142G.ストラテジスト フェスタビリティー

.


 天の川銀河、ノーマ・流域ライン、アルベンピルスク星系グループ、第6惑星ソライア501。 

 静止衛星軌道、騎乗競技会場。


『グッモーニンというワケでアルベンピルスクグループ競技会……二日目ぇえええ!』


 傘の上下に尖塔を立てたような巨大構造体、その中の大勢の人間がいる会場に、底抜けに明るい女性の声が響き渡った。

 内部照明と空中投影されたホログラムも、一斉に派手なデザインへと変わる。

 一分前まで静かだった施設内には、軽快な音楽が流れるようになっていた。

 就寝時間を終え公共エリアに出て来た人々も、テンポの良いBGMに自然と足取りも軽くなる。


『おはようございます御来場の皆さん騎乗競技二日目障害回避射撃の開始まで3時間となりました!

 前日までのエレガントゥ~な競技内容とは異なり本日からは皆さんお待ちかね、ハイスピードでダイナミックな競技をお楽しみいただけると思います!』


『えー全く中身の無いコメントだったので補足させていただきますと、コース飛行と編隊飛行は理想的な内容にどれだけ近付けるかが評価のしどころであるのに対し、本日と明日の障害回避射撃及び模擬戦は対応力と純粋な技術が試される模範解答の無い競技となります。

 何が起こるか予想不可能であり、出場チームも持てるポテンシャル全てを発揮したパフォーマンスを見せてくれることでしょう』


『はいサラッと頭悪い子の如く言われた気がしますが要するにアクシデントと派手なアクションが期待できるとこういうワケですねー!

 それとそれと本日障害回避射撃は競技フィールドのセッティングの合間に出場チームのアウトラインとオペレーターのインタビューも挟んで行きますねーお楽しみにッ!!』


 緑の髪が左右に暴れているグラマラスお姉さんが飛び跳ね、画面反対側にいるピンク髪の小さな無表情少女は微動だにしなかった。

 本日の競技解説役となるふたりだが、前日の物静かなおじさんふたりとはキャスティングが違い過ぎる。


 お祭りはここからが本番、ということだ。


               ◇


 騎乗競技会場、出場者用格納庫ハンガーエリア。

 聖エヴァンジェイル学園専用船、『ディアーラピス』450メートル。


 シルバーグレーと濃紺の先鋭型宇宙船内では、女子生徒たちが慌ただしく朝の準備の最中だった。


「寝過ぎましたー!」

「アビーさんあの目覚まし音が凄過ぎて頭がビックリしちゃうんですけど…………」

「ごめんなさいプリマさんのお部屋のミストバス貸してください!」

「どうせ着替えるならもうEVRスーツ着ちゃってよくないですか?」


 競技会初日の疲れもあった為か、ほとんどの少女たちが予定時間より遅い起床となっている。

 そのようなワケで大慌てなお嬢様どもだが、肌や髪の手入れ、シャワー、朝食、と乙女の朝が忙しいのは、いつの時代も同じらしい。

 普段学園では身の回りのことを自分でやるので、環境が変わってもさほど手間は変わらないが、今は学園内と違い解放感があった。

 その為、ボサボサ髪に乱れた制服姿で駆けていく単眼に、長髪で顔が隠れたまま彷徨さまようラティン人の何者か、下着姿で部屋から部屋へ走るスレンダーな部長、ご立派なおっぱいをユサユサさせながらパンツ一枚で堂々闊歩かっぽする紫肌グラマー、という有様。

 ついでに、ネタ集めに熱心なあまりスカート穿き忘れているマシュマロも。


 そんな極めてはしたない姿をさらす小娘たちに、ブチ切れるのは真っ赤なお顔のシスター・ヨハンナである。


「アナタたちぃい! そこにお並びなさいなんですかそのたるみ切った姿は! たった数日で学園の規範をもうお忘れになったのですか!?」


「ふぇええごめんなさいー!」

「お見苦しいところを…………」

「反省します……」

「わたしは普段と変わりませんが」


「ローランさん!!」


 アルマ、シセ、クラウディア、ローランは一列に並べられお説教タイムである。ふんぞり返る紫女子が火に油を注いでいたが。

 懺悔室の住民であるデザイナー少女に恐れるモノなど何も無い。

 部屋の出入り口でステルスしているマシュマロは難を逃れた。


「シスター、お役目とは存じますが時間もそれほどありませんので、どうかご配慮を…………。

 みなさん朝食がありますのでよろしければどうぞ」


「村雨さんありがとうございますでもアナタもですよ!」


 ダイニングから様子を見に来た村雨ユリムラセユイリも、環境EVRスーツの上にエプロンを身に付けているだけ、という格好がお嬢様のつつしみ的に問題ありだと怒られた。

 カラダの線がくっきり出るスーツと身体の前を覆う布だが、組み合わせると強烈なフェチズムを発揮してしまうという。特に巨乳で布地が突っ張る部分などが性的に。


 聖エヴァンジェイル学園においては、環境EVRスーツ着用時には上にジャケット等を着るよう新たに校則が定められていた。


「でもわたし達は午後からのスタートでしょう? 午前中の運営委員会とのミーティングって、なんです??」


「広報の方だそうですね。各チームの競技の間に障害物や射撃ターゲットの再配置があるので、その待ち時間に会場内で流す映像を作る打ち合わせだそうです」


「ラインの皆さんだけではなく、オフィスのわたし達にも関係あるんですか? あ、シロップのポットください」


「皆さんくれぐれも……取材の中で学園の生徒としての品位を忘れないようにしてくださいね。お願いですから」


 卵と砂糖と牛乳の混合液に浸したパンを焼いた、焦げ目の付いたフレンチトースト。

 それに、メイプル風のシロップをかけたのが朝食のメインである。

 その他、アスパラ塩茹とマヨネーズ、マッシュポテトとザワークラウト、イチゴ。

 いずれも合成素材ベースだが、最初期に比べれば遥かに本物に近い出来となっていた。


 そんな食卓で、今日のことを話し合う学園騎乗部及び創作部の女子たち。

 障害回避射撃は、午前中に個人の部、午後に団体の部が、6つある競技エリア全てを使い行われることになっていた。

 聖エヴァンジェイル学園は、オペレーターが6人以上となったので団体の部に出場する。

 個人の部にも参加出来るのだが、なにぶん初参加なので本命の団体の部に集中するということで皆も納得していた。外ハネ娘は個人の部にも参加したがったのだが。


 そして競技フィールドは使用するたびに整備する時間を要するので、その間に観戦客を飽きさせないよう各チームのインタビューや競技のダイジェスト映像が流されるそうだ。

 聖エヴァンジェイル学園は午後から忙しくなる為、午前中にこの辺の映像素材を撮るという競技会運営部からのお知らせである。

 競技のことで頭がいっぱいだったイノシシ少女などは、それ以外のことを把握しておらず、シロップの付いた指を舐めながら首をかしげていた。黙っているだけで部長や外ハネも似たような感じ。

 お外に出てタガが外れ気味な少女たちが恥をさらさないか、シスターはとても不安だった。


               ◇


 構成人数が6人に満たないチームは、基本的に各競技の個人の部にのみ参加可能となる。

 これは1機ずつの出場ということで、団体の定数を満たしているチームでも個人参加枠を選ぶ者はいるようだ。


 エイムが競技フィールド内を高速で動きながらレーザーを放つ、そんな競技映像を横目で見ながら、騎乗部の少女たちは競技会運営委員広報部からのインタビューを受けていた。


「聖エヴァンジェイル学園騎乗部! 結成してまだワンタイムラインにも満たないチームなんですね。

 エイムオペレーションもほとんど同じ時期からはじめたとか。

 とてもそうは思えませんよー? わたし達もそれなりに解説歴長いですけど、聖エヴァンジェイル学園騎乗部はもう大会常連か上位のベテランチームって感じです」


 「フォーメーションの手順ミスも、どちらかと言うと競技会に慣れたチームがよくやるミスですからね。

 そんなところも熟練者のようです」


 宇宙を見渡せる観覧席のひとつで、エヴァンジェイル組を待ち受けていた大きいお姉さんと小さいお姉さん。

 先日のおじさん解説者から交代し、この日も朝から会場中のホログラム画面で見ることのできる緑髪とピンク髪のふたりだ。

 色々大きな緑さんはプロエリウム、無表情で小柄のピンクさんは小さな角を髪の中に隠したゴルディア人とのことである。

 他にも、カメラドローンのオペレーターや担当ディレクターが同席していた。


「チームリーダーはクラウディア・ヴォービスさん、コース飛行、編隊飛行の両方ともお見事な内容でした!」


「難しい進行方向からのリバースチェックポイントの処理を、機体を回転させての180度ターンでクリアされましたね。

 観客席も大変湧いたハイライトシーンだったと思われます」


 インタビューの撮影がごく自然にはじまる。能天気そうなお姉さんだが、こういう仕事のやり方は心得ているらしい。

 壁のディスプレイに映る映像が、エヴァンジェイル学園チームによるコース飛行の物へ切り替わっていた。


 クラウディアの駆るメイヴがふたつ連なる光のリングへと急接近すると、そのひとつ目の脇を突っ切りふたつ目のリングを通過し、直後に機体を逆方向へ向けひとつ目のリングへ飛び込む。

 これは通過するリングの順番が決められていた為で、このリバースポイントはコース飛行の難所とされた。

 実際、ふたりにひとりはストレートな通過に失敗するポイントであり、騎乗部でもナイトメアが大きくタイムロスしている。


「出来たばかりのチームと聞きましたがこのように競技のレベルは非常に高いと言えます!

 やはりクラウディアさんがこのようにハイレベルなオペレーションを主導されているのですか?」


「180度ターン時にオペレーターへかかった荷重を考えると、こう言っては失礼ですが淑女育成の教育機関のお嬢様とは思えません。軍やPFCの専業オペレーター、いわゆるエイム乗りのマニューバにも等しいと言えますが、今競技会ではどれほど高い目標を?」


「あの……わたしは騎乗部を作るって言い出しただけで、部長と言っても実際のトレーニングの内容とかは――――」


 ベタ褒めと言っても良い評価に、緊張する華奢な部長が言葉に詰まりながらどうにか応える。

 自分はチーム内の実力下位で特訓内容は赤毛のマネージャーが全て決めています、というようなことを話したが、半分は謙遜と取られたようであった。オール事実だったが。


 それから、学園での生活や騎乗部のエイムメイヴの開発について全員と話し、解説のお姉さんからの最後の質問となる。


「初出場にして上位入賞という野望を明らかにされた聖エヴァンジェイル学園騎乗部さん! となると、気になるのはやはりライバルチームでしょうか」


「ありがたい話題へのフリありがとうございます助かります。

 聖エヴァンジェイル学園騎乗部様は編隊飛行を終えた時点で155チーム中団体で45位。トーナメント形式行われる最終競技の模擬戦は障害回避射撃までの成績を精査し対戦の組み合わせが決められますが、注目するチームはありますでしょうか」


 騎乗競技会の目玉は、最後の模擬戦にあると言ってもいい。

 コース飛行、編隊飛行、障害回避射撃は、その前に各チームの力量を測る為のモノであると言って過言ではなかった。

 それを踏まえて、要警戒しているチームなどを解説のお姉さん達は聞き出したいらしい。


 そうは言っても、本大会初出場の騎乗部にしてみれば、どこも例外なく格上のチームとなる。

 この質問になんと応えたものかと、少しの間顔を見合わせる聖エヴァンジェイル学園組であったが、


「私は…………ストレングスクラフターかな」


「油断出来ないのは、カマロシティハイムーバー……でしょうか」


「シーウィングピープルですね」


「ラーキングオブシディアン」


 一拍置いて、学園の王子様、エイムマニアの単眼女子、視点のズレた赤毛、真剣な顔の華奢部長、と。

 思い思いの名を上げる乙女達であった。


 現在の団体3位、慣性質量をものともしない騎乗部に似たアグレッシブな高機動を見せる『ストレングスクラフター』。なおオペレーターは全員ムキムキのマッチョども。


 街のエイム同好会とでも言うべき少女らの『カマロシティ・ハイムーバー』と、貧相な見た目と違い意外な高性能を見せるシンプルエイム。


 赤毛のマネージャーの好みだけで挙げたペンギン的ヒト達の『シーウィングピープル』。


 順位は団体15位ながら圧倒的な実力と余裕を匂わせる連邦軍付属学校のエイムオペレーターチーム、『ラーキングオブシディアン』。


 どこも並みならぬ実力を見せ付ける、意識せざるを得ないチームである。


 そのようなワケで、「面白いコメントが撮れた」と、解説のお姉さんら運営委員会の人々は喜んで帰って行った。

 それが館内放送されるってもしかしてちょっとした宣戦布告じゃないの? と何人かの女子は思ったが、時既に遅し。

 部長と単眼が涙目になっていたが、何も戦争するんじゃないんだから、と赤毛が慰めておいた。唯理とてペンギンさんと対立する意図など無いし。


 インタビューが終わり解説さん達を見送る騎乗部と創作部の面々だったが、午前中に入れていた予定はこれのみだった為、引き続き観戦席で他チームの競技を見物する事とした。

 競技中のエイムがデブリに見立てた衝突機インパクターをスラロームのように回避しつつ、その間にチラチラと見える標的ターゲットドローンへレーザーを放つ。

 それを追うカメラドローンからの映像だけではなく、スクリーンとなっている窓からも遠くの光を見ることができた。


 引っくり返った鏡モチに頭部センサータレットと手足を付けたようなエイムが、流れてくるデブリに進路を塞がれ急制動。脚部を前に突き出しブースターを吹かしている。

 直前まで両脇に装備していたレーザー砲を撃とうとしていたが、対象が射線から外れてしまい、もたついていた。


「全く同じというワケではありませんが、競技フィールドもシミュレーションとほぼ変わりませんね。障害物のインパクターがこちらを狙って来ないランダムパターンですか」


「単機だとチームと違って、索敵と情報共有、連携が出来ないから大変そうだね。その分、他のチームの平均スコアも落ちるのだろうけど」


「……シミュレーションと同じでいいんでしょ? 何か変更とかは無いわよね??」


「はーやーくーやーりーたーいー」


 競技フィールドの仕掛けを見て、今までのトレーニングがそのまま通用しそうだと改めて確認する赤毛。

 騎乗部ではチーム練習ばかりだったので、単機での障害回避射撃を物珍しそうに観る王子様。

 不安気な部長と、例によって子供のように落ち着き無く脚をパタつかせる外ハネである。


 薄い鉄板を何枚も被せたようなエイム、折れ曲がった柱を組み合わせたようなエイム、そういったチームが競技を終えていき、午前の部終了。

 間もなく聖エヴァンジェイル学園チームの競技順という時刻になった。


「正直、あなた方がエイムのような危険な乗り物で多くのヒトに認められる活躍をするのは、誇らしくもありもどかしくもあります。

 ただ、こうなった以上願うのはただひとつです。皆さん、なるべく危ないことはしないように……」


「多少危険なことをして怪我をしてもよきですよ? 手当てできるとわたしは嬉しいですクヒヒ」


「キアさん…………!」


 もはや止める言葉も無いと、ここに至っては生徒たちの安全を祈るだけの若きシスター。だというのに、ヤバげな笑みの保険委員は出血沙汰をお待ちかね。

 攻撃してくるモノなど無い障害回避射撃ではあるが、自動で動く衝突機インパクターや滞留するデブリ、あるいは同チームのエイムと高機動の中で衝突する危険性はあった。


『さー生粋のお嬢さまチームにして意外にもタフなマニューバを見せる聖エヴァンジェイル学園騎乗部チームがハンガーで発進ステンバーイ!

 エイムに搭乗しただいま競技エリアに出撃します! いやーそれにしてもこうやって見るとやっぱり華やかなオペレーターさん達ですねー!!』


『専用EVRスーツも古典的騎乗競技のよそおいを残したシックなデザイン、という評判ですね。既にこの時点で来場者人気は随一と言って良いでしょう。

 先日までのセオリーを重視する競技では好成績を見せてくれましたが、バイオレンス色が強くなる本日と明日からの競技はどうか、こちらも注目を集めます』


 メイヴに乗り込む騎乗部の乙女たちを、様々な角度からカメラドローンが撮影していた。

 館内に流されている映像では、緊張する部長の顔が大写しである。

 エイムの発進シーンを生で見ようと、格納庫前の通路では大勢のヒトが窓に張り付いていた。

 クラウディアたちに施設の管制部から格納庫扉開放の通知が送られてくる。


『皆さん、練習通りに。模擬戦の前の予行演習のつもりでよろしいかと思います。無理をする必要はありません。

 ここでは各自のポジションと動き、役割を確認するべきでしょう。

 ナイトメアさんとサキさんがフォワード、エリィさんがそのアシスト、フローズンさんがシューティングサポート、エルルーン会長がバックアップ、クラウディアさんが全体指揮、それで十分にスコアは稼げますよ』


 通信では例によって赤毛のマネージャーが簡単そうに言ってくれる。それはそれで安心感があるのも事実だが。


 騎乗部は6名の分隊編成、チーム1のリーダー機を部長のクラウディアが務め、ここに外ハネ娘と突撃イノシシ少女が加わる。前衛部隊だ。

 チーム2は王子様がリーダー機となり、射撃担当の片目隠れとやる気の無いドリルツインテがここに入る。こちらは後衛部隊だった。


 この編成に対して、実際の役割分担はチグハグだったりする。

 部長だけど前に出なくてはならなかったり、既にベテランであるドリルが競技会で無双しても意味がない、など色々と事情もあるので。

 勝つだけなら赤毛の逃亡者が出ればいいのである。


『大会運営管制からゴーサイン出ましたよ。格納庫前障害物無し、進路クリアです。いつでもどうぞ』


「りょ、了解ぃ! みんな行きますよ!!」


『はーいナイトメアはっしーん!』


「あッこら――――!?」


『そろそろ尻込みしている暇で動けるようになってくださいませ、部長? エリザベートも出ますわよ』


「んな――――!!?」


『相変わらず辛辣だな、エリィくんは。チーム2は先に行くよ。部長は気持ちを落ち付けてから出て来ればいい。エルルーン出る』


『えと……フローズン機もチーム2の編隊で出ますね』


 通信オペレーターを担当する柿色髪の少女から発進の許可が出た。

 リトルハート部長が裏返った声で号令をかけると、無敵の外ハネが誰より先に飛び出してしまう。

 格納庫内の迷惑になるので、非常事態の緊急発進以外でブースター全開はやめましょう。

 それをクラウディアがとがめるいとまもなく、呆れたような物言いのドリル少女も発進。

 重力制御加速で床スレスレを滑るように移動すると、格納庫を出た直後にブースターを吹かして行った。

 対象的に気遣うセリフの王子様も、安全運転で宇宙空間へと出ていく。子供扱いされているような気がするのはクラウディアの被害妄想なのか。

 チーム2のリーダー機と僚機のドリルが先に行ってしまったので、片目隠れ電信少女も、部長にひと言断ってそれに続いた。


「わ、わたしがいないと編隊作れないでしょー! クラウディア機も出ますから!!」


石長いわながサキ、出ます』


 競技前から悔しい思いをするハメとなったクラウディアも、少々ヤケクソ気味に乱暴な機動で格納庫を飛び出す。

 すぐに練習で繰り返した通り、騎乗部はリーダー機とサブリーダー機を先頭に僚機が左右に付くフォーメーションを形成。

 騒がしいながらも完全に連携した動きを見せる聖エヴァンジェイル学園の6機は、本番さながらの高加速で競技フィールドへとなだれ込んで行った。





【ヒストリカル・アーカイヴ】


・ライン/オフィス

 ある集団における役割上の区別。積極的な移動を伴う活動を行う人員をラインの担当者と捉え、拠点で事務処理や戦略策定を行う人員をオフィスの担当者と捉える。

 元はビジネス用語。


衝突機インパクター

 自ら激突しに行くよう誘導される機械。本来は小惑星などの物体に衝突させ、構成物質の採取や軌道偏向を促す為に用いられる。

 兵器利用されないキネティック弾をこのように区別化して呼ぶ場合もある。


・カメラドローン

 撮影用のセンサーカメラを内蔵した小型飛行機械。

 基本的に遠隔操作と人工知能による自律行動の併用で制御されるが、撮影者が直接持って撮影する場合もある。


・解説のお姉さん

 騎乗競技会の会場内ブロードキャストで一般来場者などに競技内容や見所を分かりやすく解説する役職のヒト。

 単なる解説役に留まらず、そのキャラクターが名物となる人物もいる。

 エンターテイメント担当。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る