『さん』」

「…………エステラ様……」


 軽く、気取らない笑みを浮かべる。それで相手の警戒心を和らげる。

 エステラは、こういうところだけは本当に上手い。

 相手を追い詰めて突き落とすような心理戦は苦手なクセに、相手がひた隠しにしている悩みや弱点を引き出して手を差し伸べられる状態に持ち込む心理戦だけは、な。


 要するに、自分から進んでババを引きに行くような心理戦専門のお人好しなのだ。


「…………はぁ」


 重いため息を落とし、トレーシーががくりとうな垂れる。

 顔を覆い隠すように手を広げ、そして両手で前髪をくしゃっと掴む。


 話をしようと決めたとしても、いざ口を開く前には緊張するものだ。

 特に、誰にも打ち明けることが出来ずにいた秘密の片鱗を垣間見せるような時には。


 どうやら、『癇癪姫』には誰にも言えない秘密がありそうだ。


 俺たちは、トレーシーの準備が整うのを黙って見つめていた。


「本当は、もっと楽しいランチになるはずでしたのに……」

「発想の逆転だよ、トレーシーさん。ランチを楽しいものにするために、心の重りをここで吐き出すのさ」

「エステラ様…………ふふ、素敵な考え方ですね」


 親密さをアピールしてトレーシーの緊張を緩和させようとしているのだろう、エステラが敬語をやめた。……それは結構勇気のいる行動で、下手をすれば不興を買い追い出されても文句が言えないようなことなのだが……幸い、トレーシーは不快に思うどころか砕けた口調を喜んでいる様子だった。


「私は、自分が『癇癪姫』などと呼ばれていることを知っています。そして、それは事実なのです」

「けれど……本当は、あんな風にネネさんを怒りたくはないんだね?」


 単刀直入に、エステラがトレーシーに尋ねる。

 トレーシーは感情の起伏が激しい。

 時に、こいつの中には複数の人格が内在してるのではないかと錯覚してしまうほどに。


 こいつが二重人格者ではないというのであれば、その理由は一つ……


「無理して怒っているうちに、それが癖にでもなったってところか?」


 俺の言葉に、トレーシーの肩が震える。

 俯き、震える吐息を漏らし、静かに、弱々しく「……はい」と、肯定した。


 あまりにエスカレートした悪癖は、止め時を見失い、当初の目的すら置き去りにして思いもよらない方向へ暴走してしまうものだ。

 例えるなら――

 気に入らない相手に正論をぶつけられた時に、重箱の隅を突いてでも相手の非を探そうと躍起になって喚き散らしてしまうような、そんな感情に似ている。


 だが、止め時を見失ったそれは、得てして悲劇しか生み出さない。

 人は、大切なものをなくしてしまうまで、そのありがたみに気が付けない生き物だからな。


「……こんなことを、皆様にお話していいものか……恥の上塗り……いえ、それ以前に非礼に当たるかもしれませんが……」

「構わないよ。むしろ聞かせてくれると嬉しいな」

「では、頑張ってお話させていただきますね」


 恥ずかしそうな顔を覗かせ、トレーシーはエステラを見つめてはにかむ。

 エステラを喜ばせるのがそんなに嬉しいか?

 ただな、「話してくれると嬉しい」ってのは、「人の話を聞くのが大好き!」ってわけじゃないからな? 「相談してごらん」ってことだからな?


 まぁ、しゃべってくれるなら聞こうか。


「ネネは幼い頃から一緒に育った妹のような存在なのですが、昔からどこか頼りなく、また悲観的で、自分に自信がなく……あ、言い忘れていましたが、私が今十九でネネが十六になります。ですので、幼い頃よりまるで姉妹のように育ってきたのです」


 本当に頑張ってしゃべっている。

 これも、エステラを喜ばせたいがためか?

 モテるな、エステラ。……女に。


「私は一人娘で、幼い頃より領主になるための教育を受けてまいりました。父の方針で、直系の者に跡を継がせたいということでしたので……。私は生まれながらに領主になることが義務付けられていました。ですが……もともと、体が丈夫ではなかった私は、それが不安で……重荷で……」


 やはり、トレーシーの色白はそういう理由があるらしい。

 きっと、昔からあまり表で遊ぶようなことは出来なかったのだろう。


「そんな時に、一緒にいたのがネネさんなんだね?」

「はい、そうです」


 エステラが敬語を使わない言葉で話しかけると、トレーシーはそんなことが嬉しいのか、一度言葉を区切って明確な笑みを浮かべる。

 へこみつつも浮かべた笑みには、先ほどよりも軽やかで愛嬌があった。


「私は、給仕長はネネ以外あり得ないと思っています。けれど、ネネは……健康ではあるのですが心が弱く、泣き虫で、口下手で、人見知りでした…………領主が病弱なのに、給仕長までもがそんな有様では……」


 そんな話の合間に、ナタリアがそっと俺に耳打ちをしてくる。


「領主様のお体に不安がある場合や、幼い等の理由で発言力が低い場合などは、給仕長がその代理人となり矢面に立ち、人を動かし、時には締めつけを行うのが慣例なのです」


 領主の中では常識となっているのであろう情報を素早く教えてくれる。

 要するに、頼りない領主にはおっかない給仕長をあてがって代わりに睨みを利かせてもらう、ってことのようだ。


 が。

 二十七区はトレーシーもネネも前に出るタイプではなかった。と、いうわけだ。


「それで、ネネには強くなってもらおうと、弱音を吐いた時、泣きそうになった時には、心を鬼にして注意をしてきたんです…………その結果……」


 エスカレートし過ぎて、理不尽なことでまで罵倒してしまうようになったと。

 そして、ネネのあの反応……あっちはあっちで、怒鳴られ癖が付いてしまっているようだ。

 要するに「怒られないように顔色を窺っている」という状態だ。

 それは、ともすれば「気を遣っている」と錯覚しがちで、しかしながら実態は真逆なのだ。それは単に、「自分の意志で行動していない」ということに過ぎない。

「これでいいですか」「これはダメですか」と逐一顔色を窺い、「怒られないための予防線」を張るのに終始してしまう。

 そうすることで、自身の言動に『責任』を持てなくなっていくのだ。


 無責任な言動ほど他人を不愉快にさせ、不利益を与え、不幸を呼び込むものはない。


 そして、そんな無責任な言動にまた、トレーシーは怒鳴ったりしていたのだろう。

 そんな様を見た者が、トレーシーを『癇癪姫』などと呼ぶようになったのだ。


 そりゃそうだ。

 怒鳴る理由が、本人にも止められない悪癖なのだ。正当な叱責でない以上、それは癇癪にしか映らないだろう。


「私も、気が付いています。私の叱責は理不尽であると……けれど、どうしても止められないのです…………つい、怒鳴ってしまって…………」


 そして、あとで深くへこむ。

 自己嫌悪は時に心を殺してしまう。……危険だな、こいつらはどっちも。


「だから……だから私は…………」


 テーブルに手を突き、トレーシーが身を乗り出してくる。

 エステラに顔を近付け、必死な形相で訴えかける。


「エステラ様のようになりたいと思ったのですっ!」

「ボ……ボクみたいに、って?」


 数秒見つめ合った後、トレーシーは自身の格好に気が付き、「きゃっ!? ……す、すみません」と、ソファに座り直し、体の向きをずらして照れ隠しに髪を弄り始めた。


 そして、髪を弄りつつも呼吸を整えて、ゆっくりと口を開く。


「私、実は四十一区で行われた大食い大会を見ていたんです」

「えっ!?」


 意外な言葉が飛び出したものだ。

 エステラも驚いたようで、口を開けて固まっている。


 四十二区に街門を作ろうとして隣の四十一区と揉めた際、俺たちは四十区までを巻き込んで大食い大会を開催した。

 二日に分けて大々的に行われたその大会は、多くの観衆が見守る中、最終的に四十二区の優勝という形で幕を閉じた。……閉じる寸前には、一悶着あったりしたのだが。


 そこに、トレーシーもいたというのだ。


「私は、リカルドさんと面識がありまして。……あ、もちろん、揶揄されるようなやましいことは一切なく、私よりも少し前に領主の座に就いた若い領主として、いろいろお話を伺ったり、相談に乗ってもらったりしたんです」


 若造が領主になると例外なく舐められる。

 そうさせないために、時には大胆な政策を取ったり、我武者羅に成果だけを追い求めたりと、若者らしい暴走を演じてしまうことが多い。


 若い領主であるトレーシーは、直近の先輩であるリカルドに近しい立場の者として助力を求めたようだった。


「その伝手で、大食い大会の決勝戦を観戦させていただいたんです」


 ……ってことは、こいつは四十一区の応援席に座ってたってわけで…………決勝戦の後、俺は四十一区の客席にいる連中全員にケンカを吹っかけたりしたわけで…………


「オオバヤシロさん。……あなたは、とても恐ろしい方なのだと思いました」

「は、はは…………そ、すか」


 あ、あぁ……なるほど。それでさっきから、俺が話しかけるとびくびく怯えられてたわけか……なんでだろう、変な汗が出る。

 まさか、あの群衆の中に二十七区の領主がいるとは…………領主だの貴族だの、権力を持つ連中には下手にケンカを売らないようにしようと思っていたんだけどな…………先に言ってくれりゃあいいのに。


「今でもはっきりと覚えています。会場を埋め尽くした、あの重苦しい空気。そして、客席にいた者が等しく植えつけられた……恐怖を」


 うん……そこはまぁ、そうなるように俺が仕向けたわけで…………作戦大成功だったんだな、って、再確認しちゃったな。


「……私は、あの時、あの場所で…………自分はここで死ぬのだと、覚悟をしました」


 オーバーなヤツだな、まったく。笑っちゃうな、あっはっはっ………………くっ、笑えん。そんなに怖かったかな?


「そんな時、天使が舞い降りたのですっ」


 ぱぁぁあ……っと表情が晴れやかになり、瞳からキラキラ輝く星が飛び出してきそうなほど煌めく。


 重苦しい会場に舞い降りた天使。その名は――


「あなたです、エステラ様っ!」


 ――エステラっていうらしい。

 う~ん……それも俺が仕組んだことだしなぁ……

 悪役を追い払って好感度を爆上げさせようという俺の目論見は見事成功していたってわけだ。

 素直に喜ぶべきことなのかも、しれないな。……なんか釈然としない気分だけれども。


「エステラ様はあの殺伐とした会場に舞い降り、その美しい声で、会場内を埋め尽くしていた恐怖や怒り、不安や悲しみといったすべての負の感情を洗い流してくださったのです」

「い、いや……それはさすがにオーバーだと思…………」

「威風堂々とした佇まいで、地獄の縁に追い詰められていた者たちへ優しい笑みを向けてくださった」

「……あの、トレーシーさん……もう、その辺で……」

「あの時の麗しい笑顔に、私、ハートを射抜かれ……それ以来、何をする時もエステラ様のことばかりが頭に浮かんで……寝ても覚めてもエステラ様! 泣いても笑ってもエステラ様!」

「分かった! もういい! もういいから!」


 熱く語るトレーシーを落ち着かせようと、エステラが腰を浮かせ懸命に腕を振る。

 だが、そんな姿すらも、トレーシーには舞いを踊っているようにでも見えているらしく……とてもうっとりとした視線でエステラを見つめている。


「一目で虜になった私は、大会の後しばらく仕事が手に付かない日々が続き、数週間悩んだ挙句、リカルドさんのもとへと向かったのです。あの、美しい領主様のことを教えてほしいと!」


 そんな情報を聞いて、あからさまにエステラの表情が歪む。

 物凄く嫌そうな顔で、恐る恐る、聞きたくないけど聞かないのはもっと気持ちが悪いという質問を口にした。


「で…………リカルドはなんて言ってたの、かな?」

「はい。リカルドさんはこうおっしゃいました。『あいつは……微笑みの領主だ』と」

「ごふっ!」


 エステラの口から、なんだか分からない汁が勢いよく噴出した。

 ばっちぃヤツだな。


 ほとばしったエステラ汁は、体内でもエステラを苦しめているようで、気管にでも詰まったのだろう、ゲホゴホと盛大にむせている。

 ナタリアがエステラの背中をさすっているが、顔が思いっきり半笑いだ。全身全霊、全力の半笑いだ。


 まぁ、大食い大会から数週間ってことは、共同開発云々の話し合いの大筋が決まった後あたりで、リカルドの中のエステラに対する偏見がなくなった直後くらいなのだろう。

 これまでの反動か、大会でのエステラの言動を高く評価した結果か、物凄い高評価だな。『微笑みの領主』……ぷぷぷっ!


「笑うな、ヤシロ! ナタリアァ!」

「おいおい、怒鳴るなよ、『微笑みの領主』……ぷっ!」

「そうですよ、『微笑みの領主』様。笑顔を心がけてください……ぷっ!」

「むぁぁああ! 覚えてろよぉ、二人ともぉ!」


『微笑みの領主』が泣いている。

 リカルドに言われたというのが、最高に気持ちが悪いポイントだな。どの顔で言ったんだ、『あいつは……微笑みの領主だ』なんて。…………ぷぷぷーっ!


「ヤシロ……」


 顔を真っ赤に染め、でも瞳は死後半年くらい経った魚のように濁らせて、エステラが口から魂と共に言葉を吐き出していく。


「これまで、ヤップロックやベッコがヤシロを崇め奉っている光景を、最高のエンターテイメントだと思って眺めていたんだけれど…………反省するよ。キツいね、これ……」


 泣きべそをかきながら、エステラが謝罪の言葉を述べる。 

 つか、そんな目で見てやがったのか…………報いだな。


 半泣きの領主を、半笑いの給仕長が介抱している。……なんだ、この絵面?


「私も……エステラ様のように、優しくなれれば…………いつも微笑みを絶やさず、人のことを思いやれる領主になれれば……と、憧れは日々募る一方でした」

「いや、あの……ボクはそんな大それた領主では……」

「私は…………っ! ……もう、ネネを怒りたくは、ないのです…………大切な、幼馴染ですから……」


 不安に語尾が震え、掠れる息が切実さを物語る。


「お願いします、エステラ様! 私の『癇癪』を、直す手助けをしていただけませんか!? 『微笑みの領主』の、その力でっ!」


 ソファから降り、床に片膝をついて、神に祈るようなポーズを取る。

 いきなり拝まれたエステラは困り顔ながらも…………こんな言葉を口にした。


「出来る範囲で、なら……」


 まぁ、そうだろうな。

 こんな頼まれ方をすれば、断ることなんか不可能なんだろう、こいつには。


「でも、『微笑みの領主』としてっていうのだけは、断固拒否させてもらうからねっ! 同じ新米の、若い、女の領主として、君の手助けをするよ!」

「ありがとうございますっ、『微笑みの領主』様っ!」

「だから、それやめてって!」


 なんだか、どたばたと慌ただしくも、エステラがまた厄介な人助けを背負い込んだようだ。

 だが……相手は二十七区の領主にして、――『BU』の一角。


 上手くすれば、『BU』を突き崩す一手になるかもしれない……


「エステラ」


 だから、この『チャンス』を逃すわけにはいかねぇ。


「俺が手伝ってやろう、そいつの『悪癖』の克服を。だからな――」


 そして、俺の行う『人助け』には、相応の対価が必要になる。


「トレーシー、お前は俺たち側に付け」


『BU』の情報を寄越し、時にはこちらから働きかけ、そして――多数決の際はこちら側に手を上げろ。


「私の『悪癖』が治り、エステラ様のお役に立てるのなら……検討します」


 さすがに「分かりました」とは、即断出来ないだろう。今はそれでいい。

 あとは結果をもって納得させてやるさ。


「それからエステラ」


 この『人助け』はお前が言い出したことだから、こいつの責任者はもちろんお前ということになる。だからな……


「見事解決したら、お駄賃寄越せな」

「…………たまには純粋な善意のみで動いてみたらどうだい?」


 そんなもんは、淡水魚に「海で暮らせ」と言っているようなもんだ。


「まったく……。おまけしてくれると、ボクは信じているからね」

「信じるのはお前の勝手だぞ」

「……もうっ」


 頬をぷっくりと膨らませて、よわ~いネコパンチを俺の二の腕にぶつける。

 ささやかな抵抗だ。八つ当たりとも言う。


 ま、それくらいの八つ当たりなら、甘んじて受けてやってもいいけどな。






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