107G.ビューティーマッドディザスター
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天の川銀河、スキュータム・
共和国圏、デリジェント星系グループ
本星『ヴァーチェル』、衛星『フロイング』宙域。
拡散する荷電粒子の攻撃が振るわれる寸前、遠方から撃ち込まれた高出力レーザーが、メナス特殊機体のエネルギーシールドを叩いた。
オレンジの甲殻を纏う生物のようなヒト型自律兵器が、はじめて逃げる動きを見せる。
それが、今までの艦砲射撃とは明らかに違う、精密に狙い撃って来る攻撃であるのを警戒したが故だ。
『大隊長か!? ヤッベ助かった!!』
『死ぬかと思ったぞもうヤダー!!』
『511、51ファーストは中隊をまとめてフォルテッツァまで後退! まだ動ける機体は小型メナスを迎撃しろ!!』
破損も著しいズングリとしたエイム、ボムフロッグとメナス特機の間に高速で割って入る、灰白色に青の軍用機。
急制動をかける
背面に接続したブースター一体型の
メナスの特機は
『スゲェ!? あのバケモンをタコ殴りかよ……!!』
『あのガキ、メナスのシールドを引っ剥がしやがった!!』
単純な機動力だけではない、大隊長の技のキレに、チンピラ三等兵達も目を剥いていた。
メナス特機のエネルギーシールドは、攻撃により負荷限界を超えて消滅。
更に、レールガンの偏差射撃がメナスの動きを止めると、そこにキネティック弾が追い付き殺到して爆発を連鎖させる。
しかし、それだけの攻撃を受けながら、メナスの装甲にダメージを与えられず。
逆に、荷電粒子の鞭で灰白色のエイムを周辺諸共薙ぎ払おうとしてきた。
そんな広範囲高密度の荷電粒子流の僅かな隙間へ、シールド出力を最大にした唯理が自分のエイムを捻じ込ませる。
半分
装甲表面で弾体が跳ね返り、近距離から滅多打ちにされ大きく後退するメナス特機。
即座にメナスはショットガンのように荷電粒子弾を撃ち返してくるが、唯理は射撃を止めないまま、ブースターを吹かし機体を左右に振る。
直撃を受ければ一発死な状況。
戦艦さえも撃沈できる火力を叩き付けているのだが、メナス特機の防御装甲を突破する事ができない。
それでも、赤毛の少女は一歩も引かず、メナス特機と渡り合っていた。
『隊長……援護します!』
「手を出すな! ラビットファイアは旗艦の直掩! コイツはわたしが抑える! R004は指揮を引き継げこっちは忙しい!!」
超至近距離での急制動、急加速を繰り返し、荷電粒子束に削られながら、致命打を避け続ける赤毛の隊長機。
駆け付けはしたものの、
(ターミナスに出たヤツと同格……でも火力は段違い、と! 何よりこっちは直撃させても決め手にならないのがどうにもならんな!!)
もっとも、赤毛娘の方にもメナス特機に対する決定打が無かった。
苦労してエネルギーシールドを突破しても、その下の装甲がデタラメに頑丈で撃ち抜けない。
これは、ターミナス
以前のメナス特機は、相手の方から退いていったが。
(でもコイツの
実際問題、こういう事態もターミナス戦以降に想定しなかったワケでもない。また出くわした時の事を考えれば、当然備えるべきだろう。
いかんせん準備万端とも言えないが、それでも全く手立てが無いという話でもなく。
ならば、今はその為に必要な武器を取り寄せるべく、レーザー砲でメナスと撃ち合いながらタイミングを
「……なんだ!? ッ――――――づゥウウウ!!!?」
不意に間近で気配を感じた瞬間、足裏をペダルに叩き付け、肩部と脚部のマニューバブースターを限界まで燃焼。
ほぼ同時に、背後の、しかも比較的近距離から8条ものレーザーが放たれ、左腕マニュピレーターに、拡張ブースターと大口径レーザー砲をアームごと、と機体の左側をズタズタに破壊されてしまった。
そのダメージは表面部だけに留まらず、中央にあるコクピットブロックにまで及んでいる。
当然、中にいるオペレーターも無事では済まなかった。
高機動中の破損により推力バランスが崩れるが、唯理はそれも利用しランダムな軌道で急速離脱を図る。
「このッ……!? 運のいい!!」
不意打ちをかけた犯人、共和国の暗部で動くエージェント、スカイは歯噛みしながら即座に追撃へ移っていた。
鋭利かつ平坦な面で形成される装甲を纏う、細身に見えてやや大型のエイムが、何も無い真空宙から姿を現す。
ここまで誰の目にも留まらず忍び寄る事が出来たのは、両脇と背中側に搭載する蛇腹の箱のような高性能ステルス装備によるものだ。
なお、ブースターエンジンは腰部に独立した物を2機接続していた。
カンパニー・コアセグメント・アーキテクト製造、スーパーハイエンドモデル。
アンダーテイカーCOMP-AA48S改、『ロキ』である。
黒に近い青い機体色、鋭い刃物のようなステルスエイム『ロキ』は、右肩に据え付けた大型レーザー兵器を再度標的の方へ向けた。
8門のレーザー砲を1機に纏め、菱形に配置したコフィンタイプの大型連装砲。その全長は、エイムより大きい。
8機の集束プリズムが個別に動き、8条の光線がそれぞれ唯理を追い詰める。
損傷した灰白色のエイムだが、それでも平時と大差ない機動力でレーザーを回避して見せた。
左側のブースターを丸ごと失っていたが、緩急と旋回半径を常に変化させる戦術機動は、むしろ冴え渡る一方である。
「なんなのアイツ!? さっきといい!!?」
自身も40Gまで加速し、唯理に喰らい付くスカイ。
追い詰めたと思ったら切り抜けていきそうな相手に、栗毛のポニテ少女はコクピット内で焦りの声を上げていた。
こうなると、最初の不意打ちで殺せなかったのが、どこまでも悔やまれる。
単に相手の運が良かっただけ、と思いたい。
だが今の回避運動を見ていると、共和国最高のステルス技術を見破ったのでは、という懸念が拭えなかった。
仮にそうだとすれば、二度と同じ手は使えない。
断固として、ここで撃墜しなければならないだろう。
『たいちょー!!』
『002は敵機に制圧射撃を! 006はフルパワーでECM!』
一旦はキングダム船団の防衛に回った
すぐさまカバーに入ろうとする5機だったが、スカイにはこれも想定できた事態ではあった。
「あの連中に邪魔をさせないで! ガデン! オーカス! リナル! アボット! 喰い止めていなさい! エリザベスは
『ちょっとメナスの上位体がいるなんて
「黙って従いなさい! 今はお嬢様の我儘を聞いている暇なんて無いのよ!!」
ラビットファイアの正面から飛んでくる、赤い光線の乱れ撃ち。
やはり何も無い空間から姿を現すのは、丸みのある装甲が発達した筋肉のように見える、灰色にフラクタル迷彩柄の汎用型エイムだ。
カンパニー系列、ケープ・ギャラクティカ・リパブリック社製。
マンサーヴァントC.G.R-AR151である。
こちらのステルス装備は、肩部や背面ブースターへの後付だった。
『ちょ……!? なによコイツら早いじゃん!!?』
『ふえぇえ!? さっきまで全然無反応でしたよ!? 完全に未確認のステルスシステム!!?』
『003は005と戦線を押し上げてください。002は援護を、006は敵センサーへ攻撃と電子支援を!』
新手の5機のうち、4機は左右に別れてレーザーを放ち、ラビットファイアの進路を制限する。その機動力と加速度も、並みのエイムとオペレーターではない。
指揮を任されているR004、サラは一気に接近して叩こうとするが、足止めに徹する
赤と白の
手間取りそうな敵機に、普段は穏やかな保母さんの副隊長も、焦りを表に出していた。
◇
ラビットファイアが4機のステルスタイプに止められている一方、唯理は敵の隊長機と増援で来た1機を同時に相手取っている。
隊長機、スカイの中長距離火力も相当な脅威だったが、増援のエイムとその武装にも驚かされた。
何かというと、小惑星掘削用のプラズマドリルである。
円筒形に配置される6本のシャフトが回転し、先端のプラズマトーチが焼き溶かして大穴を開けるという重機だ。
サイズとしては、7メートル前後とエイムの半分ほど。
そんなモノを武器にしながら、思いのほか隙の無い突き込みにより、唯理も後退する一方だった。
強力な8門のレーザー砲を束ねたコフィンに、エイムですらバラバラにされそうなプラズマドリルの連携。
そして、負傷した赤毛の少女は自分の応急手当で攻撃に転ずる事ができない。
「ちィッ……!」(連携っていうか、僚機の攻撃終わりを狙って自分の攻めを滑り込ませる感じか。火力高い方は上手く動きを読んでくるし、こっちのもかなり手馴れてる……。場数踏んでるな)
止血ジェルのチューブを
最初の不意打ちを喰らった際に、コクピットの保護殻が弾け飛んで内部に破片が飛んだ為だ。
仮に手足が動かせなくても、エイムは思考だけでも動かせる。
だが、身に染みた
「なるほど、データは誇張ではなかった、という事ですわね。ノマドのエイム乗りにしては、なかなか生きた動きをしてますわ」
灰白色に青のエイムは、近接攻撃と射撃で猛攻をかけてくる相手を、振り回すような機動でかわし続けている。
操縦、とは異なる、エイムを自らの身体とした動きか否かは、金髪をドリルロールにした少女には一目で分かった。
単なる技術ではない、真に実戦で通用する技量が無ければ、エリザベスの住む世界では生きていけないからだ。
「流石……姉さんは本当にいい駒を使ってるわ。でも、
目を剥いてディスプレイを凝視し、灰白色のエイムに喰らい付いて離れない栗毛のポニーテール少女。
その命中精度は
レーザーを集中させられず、相手のエネルギーシールドに受け止められる程度だが、それでも赤毛娘の機動に付いて来れている事実に変りもない。
何より、スカイの執念も深かった。
最初の不意打ちと機体の損傷、味方への足止め、それに勘の良いオペレーターに、接近戦に手馴れたオペレーター。
唯理には悪い条件が揃っていたが、他にもまだ最悪の脅威が含まれている。
艦隊戦力を単騎で圧倒し得る、メナス上位個体だ。
「くっそ……忙しない!!?」
赤毛娘が他の勢力と戦闘状態にあっても、それでメナスが攻撃を控える理由も無い。
プラズマドリルに追われレーザー8発に狙い撃たれ、同時に別方向から飛んで来る無数の荷電粒子シャワーから推力全開で逃げる唯理。
瞬間的に50Gを超える負荷が、損傷した機体とオペレーターの傷口を広げる。
エイム3機とメナス1体は、宇宙船の間を縫うように突っ切り、船団の外に飛び出した。
そこは、メナス艦隊とキングダム船団が派手に撃ち合う砲撃戦のド真ん中だ。
これに、近場にいた小型メナスの波状攻撃まで加わり、いよいよ物理的に逃げ場が無くなる赤毛の少女。
しかも、メナスの攻撃は敵のエイムにはほとんど向けられず、唯理ひとりが四面楚歌洗濯機の中で跳ね回っている状況だったが、
そのメナス艦隊に外側から突入し、特殊機体へとまっしぐらに突き進む白い機影があった。
「いた……マレブランスの『スカルミリオン』! この機会、逃がしはしない!!」
背面ブースターから白炎をマントのように広げ、進路上の小型メナスを次々と撫で切りにしていく、エイムらしきヒト型兵器。
これを操るのは、焦げ茶の髪を逆立てた少年、『ブレイブ』だ。
何かの接近を感知する『マレブランス』と呼ばれたメナス特機は、赤毛娘への攻撃直後に、その反対側へ荷電粒子の鞭を振るった。
艦隊を打ち崩しそうな一撃が宙域の一方を覆い尽くし、闖入者のヒト型兵器もそれに成す術無く巻き込まれる。
通常のエイムなら、跡形もなく消滅する程のエネルギー量。
その絶対的な流れに正面から逆らい、メナス特機に白い機体が肉薄する。
◇
全速力でデリジェント星系から離脱中のキングダム船団でも、一連の戦闘はモニターされていた。
唯理がかなりマズイ状況に陥り、今すぐ援護射撃をはじめたい船団長だったが、メナス艦隊を押し返すのに忙しく手が回らない。
かと思えば、新たに正体不明な白いヒト型兵器が現れ、メナス特機に襲いかかっていく、と。
「今度のはどこの機体だ!? どこから来た!? 通信は!!?」
「IFFと通信に応答無しです! データ解析中ですが外観からは所属製造元共に不明!!」
「グループ基準点45度方向に所属不明船がワープアウトしています! 恐らく不明機の母船です! こちらも敵味方識別と通信に応答ありません!!」
「共和国の連中の返事は!?」
「R001と交戦中の機体は所属不明、アギーズロンオン
「ふざけやがって! この状況で奴らの船以外のどこからエイムが出て来る!? 構わんから主口径レーザーを叩き込んでやれ!!」
「船団長!? よろしいんですか!!?」
「……………………いや、威嚇発砲! 改めて所属を照会し向こうのエイムなら直ちに戦闘を停止させろ!!」
船団長は、赤毛娘を突如襲って来た高性能ステルス機が、共和国の随行艦隊から出て来たモノだと確信を持っている。
しかし、当然ながら共和国艦隊旗艦の『アギーズ・ロンオン』は、それを否定。
腹立ち紛れに威嚇発砲を指示した船団長だが、相手が認める事はまずないと考えていた。
最悪、撃沈される事も、共和国政府か
それに、所属不明機の
(あのアホども艦隊が欲しくないのか!? そいつを殺したら連邦も共和国も歴史的大損失だぞクソったれ!!)
ディランから見れば、唯理を殺そうとするなど想像を絶する大愚行だ。
今回の原因は、先の
だってのに最も重要な
もっとも、その最重要ピースを戦場に送り出したディランが言える事でもないのだろうが。
とはいえ、共和国に唯理の持つ
それならば、いっそ本当に共和国艦隊を潰してやった方がいいかもしれない。
などという考えが船団長の脳裏を
それに問題は、共和国の襲撃部隊だけではなかった。
今のキングダム船団に匹敵する火力を振るう、メナス特殊機体。
そのメナス特機と単騎で渡り合う、エイムらしき謎の白いヒト型兵器。
「……船団の足を緩めるな! 各船はメナス母艦を優先して排除! ローグでもヴィジランテでも少しでも余裕が出たらラビットファイアの支援に回せ!!」
正直、ディランにはメナス特機も、それと五分に殴り合う所属不明機も、どう対処するべきか見当も付かない。
ならば船団長として合理的な方法を選ぶのみだが、その上で赤毛の隊長機を援護する戦力的余裕が生まれるかは、全くの未定だった。
◇
メナス特機、マレブランスと呼ばれる最上位個体のひとつ、『スカルミリオン』。
その広範囲に及ぶ掃射攻撃は、暗緑色の津波の如しだった。
光速の98%という運動エネルギーを持つ粒子が、巨大な波となり幾重にも押し寄せて来る。
それらを強引に突破し、白い機体は手にした細身の武器をスカルミリオンへと突き出していた。
(あの機体……シールド無しに装甲だけでメナスの攻撃に耐えてる!? それに……この感じ、なにか…………?)
通常ならば100回は消し飛ばされていそうな荷電粒子の直撃を受け、それを意に介した様子もなく、メナスを攻め続ける白い機体。
それは、エイムのような機械の塊というより、ある種の彫像にも見えた。
無骨でシンプルながらも優美な外装、繊細に組み合わされた各部のパーツ、そして雄々しき英雄の如きデザインの意匠。
頭部や間接部には防具のような黄金のオプションを接続し、腰部と胸部のアーマーには鮮烈な赤をあしらってる。
そして武装は、刀身に光を纏うレイピアに似た一振りを握るのみ。
基本的に戦術兵器であるエイムとは異なる、意志と
それらの外見とは別に、唯理はどうしてもその白い機体から何かを感じずにはいられなかったが。
そして残念ながら、生憎とじっくり観察しているような暇も、今の赤毛の少女には無い。
「パンナコッタ! フィス! AAM-004をリクエスト!!」
『「リクエスト」じゃねぇだろバカ! さっきからエイムのアラート表示が出っ放しなんだよ今すぐ戻って来い! あとバイタルデータを隠すなバイタルデータを!!』
背面から右側のアームに接続された大口径レーザーを発振、同時に右マニュピレーターのアサルトライフルを発砲。
灰白色に青のエイムは、近距離と遠距離で連携を取ってくる正体不明のエイム2機を火力で押し返す。
なにがなんだかよく分からないが、メナスの特機を白い所属不明機が抑える事で、唯理はその2機に専念する事ができた。
自分のエイムは中破しているが、まだ性能が致命的に低下したワケでもない。
となればエイムコントロールの技量が物を言い、この分野ではまだまだ唯理も負ける気はなかった。
そしてこの隙に、戦いの決め手となる奥の手を用意しなければならない。
そう思い
やっぱり怪我を隠したのはマズかったか。
「コイツらはともかくあのメナスを放置すると船団がケツから撃たれる! 『太刀持ち』が必要だ! お願いフィス!!」
『つーかあのエイムがやりあってるんだから任せればいいんじゃねーの!? ユイリおめそれどころじゃねーだろ!!?』
「
現在、鎧騎士のような白いエイムがメナス特機に突っ込んでいるが、恐らく勝てないだろうと唯理は
あの機体とオペレーターの
歓迎したい事態ではないが、結局は自分がメナス特機と相対する事になる、という確信が赤毛の少女にはあった。
フィスの言う通り、エイムの襲撃者の方も片付けねばならないのだが。列に並ばれている気分である。
『AAMの4番はまだリミッターの値を探っているところだよぉ! ユイリのエイムはアクチュエイターの稼動レベルもブースター過熱も真っ赤っか……もう限界だってばー! お願いもう帰ってきてー!!』
『おいやめろコンソールを叩くんじゃねぇ!!』
レールガンやレーザーの直撃が決定打にならない、メナス特機の装甲を破壊し得る武装。
以前から開発を進めていた物だが、ここに至ってもまだ未完成な代物であった。
それだけでも悲鳴を上げる担当エンジニアのエイミーだが、赤毛娘の
フィスと一緒に
謝りたい赤毛だが、謝る暇も無い。
とはいえ、何も言わないマリーン船長は、唯理と同じ意見のようだが。
「射出タイミングはフィスに任せる! わたしはまずこいつらを排除する!!」
何本目かの
カラダの中で何かが煮えくり返り、赤毛の美少女が無意識に牙を剥き出す。
冷静な頭の中ではやるべき事を重々承知しているのだが、一方で本能は猛獣のように荒れ狂っていた。
要するに、手負いのケモノだ。
「カハァアアア……!!」
口の端から灼熱の呼気を漏らす赤毛の猛獣が、機体の負荷を丸ごと無視して、ジェネレーターやブースターを
建前では、キングダム船団と
本音では、やろうブッ殺す。
それらの帰結として獲物を食い殺す事になんら矛盾は生じず、灰白色に青の怪物はブースターノズルを焼き尽くし、自らを武器として全力で敵へと叩き付ける。
【ヒストリカル・アーカイヴ】
・コフィン
エイムの携行する大型兵器。歩兵のロケットランチャーのような立ち位置の装備。
通常兵器を多連装化した単純な物だが、常識的には複数のエイムに普通サイズの火器を同時に運用させた方が効率は良い。
主に少数、あるいは単独行動を行うエイム向けの、
レーザーに限らず、プラズマランチャーで構成される場合もある。
・IFF
敵味方識別装置、及び発信される信号。
本来は味方である信号のみが発信、受け取られ識別される事を言うが、この時代では所属を示す信号を含む。
混乱する戦場などでは、友軍への誤射を回避し敵機を効率よく排除する戦闘行動の為に必須となる。
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