114G.デンジャーツイスター バイオレンスボルケーノ


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 ビームとはつまり、高エネルギーの一定方向への流れである。

 ビームブレイドは柄の内部に超小型の粒子加速器を内蔵しており、同じく内蔵された電磁シールドにて収束、放出するシステムとなっていた。

 『ブレイド』という通称になってはいるが、本質的には溶接機などの工具に近い。

 小型故にビームの出力と収束距離は大した事ないが、それでも光速の99%に近い荷電粒子の放出だ。

 その圧倒的慣性重量と熱エネルギーを以ってすれば、大抵のモノは物体的抵抗力で耐える事など出来ず、ただちに溶断される結末が待っている。


 そのはずだった。


「ッ…………ぬぅ!!?」


 青白いビーム刃と螺旋の金属塊が激突した直後、あらゆるモノを抉り飛ばす運動と熱エネルギーの束は、狂ったように幾筋にも引き裂かれてしまった。

 だが驚いてばかりもいられない。


 バラ色の装甲のエイム、エリザベート・ブラックスターの駆る機体は、超高回転するドリルを突き出し追い撃ちをかけて来る。

 アームレバーを引き、乱暴にペダルを踏み付け全速後退する赤毛のオペレーター、村瀬唯理むらせゆいり

 胸部、大腿部、肩前部、それに脚部に接続した兵装プラットフォームのブースターが炎を吹き、灰白色に青のエイムを一瞬で40G392m/s2にまで加速させた。

 

 そして、バラのエイムもこの加速に追随してくる。


 突き放せない敵機に対し、唯理は左腕のアサルトライフルを胴に引き付け近距離から発砲。

 エネルギーシールドを貫くが、バラのエイムはドリルの角度を変え盾のように使い、秒速6,000メートルの弾体を蹴散らして見せる。

 直後にドリルが灰白色の機体に向けられると、その螺旋の中間に開いた4つの砲口から弾体がバラ撒かれた。

 流石に面喰う赤毛娘は、左腕のシールドを前面に向けつつ、脚部のサブマシンガンで牽制射。

 ほとんど減速せず、高速の中で接近したまま最小限の機動で回避する二機は、近距離での撃ち合いとなる。


『冗談だろ……!? あの赤いヤツ、隊長の加速に付いて行けんのか!!?』

『骨の髄まで潰れちまうぜ! 普通じゃねぇ!!』


 限界Hi-G領域での訓練を強いられるローグ大隊のチンピラどもには、それがどれほどの狂気か文字通り骨身に染みて分かっていた。

 身体を握り潰されるかと思うほどの、慣性重量。筋肉を引き千切るような高機動と、それに耐えるべく求められる凄まじいまでの精神力。

 ローグ大隊でも、50G以上で戦闘までこなせる者は、未だに出ていない。

 そこはある意味聖域であり、自ら踏み込まねばならない地獄である。


 そんな領域に踏み込めるのが、頭のネジが外れた我らが赤毛の隊長だけではなく、もうひとり出て来るとは。

 大隊のチンピラ兵士の中には、ユートピアのエイム部隊と交戦しながら、焦りや妬みに近い感覚に襲われている者たちもいた。


               ◇


 機体をY方向に急上昇させ、圧し掛かる慣性重量に赤毛娘の身体が軋む。

 足元のディスプレイには、下方向より猛追しながらドリル内蔵のレールガンを発砲するバラの機体の姿。

 唯理は思考でエイムを操作し、肩部と脚部プラットフォームのブースターを偏向させ一瞬だけ最大出力へ。

 灰白色に青のエイムがブレるような動きをし、横にスライドして火線をかわすとアサルトライフルで反撃する。

 通常のレールガンより増速された弾体だったが、それでもバラのエイムのドリルを破壊する事は出来なかった。


(単なるドリルヘッドじゃない……本体にエネルギーシールド。おまけに遠距離対応でレールガンまで内蔵してる、と)


 単なる金属塊なら、レールガンやビームブレイドが押し負ける道理はないだろう、と赤毛のオペレーターは考える。

 エイムのセンサーでも、そのドリルが物理シールド並のエネルギーシールドを展開している、という走査スキャン結果が出ていた。

 または、以前ビームブレイドの直撃に耐えたメナス特機のように、単に死ぬほど頑丈なだけか。


 そんな武装の特殊さに加え、唯理の戦闘機動に付いてくる反応速度と耐G能力も脅威である。

 距離を取れないので遠距離戦に移れず、かと言って近距離では攻防に猛威を振るうドリル兵器が。レールガン内蔵なので、近距離から中距離の切り替えスイッチングも早い。

 破壊力という点ではメナスに及ばないが、戦闘技術においては間違いなくこれまでで最も手強い相手だった。


 そこで唯理も思い出す。


「こいつデリジェントで交戦したヤツ…………!?」


 近距離での溜めと間合いの計り方、タイミングの外し方、突っ込みをかける際の攻撃角度と、なにやら既視感を覚えてはいた、

 この戦い方は、先のデリジェント星系、ヴァーチェル、フロイング宙域でメナスとの戦闘で死ぬほど忙しかった時に横槍入れてきた、所属不明機と同じである。


 ここでバラのエイムのオペレーターが赤毛娘の軌道を読み切り、回避方向に合わせてドリルの突撃を仕掛けてきた。

 受けて立つ唯理は物理シールドを叩き付けるが、激突の瞬間に力を緩めるエリザベートは弾かれず、ドリルを接触させたままブースターを燃やし押し付ける。

 激しく火花を散らす接触面。

 灰白色の機体はビームブレイドを展開し、機体ごと回転させ強引に受け流すと、その回転に乗せ斜め上から斬り落すよう振り抜いた。

 だがそれも、斜めに構えたドリルにより吹き散らされてしまう。

 こうなると隙を見せるのは唯理の方で、即座に発砲されるドリルレールガンを回避しきれず、胸部の装甲を削られた。


『本当に愉しませてくれますわ。この距離での刺し合いで、まともにわたくしとやり合える相手は貴重ですもの。

 仕事でなければ存分に遊んで差し上げたいところ……残念ですわね』


「デリジェントの時といいお忙しそうだ。共和国とユートピア、どちらがアンタの本業かな!?」


『あら……気付いてくれましたのね。でもお生憎、どちらでもない、と申し上げておきますわ』


 唯理に言い当てられても、エリザベートの声に慌てる様子も無い。バレても困らないということだろう。

 また、以前に戦った相手だと分かったところで、今の戦況には全く関係が無いのも事実だった。

 ヴァーチェル星系での交戦時に比べ、バラのエイムの性能故か、相手の格等戦能力は桁違いに高い。

 未調整とはいえ、唯理の機体イルリヒト以前プロミネンスより性能は格段に上なのだが。


 戦闘の優劣は、時の運の占める部分が大きい。

 慣れた搭乗機エイム、得意な得物ドリル、それらとオペレーター相性マッチング

 そういった戦場の流れは確実に存在し、そして今はバラの機体の方にそれがあるのは明らかだった。



 ならば、赤毛の少女と専用機SPイルリヒトも、本気を出さざるを得ないかと。



「…………エイミー、腕とレガースギアの『ペネトレイター』ってもう使っていいんだっけ?」


『いいわけないでしょ! わたし調整中って言ったよ!? ちょーせーちゅー!!』


『ユイリ! アッドアームズの4番を送った方がいいんじゃねーの!? さっきからビームブレイド通ってねーだろ!!?』


「向こうがそれを許すかはちょっと疑問かな。シールドブレイドはデリジェント星系で多分見られてるだろうし。

 それよりその前に、コイツの爪と牙を試してみようかッ……!!」


 通信でエンジニアのお姉さんにお伺いを立てたところ、メチャクチャ怒られる赤毛。

 戦闘よりもそちらに追い詰められる思いだったが、これも戦況を挽回する為なので、後で謝り倒そうと思う。

 オペ娘は有力な武装を勧めてくるが、この状況では受け取るのも困難だろう。

 持って来ればよかった、とは赤毛も思うが、概ね戦闘なんて持っている武器でやるしかないのだ。


 灰白色に青のエイムは、4連装レールガンを無重力宙に放り出す。どうせ遠距離戦では勝負が付かない。

 両腕マニュピレーターにビームブレイドを装備すると、物理シールドユニットを前面に押し出し自ら突撃。

 激突し、ドリルを挟んでの押し合いに持ち込んだ。


『様子見は終わり、ということかしら? 真剣勝負ジュ・セリュは大歓迎ですの』


 ブースターを最大に燃やし背後から炎を吹き出す、灰白色に青のエイムと、バラ色の装甲を纏うエイム。

 すぐに中心軸がずれ両機が回転するが、遠心力により距離が開く前に、お互いが相手に突っ込んでいく。

 激しく光の渦を巻きながら、ドリルとビームブレイドを叩き付け合う両者。

 超高機動の負荷がオペレーターに消耗を強いるが、どちらもまだ限界には至らない。

 この年齢の、この時代の少女としては、どちらも破格の身体能力だった。


『アナタがこれほどのエイム乗り・・・・・であればこそ、わたくしの面子も立つというものですわね。

 脆弱な敵を倒したところで、上にも下にも示しが付きませんもの』


 バラの機体のコクピットで汗を滴らせる、ゆるい縦ロールの金髪令嬢。

 課せられた仕事、母や姉妹そして部下への面子。

 慣性重量の他にも様々なモノが圧し掛かっているが、今この瞬間は純粋に戦いを楽しんでいた。

 激しい揺れの中で、エリザベートはやや疲労を表に出しながら、凄みのある笑みを浮かべる。

 できるだけ長く遊んでいたい、とは思うが、手を抜けない相手である以上、全力で仕留めねばならないという矛盾も抱え、


『部下を持つ苦労は分からんでもないが、顔を潰して悪いね』


 次の瞬間、灰白色に青の機体が、シールドで殴り付けるような突撃。


 エリザベートは僅かに機体を退かせると、ドリルの先端を相手へと正確に合わせて、半身の体勢から一気に突き出した。

 武器に頼らない、正確無比な鋭い突きトゥシュ

 既に耐久限界を超えていた唯理の物理シールドは、今度は受け流しもせず直撃を受けてバラバラに。

 これで灰白色に青のエイムは、バラのエイムに対して防御の起点を失った。



 赤毛娘の方は防御するつもりなどないので、そのまま殴るが。



「――――ふぇ? ックぅ!!?」


 砕け散る物理シールドユニットの破片に気を取られた一瞬、培った実戦勘が、ゆるドリルのお嬢様に警告する。

 咄嗟に全速回避しようとするも、思考の間隙の分、赤毛娘が間合いを潰す方が早かった。


 マニュピレーターの拳を引き、溜めを作る灰白色に青の機体。

 背面と脚部のブースターを爆発させ、体当たりする勢いで密着状態になると同時に、


 振り抜かれる腕の両側面から、噴火する双発のビームパイル。


 逃げ損ねたバラの機体は、その頭部の半分を吹き飛ばされていた。

 あるいは、唯理必殺のタイミングから、直撃を避けたエリザベートの勘の良さと反応速度を褒めるべきか。


「このッ……!!」


 生来の負けん気の強さから、エリザベートは即反撃を選択。

 再びドリルを唸らせるが、唯理は両腕マニュピレーターでバラの機体の腕を捉え、動きを封じた直後に膝蹴りをブチかます。

 同時に、脚部に密着させた兵装プラットフォーム、『アーマーメント・レガースギア』内蔵の二連ビームパイル――――本来は内蔵ビームブレイドにより三連装――――が火を吹いた。


 専属エンジニア、エイミーが唯理の戦術に合わせ開発し、拳や膝といった痛い・・部分に装備した零距離戦闘用の新兵装。

 ビームパイルバンカー。


 『イラプション・ペネトレイター』である。


「キャァアアアア――――――――!!?」


 バラの機体は、左大腿と左腰部が吹っ飛ばされていた。

 それに留まらず、細身ながら高出力な唯理のエイムは、掴んでいたエリザベートの機体腕部をミシミシと軋ませる。

 半分崩壊した頭部のすぐ前には、スーパープロミネンスMk.53_イルリヒトの頭部が押し付けられていた。


「ひ……ヒィ!?」


 幾多の修羅場を潜り、並みの事では動じないエリザベートが、コクピットのディスプレイ半分に映る鬼火イルリヒトの狂貌に震え上がる。

 それでも、無意識に機体を操りブースターを燃やし、鬼火のエイムから逃れようとした。

 ところが、左脚部を失いブースターも破損し、加速が上がらず。

 必殺のドリルを叩き付けようにも、懐に入られ密着されると、長柄の武器は振るいようがない。


「こ、こんなやり方で『ローズネイル』が……!? これ――――

ぐゥ! ひキャ!? ちょ!! まッ!!?」


 挙句、灰白色に青のエイムが装備する、ノマド御用達ワイヤーアンカーに絡め取られるや、ロクに身動きできない状態から打撃ビームで殴る蹴るの暴力が。


 バラのように鮮やかだったエイムは、最終的に胸部コクピット以外を穴だらけにされるいう、無残な有様となってしまった。

 そして身につまされるローグ大隊の兵士達は、顔も知らないオペレーターに同情せざるを得なかった。


               ◇


 ノマド『ユートピア』船団の攻撃から、2時間後。

 高速貨物船『パンナコッタ2nd』、船体下部格納庫。


 灰白色に青のエイムがバラバラにされている。

 壊れたワケではない。整備ステーションに吊り下げられ、総点検の最中だった。

 どこぞの赤毛が仮組み中に無茶をしたので、異常が出ていないが精密に調べる必要が出たのである。


「ど、どんな感じです?」


 そんな戦犯、村瀬唯理はドリンク類のボトルを手に、技術班への陣中見舞いにやってきていた。

 メガネのエンジニア嬢に「フー!」とネコの子のように威嚇され、「ひえッ!?」と逃げ腰になっている。

 悪いとは思っているのだ。

 思っていても必要とあれば同じ事を繰り返すので、いまいち謝り切れないのではあるが。


 唯理は少し前まで、旗艦フォルテッツァの艦隊指令艦橋ゼネラルコントロールの方にいた。

 ローグ及びラビットファイアといった機動部隊の隊長として、若白髪船団長のディラン・ボルゾイへ報告やら相談やらがあった為だ。


 バラ色のエイムが戦闘不能となった直後、ユートピア船団はエイム部隊を後退させ、キングダム船団に停戦を求めていた。

 ところが、相手方の船団長の態度に、ディラン船団長はブチ切れ。

 戦闘を仕掛けた理由を問うても答えず、何も言わず賠償金で手打ちにしろと、こういう言い分らしい。

 まるで悪びれないユートピアの船団長に、言い訳くらいして見せろ、と未だに憤慨していた。


 とはいえ、ノマドとして無抵抗の相手を攻撃するワケにもいかず、またユートピアの旗船フラグシップを制圧する人手も無いので、賠償金の支払いという話で終わりそうではあるが。

 せめてユートピアが傾くほどの額をふんだくり、無条件監査などを認めさせ多少なりとも嫌がらせくらいはしてやろう。

 というのが、悪い顔したディラン船団長の意向だ。


 ついでに、機動部隊の隊長として、唯理にも仕事がありそうだとか。

 何でも言うとおり働くので、エイミー先生のご機嫌取りを手伝って欲しいと唯理は思った。

 エイムもらえなかったらどうしよう。


 なお、拘束したバラのエイムのオペレーター、『エリザベス』という豪華な金髪の少女は、フォルテッツァ内で勾留中だ。

 自称『フリーのエイム乗り』。

 明らかに攻撃の中心的立場にいながら、その身柄についてユートピア船団は何も言ってこない。

 一応唯理もデリジェント星系の件を鑑み、共和国側との繋がりも指摘した。

 しかし根拠となるのが唯理の勘だけなので、キングダム船団としても動きようがないとか。

 交戦時の記録にはその辺を認めるような発言もあったが、証拠として弱い上に、どの道ユートピアも共和国も認めることはないと思われる。


 ついでに、バラのエイム、『ローズマテリア』と呼ばれる機体も、フォルテッツァの格納庫内で保管されてた。

 細かい検分は、後日技術畑の人間を集めて行われるという。


「一通り見てみたけど、ありゃ完全に一から開発された機体だな。ご丁寧に制御フレームまで完全オリジナルと来たもんだ。

 ってもワンオフ機は時々見るし、構造なり機構なりでメーカーの特徴が出るもんだけどなぁ……アレにはそれも無かったわ。

 どこであんなもん開発したんだか」


 と、空中投影されたデータ画面を見ながら仕事を続けるのは、ツリ目オペ娘のフィスである。

 唯理のエイム、スーパープロミネンスMk.53では、制御システム担当。

 バラのエイムは収容直後に安全確認も兼ねスキャンされているので、未解析の生データを取り寄せ、自分なりに解析しているようだった。


「武装の方は? ビームブレイドを弾き返す、ドリルヘッドみたいな」


「アレは電磁シールドコーティングだねー。粒子加速器にも使われてる技術を防御に使ってるみたい。

 普通のエネルギーシールドも装備して、レールガンまで内蔵してるし。大雑把に見えるけど、あのサイズに収めて乱暴に使っても動作不良を起こさないのは、すごいシステムかな」


 整備ステーションを操作する手を止めないまま、今度はエイミーが答える。

 大胆な見てくれとは違い、ドリルの武器もそれなりに高度な技術に裏付けられた武装らしい。


 つまるところ、連邦でも共和国でもない、接近戦を主体に据えようと考え、『ローズマテリア』ほどのエイムと武装を開発する者ないし組織が、どこかにいるという事だ。

 恐らくそれが、あの『エリザベス』と名乗る派手な金髪縦ロール少女の、本来の所属だろう。


 船団長の言うとおり、ユートピア船団をつつけばその辺の情報が出てくるか。

 そんなことを考えながら、赤毛の少女は初っ端から無理をさせた自分のエイムを見上げていたが、


「あッ!」

「お?」


 整備ステーションのリフトに乗っていたエイミーが、持っていたハンディスキャナーを取り落とした。

 たまたまその場面を見ていた唯理は受け止めようと考えるが、両手はドリンクのボトルで塞がっている。

 さてどうしようかと。

 エイミーの足下、リフトの縁に当たった円筒形のスキャナーは、クルクルと回転しながら赤毛娘の頭上を通過。


 なにせ弾丸の軌道を見切る赤毛の少女である。

 その動きを逃がさず見極めてはいたが、手が使えない以上は他の部分で受け止める他あるまいなぁ。

 などと漠然と思い、


「あらよっと」


 ジャストタイミングで壁に触れ真っ直ぐ落ちてきたので、思わず腰を突き出しお尻を押し付け止めてしまった。


 カラダにピッタリ張り付く環境EVRスーツの、ムチッと肉付きの良いお尻の谷間に挟まれるハンディスキャナー。

 完璧なタイミングに思わずやってしまったが、流石にはしたなかったか、と赤毛の顔も赤くなった。


「あ、アハハ……ゴメンねエイミー。でも機材は死守した」


「うん……ありがとう」


 ノーリアクションでハンディスキャナーを壁とお尻の間から引き抜くメガネのエンジニア嬢。

 凶悪な柔らかさを感じるが、鋼の精神で耐える。


 その後、唯理は船長のマリーンに呼ばれ、後をお願いしてそそくさと格納庫を出て行った。

 エイミーは「あー!」としゃがみ込み、顔を抑えてえた。

 一部始終を目撃していたフィスも同じ心境だった。

 メカニックのダナ姐さんは、みんな若いなぁ、と遠い目でみした。





【ヒストリカルアーカイヴ】


・パイルバンカー

 本来は杭打ち機を指す名称。

 爆発的威力により金属の杭を打ち出し、対象を貫通破壊する武器。

 男のロマンの別名でもある。

 ロマンを解さない少女は、これをビームでやる。




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