99G.ハードセッティング ファウンデーション

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 共和国中央星系『フロンティア』、本星『プロスペクティヴァ』衛星『ユリアナ』近傍宙域。

 ノマド『キングダム』船団。


 21世紀のファミレスを模し作られたデリカレーションレストラン、パンナコッタ2号店及び各支店であるが、原則的にどこも配達デリバリーは行っていない。

 しかし自由船団、つまり無数の船が独立して航行するという営業立地上、どうしても運営店舗のある船まで足を運べないという事態も発生する。


「パンナコッタ2号店でーす。お届けに来ましたー」


『おーうご苦労さん。待ってた待ってた! アイランド裏のハッチに着けてくれー』


「ウォーダン船長それセキュリティプロトコル違反ですよね?」


 左右が開放された巨大砲身を中央に据える、砲艦ハルバードクラス『バウンサー』全長1キロメートル。

 その後部中央艦体の上にある艦橋構造体アイランドに、小型宇宙船ボートが接近していた。

 キングダム船団旗艦『フォルテッツァ』の備品である。


 艦橋ブリッジ近くに直接接舷するという、安全管理上あまり推奨されない方法で、配達に来たウェイトレスはバウンサーに乗り込んでいた。

 それ自体が脱出艇にもなっている艦橋構造体アイランド内を少し歩くと、艦橋ブリッジまではもう間もなくだ。だから危ないというのに。


「お待たせでーす」


「おーう来た来た来たぁ!」


「うひー匂いがたまんねー」


 艦橋ブリッジに入るウェイトレスの制服を着た赤毛の少女、村瀬唯理むらせゆいりを出迎えたのは、低身長マッチョのヒゲ親父、ロアド人のビリー=ウォーダン船長である。ほか艦橋要員ブリッジクルーが複数名。


 26隻の超高性能艦の1隻、砲艦『バウンサー』は船団の防備上、何かと中心に置かれる存在であった。

 よって、その乗員も24時間シフトだ。ソーセージとベーコンの盛り合わせが食べたくてもレストランに行けない。

 その為に、赤毛のウェイトレスが特別に配達しているのである。


「まったくウチの美人は大人気でな。共和国艦隊からのスキャンが止まんわ。まー旗艦ほどヒトの出入りが無いからウチは気楽なもんじゃが……。こうしてデリバリーもしてくれるしのぅ」


「そう思うなら外からの出入りは格納庫通してくださいよ」


「オヤジさん早く食べよう!!」


 艦橋正面の舷窓からは、恒星の光に照らされた共和国艦隊の姿を見る事ができた。遠距離なので補正がかけられた映像だが。

 唯理の持ってきた白い保温ケースを開くと、中からは湯気を立てた各種肉のソテーが現れる。

 香ばしくも食欲を掻き立てる匂いが艦橋内に広がり、艦橋要員ブリッジクルーの男達はたまらない様子だった。


「これでアルコールが無いのが無念だわい……。スパイスたっぷり骨付きリブロースとやるレッドビールが最高なんだがなぁ」


「ウォーダン船長、最近わたしも知らないアルコールポーションが出回っているようなんですけど、それどこで作られてるんです?」


 マッチョ船長が骨付き肉(合成)にかぶり付く横で、赤毛娘はオペレーターシートの背凭せもたれに体重を預け、舷窓を覗き込む。

 共和国艦隊は艦列を保っていたが、ヒト型機動兵器などはその内側をせわしなく動き回っていた。

 先のメナス強襲の被害復旧が終わっていないのだ。

 その折に、キングダム船団側の戦力は十分把握したであろう事から、この上更にちょっかいをかけてくる事はないと思われるが。


「小耳に挟んだ程度じゃが、あちらさんの本星ではお偉い連中が雁首揃えて何か話し合っておったとか……? こっちの交渉も、そろそろ動くか?」


「うちの船長もそんな事を言ってましたね。ビッグブラザーの集まりらしいですから、実質的な共和国の最高意思決定機関、てところですか…………」


 冷たい美貌の赤毛娘が共和国艦隊を見据えていたが、やや前傾姿勢となっている為に、ミニスカートの裾が持ち上げられていた。

 それに気付いたシステムオペレーターの若い男が、ソーセージを噛み千切りながら徐々にシートからズリ下がっていく。


 白いオーバーニーソックスとミニスカの間の生肌エリア、そこからジリジリとフトモモの曲線を上へと辿り、もう少しでフトモモとお尻の境から滑らかな曲線とそれを形作る布地が見えそうに。


 というところで、


「さて、それじゃ次の配達に行きますか」


「――――――べヘぇッ!?」


「なにをやっとるんじゃラバーニは」


 クルリと軽やかに振り返る赤毛の少女に、シスオペの男はそのままシートからズリ落ちた。

 部下の奇行に眉をひそめる船長だったが、すぐに興味を無くして唯理の方へと向き直る。


「ユイリは他にもデリバリーかい。どこに行くんじゃ。船を動かせるかも知れんぞ」


「リード船長のとこです。『トゥーフィンガーズ』は船団左翼の端ですしね。お気遣いなく」


「アイツは……なんだ、またあの『カレー』とかいう辛いヤツか? 前にデリカレストランで見た時も狂ったように食っておったが……」


 独特なスパイスの香りと強い辛味の食べ物を思い出し、ウォーダン船長はすぐさまベーコンに噛み付いていた。口直しだ。

 丁重に申し出を断る赤毛ウェイトレスは、ヒラヒラと手を振って別れを告げると艦橋ブリッジを出て行く。

 そして間もなく、出前の小型船ボート超高加速Hi-Gでバウンサーを離れ、無数の宇宙船の間を突っ切っていった。


 なお、システムオペレーターのラバーニは、果たして最後の一瞬に見えたのか見えなかったのか曖昧な自分の記憶に問いかけていた。


               ◇


 共和国本星『プロスペクティヴァ』へのメナス強襲から、30時間が経過していた。


 共和国政府は事後処理に追われていたが、キングダム船団側は比較的平穏な時を過ごしている。

 戦闘による損害は極軽微で、一部チンピラ部隊の訓練が過酷を極めている以外、船団の人々は日常と言える生活を送っていた。


 そんな船団旗艦『フォルテッツァ』後部、レガリア・ハブ内にあるデリカレーションレストラン、『パンナコッタ2号店』にて。


「『商談』? って、私に? なんでまた……。レシピデータのライセンスは船団預かりだったと思いますけど」


「ええ、ですので、それ以外……という事みたいで。多分そちらに関しては独占的に利用する、という契約にしたいのではないですか?」


「て事は、2号店のレシピにプラスアルファしたい、とかそういう話か…………さすがにハングリー」


 赤毛のウェイトレスが配達を終え自分のバイクで店に戻ると、店長から相談を持ちかけられる事となった。

 ちなみに店長は、単眼人モノアイの黒髪で地味目なお姉さんである。船団事務局のヒトで、兼業しているのだとか。


 その店長から店舗裏の事務所で詳細を聞いてみると、共和国企業の複数社から21世紀風の料理、つまりデリカレーションを商品として取り扱いたいと言う申し入れがあったのだという。

 共和国本星、そして共和国惑星圏で、パンナコッタ2号店同様のデリカレストランを展開しようというのだ。

 それ自体は唯理も良い事だと思うが、更に踏み込んでくる根性に共和国企業の本気を感じる。

 どうも、共和国企業の独自性として他にはない料理を独占して出したいらしい。


 どうしたものかと思いながら、赤毛のウェイトレスは店長と別れスタッフルームへ入った。退勤時間なのだ。

 実際、唯理の料理レパートリーは公開した物以外にもまだまだたくさんある。

 だが、それは別に唯理が開発したモノでもない。21世紀までの地球の先人達のモノだ。

 レシピデータはその遺産として誰でも自由に使えばいい、とは思うのだが、そこは無節操に広める事も出来ない事情がある。

 故に、共和国企業のビジネスの為に、特別に提供する気も起きなかった。

 既に公開されているレシピについては、キングダム船団事務局が管理しているのでそちらと交渉して欲しい。


「うぇーい、たいちょーおっつかーれさーん」


「はい? あれ? メイさんこっちに出てたんだ。任務後だから休みにしたのに」


 唯理がポニーテールをストレートに戻していたところ、隣の鏡台に来たのは桃色髪の健康美人、メイフライ=オーソンであった。

 ウェイトレスのバイト中だったらしく、肩と胸元と背中を大胆に出した特別製の制服を着ている。

 しかし、桃色髪の姐さんは、即応展開部隊『ラビットファイア』の一員として先のメナス戦にも参加していた。

 その為、現在は休暇オフとなっているはずだ。他ならぬ隊長である唯理がそうしたのだから。

 もっとも、休暇中にバイトするのも本人の自由なのだが。船団事務局の定める負担レベルの範囲内に収まる限りは。


「たいちょーだってレーションの配達に船団の中飛び回ってたんでしょー? 言ってくれりゃ部下のあたし達が行くのに」


「いいんです何人か知り合いの船長のところに顔も出しておきたかったし。って、もしかしてみんなフロアに出てる?」

 

「あ、隊長戻ってる」


「隊長、この前はかわいいケーキをありがとうございました。みんなおおはしゃぎでしたよ。食べる時に『かわいそうだ』って大騒ぎになっちゃいましたけど」


「ありゃ? ユイリも今上がりか」


 そうして間もなく、メイ以外のラビットファイアの面々もスタッフルームに入ってくる。

 小さなツノを頭に生やした、ロリ顔でロリ巨乳体系、フリフリな制服を着たファンクション=テクニカ。

 おデコを上品に出した金髪ロングヘアの清楚系、ロングスカートと密かな露出をあしらった制服の、サンドラ=コムドスカ。

 ツーテールの髪型で、小柄ながら筋肉質な褐色娘、ベルトの多いパンク系制服を着た、コリー=ジョー・スパルディア。

 そして、無言で小さく頭を下げる黒髪ロングの無表情美人、上は長袖だが下はスリット入りミニスカートにリボン付き生脚という制服の、ハニービーマイ=ラヴ。

 これに、赤毛の隊長と桃色髪の姐御肌を加え、結局6人全員がパンナコッタ2号店に出て来ていた。


「――――――――んで、ローグの船がパブリックオーダーの猶予期間中だろ? そんで、わざわざそっち行って上半身裸のまま歩いてたりすんのよ」


「あーでもちょっと分かるなー。男と違って女はそういうカッコ出来ないし。でもあっちの船でも胸出してりゃ野郎に見られるのは変わんないスよね? いいのかその女は」


「ローグ船団の女性って……そういうところやっぱりちょっと大胆ですよね? ここでも結構凄い格好してたり…………」


「隊長がローグ大隊を編成してからは、そこの女性の方も大分大人しくなったと聞いてはいますけど」


 ラビットファイアの面々は、雑談などしながら鏡に向かい化粧を直している。

 結構みんなしっかりしているんだなぁ、と最低限の事しかしていない赤毛の元女子高生は、気後れする思いであった。


 21世紀でも今の時代になっても、身近な少女に「やっている事が雑だ」と叱られる、女子力に問題がある唯理である。

 それに比べれば、スッピンでも十分魅力的な女性陣が、必要最低限なところだけを際立たせ、美しさに追い撃ちをかける姿勢は見習うべき部分であろう。

 唯理も出来ないワケではないのだ。必要無ければやりたくないだけで。

 だがこれからは、もうちょっと普段から化粧しておくべきか? と、反省する赤毛娘である。


 そんな女子力コンプレックスを抱える赤毛の美少女が制服を脱ぐと、ラビットファイアの女性陣5人がギョッとした顔をしていた。


「…………たいちょう、それスッゲぇ」


「ふわー……なんか、スゴイ、ですね」


「ユイリ……それ誰かに見せる予定でもあるのか?」


 唯理が制服の下に身に着けていた下着。

 それは、鮮やかな紫色でブラは巨乳の下半分をギリギリ覆うクォーターカップ、パンツは最小限の部分しか隠さないヒモなクセに、サイドに繊細な刺繍のレースのヒレやリボンをあしらうという、エロさと可愛らしさを強制合体させたような代物であった。


 化粧っ気が無い上に、普段の服装も地味目な赤毛の隊長が隠し持っていた、凶器(中身含む)。勝負下着というか、もはや秘密兵器である。

 そのあまりのギャップに、無表情なラヴすら目を丸くする様子だった。


「ウチの船長が用意してくれるのを着ているだけなんだけど……。やっぱり大胆だよねこれ」


 環境EVRスーツが普段着としての地位を確立して久しく、その性能の高さから下着ももはや必須の物ではなくなり、見えない部分のお洒落としての意味合いが強くなっている。

 そういう下着を着けさせたい船長や同船の双子と、環境EVRスーツが普段着としてしっくりこない唯理の利害が一致。

 最近では赤毛娘も言われるがままに、セクシー下着を着けているのが当たり前になっていた。

 何より、着け心地が良く楽なのがどうにもならない。

 2,500年も経つと布地ひとつとっても進化が半端ないのである。


「インナーかぁ……EVRスーツの下に着ける必要があるかなぁ、って思ってたけど」


「かわいいデザインですよね。ちょっと……おと、わたしにはお洒落過ぎるかなって…………」


「エロ過ぎるって言いたいんだろ?」


「ちょ!? 違いますオトナッぽ過ぎるかなって言ったんです! いえ言おうと思ったんです!!」


 前後左右からキワどい下着を舐めるように見つめられ、少々恥ずかしくなって来る赤毛娘。もう環境EVRスーツを着てもいいだろうか。

 しかし、最低限環境EVRスーツだけ着ていれば良い、という常識がある世代の女性陣は、唯理のセクシー下着に興味津津のようであった。


 現代において21世紀で見るような下着というのは、ファッション性が強く、特別な地位や階級または職業の人間が着ける場合が多い代物となっている。

 逆に、誰にも見せないというのであれば、そもそもそういったモノに気を使う事も少ないのだ。

 元共和国の幹部であったマリーンは、様々な場面で下着に縁があったのだが。


「どれどれ、ユイリちょっと回ってみな」


「ん?」


 ニヤニヤと面白そうに言うジョーに、言われるまま一回転して見せる唯理。

 すると、背は低めだがスタイルの良いツーテール娘が、制服を脱ぎ棄て壁面の鏡に向かい合う。一応全裸ではない、制服用の地味な下着を着けていた。

 実は、スタッフルームの壁に並んでいるのは鏡ではなくディスプレイであり、姿見として活用するのは機能の一部でしかない。

 なお、口紅のスティックやアイブロウ用のペンシルに見える道具も、当然ながら21世紀のそれより桁外れに高度な化粧品であった。


 情報機器インフォギアから鏡型ディスプレイを操作すると、そこに映るジョーの姿が一部変化する。

 その映像の中で、背の低いマッシヴグラマーなロアド人は、赤毛娘と同じデザインの下着を身に着けていた。

 唯理の映像から下着を抜き出し自分に合成するなど、専門職でなくても簡単らしい。

 しかも、元映像のロアド人美女に違和感無く合成されていた。


「おー……ウハハハ! ファイトコスと露出はそんな変わらないのにエロッ!!」


 裸身を隠す為ではない飾って引き立てるセクシー下着に、おどけて見せるジョーもやや顔が赤い。

 仕事着のマイクロビキニと良い勝負な露出度だが、要所要所のデザインが扇情的であった。

 今現在装備している唯理も、客観的に見て大分恥ずかしさが増した。


「へー、ちょっといいじゃん? ファン、全員分被せてみ」


「ええ!? 『全員』って、わたしもですかー……??」


 桃色髪のお姉さんも興味を持ち、今度はデータ弄り専門のロリ少女に下着姿の合成をやらせる。

 少し戸惑いながらも、実は自身も興味があったので、言われた通りにブラとパンツを各人の映像に被せるファン。

 こうして、姿見ディスプレイの中には、ギリギリまで攻めたセクシー下着姿の美女美少女6人が並ぶ事となった。いったい何と戦おうというのだろうかこの部隊は。


「おーなかなか! いいなぁアタシもこういうの作ろうかなぁ」


 桃色髪の健康美人は、制服を脱いで地味下着姿になると、セクシー下着映像をより自然にフィットさせる。

 ついでに色も変え、右に左にカラダを回して具合を見ていた。


「ひゃー……これは、ちょっとマズ――――え!? ちょ! メイさん!!?」


「いいじゃんいいじゃん、なんかファンだと余計にヤバい事している感じ♪」


 自分でやっておいて、ツノ付きロリ巨乳少女は鏡の中の姿を見て真っ赤になっていた。

 しかも、オヤジ的な笑みのメイに制服を剥ぎ取られ、画像から不自然にはみ出していた服の部分が消えた事により、エロ下着姿も違和感が無くなってしまう。

 ファンは半泣きである。


「うーん……ちょっとデザインが挑発的過ぎますね。もう少し肌を覆う部分が大人しめだと良いんですけど」


 本人の意思と無関係に攻め下着姿にされた美人保母さんだが、自分も制服を脱いで姿見の中の姿を吟味していた。

 大人の余裕か、動揺する様子は無い。均整の取れたスタイルをさらしながら、堂々としたものである。

 照れを誤魔化すジョーは更に年上だったが。


 そして無言のまま、いつの間にか下着姿で自分の合成画像を凝視している黒髪の無表情美人。

 髪同様の黒色にした下着の合成映像を、ポーズを変え様々な角度で観察していた。


 その5分後、


「え? な……なにしてんのコイツら??」


「はわわわわ……!? すっごい、いっぱい、プリップリ……」


「おー……」

「フッ、やりおる」


 パンナコッタ2号店に来たツリ目オペ娘、メガネエンジニア嬢は、スタッフームの入り口の陰から呆然と室内を眺めていた。

 一緒に来たメイド服姿の小柄な双子、リリスとリリアは、何故か上から目線のドヤ顔であったが。


 そこにあったのは、抽象的に表現すると、横一列に並んだ瑞々しい桃である。


「うわーエグッ!? たいちょーのとこの船じゃこんなの着けてんの!!?」


「こいつカマトトぶってとんだムッツリだったんだなー」


「ブッ飛ばすぞ」


「えーんコレは無理ですー……!?」


 ラビットファイアの6人は、鏡型ディスプレイの前に並んで立っていた。

 そこに映し出される姿は相変わらずの合成映像だが、先ほどまでとは内容が大分異なる。


 メイの健康的な肢体には、普通のブラやパンツと思わせて実際にはギリギリな部分しか隠されていないシースルーの下着が。


 ジョーの小柄かつ筋肉質なカラダには、巧妙に要所のみ覆うようになっているヒモと金属輪の装飾が施されている下着(?)が。


 赤毛娘のお尻に喰い込み肉が少し乗っかっているのは、穿いている事が疑問になるズレ落ちそうな極小ローレグのパンツである。上はブラではなくショートのタンクトップで下乳が見えていた。


 真っ白で清楚そうなブラジャーとパンツ姿のファンだったが、これも総シースルー仕立てな上に、脇乳と脇尻の部分に切れ込みが入っているという罠だった。ガーターベルトと合わせると背徳感が物凄く、本人は泣いている。


 ワンピースタイプのランジェリー姿となった美人保母さんは、流石に少々困り顔だ。スケスケ布地の下に、思いっきり食い込んだティーバックが見える。


 そしてラヴは、ヘソ下から真下に鋭く、ビキニラインに沿って切れ込む布地面積の小さなパンツが気に入ったようである。

 同じく布の少ないブラと合わせて、マットブラックな部分がセクシーなのと同時にややスタイリッシュ路線の下着であった。


 繰り返すが、合成映像である。

 自分もお洒落な下着を着けてみようか、という仲間に、唯理が船長からデザインデータを取り寄せたのだ。

 今は後悔している。

 マリーンが自分に何を着せようとしていたのかを第三者目線で垣間見、赤毛は恐れおののいた。あのヒトは自分をどうしたいのだろう。


 ちなみに唯理は、その全てを着た事があるワケではない。ジョーの物言いはとんだ風評被害である。

 しかしいずれは順番が回って来るのかと思うと、流石に顔が熱くなる思いだった。


「なーファン! これこれこの後ろが丸く開いてるのにしてみな!!」


「なんですかコレなんの意味があるんですかぁ!?」


「こういうのもあるんだな……って、肝心なところが隠れないぞコレ?」


「…………え? 他にパーツと組み合わせるとかじゃなくて??」


「わぁ……スゴイ。隊長、これって…………」


 後ろがほぼ隠れていないパンツの画像を合成されて悲鳴を上げるロリ巨乳。お尻もなかなかのサイズ。

 そして、ツーテールの見ているランジェリーの作りに、赤毛の少女も神妙な顔で首を傾げる。いつの間にか保母さんにガーターベルト着けさせられている事には気付かなかった。


 そんな遊びに気を取られている乙女どもだが、現実リアルでの自分たちも簡素な下着しか着けていない半裸な状態という事実を、失念していたりする。


 無防備な背中と、やや筋肉質で大きく丸い尻、フトモモから腰回りの肉付きが良い良尻、引き締まりバランス良く腰から突き出された美尻、小ぶりだが形の良いプリ尻、母性滲み出る安産型の豊かな尻、腰付きからのなだらかな曲線が妖しい媚尻。

 それら6つの生尻が押し合いし合い、美女美少女たちが動くたびにフルフルと微かに揺れていた。


 そのどエラい、そしてどエロい迫力に、同性としても目が離せず生唾を飲み込んでしまうオペ娘とエンジニア嬢。

 直後にリリリリの双子がその全てを撮影していた事が発覚し、即応展開部隊ラビットファイアが総出で追撃をかけていた。


 装備不良が祟って思いのほか手こずった。


               ◇


 リリスリリアのエロメイド姉妹を物理的に引っ繰り返していたところで、唯理は船団長から呼び出しを受けていた。

 口調からして、あまり楽しい話題ではなさそうだ。時期的にも、共和国絡みであるのは容易に予想できる。

 ついでに出前を頼まれたので、赤毛の少女は再びウェイトレスの制服を身に着けると、マーボ豆腐膳を持って行く事とした。


「デリジェント星系グループ、スキュータム・ライン下流の銀河辺縁に近い星系だ。状況としてはターミナスの時に近い」


 香辛料と辛味たっぷりな、グツグツ煮立つ小さな鉄鍋の中に匙が差し込まれる。

 その中身を口に運ぶと、独特の風味と刺激が舌を襲うが、それ以上の挽肉の旨味と豆腐の滑らかさが堪らなかった。

 ライスと合わせて口に運ぶと、もう最高だ。

 だが、難しい会話内容と辛さに耐える船団長の顔のせいで、その辺が全く伝わらない。

 本人はこれでも好んで食べているのだが。


「共和国政府から……まぁ一応、共和国政府だな。向こうからの要請は、地上に残された人員と機材の回収。

 だが、デリジェント星系は既にメナスの勢力圏になっていると思われる。

 共和国も、例によってメナスに関してはおおやけの対応をしていない。したとしても、メナスの艦隊相手に救出作戦は展開できないだろう。

 そこで、俺たちというワケだ…………」


 スキュータム・流域ライン、デリジェント星系グループは、ターミナス星系同様、メナス侵攻により放棄された。

 しかし、逃げ遅れた住民や重要な物資は回収したい、というのが共和国の希望である。

 共和国艦隊は、政治的な理由もあって救出の為の戦力を派遣できない。

 仮に救出部隊を派遣するにしても、メナスがはびこるような星系に行くなど、いくら命と宇宙船があっても足りない。


 ならば、と。


 ターミナス星系に続き、共和国本星系でメナスを撃退したキングダム船団にお鉢が回されるのも、当然の流れではあった。


「無論、俺達が共和国の下働きで命をかける理由は無い。だが、今回の件を向こうのオーダー通り片付けたら、キングダム船団を共和国のPFOとして認めると言って来ている。船団の運営権と戦闘指揮権を、ウチの船団で持ったままで、だ。

 契約期限は無し。破棄する権限はこちらにある。共和国の出す条件としては破格だが、それ以前にデリジェントグループの方の問題が大き過ぎる。ユイリの意見を聞きたい」


「デリジェント星系の状況はどうなってます?」


 間髪入れずに唯理が質問すると、船団長はマーボ豆腐食べながら部下に指示を出す。


 艦隊司令艦橋ゼネラルコントロール中央の大型空間ディスプレイに、問題の星系の立体映像が表示された。

 そこには、現在までに分かっている情報や共和国から提供された情報も全て記載されている。

 ただし、最も重要なメナスの分布と総数は不明。

 もっとも、ターミナス星系グループでは300万体のメナスを撃退したが、それ以下という事はまず、ない。

 キングダム船団の保有する26隻の高性能戦闘艦を最大限活用しても、星系全域のメナスを殲滅するというのは現実的ではないだろう。

 となれば、作戦は必然的に限られて来る。


 そこで重要になるのが、実際に惑星へ強襲降下を行い、メナス群の突破と住民の救出を行う機動部隊、ローグ大隊であろう事は間違いなかった。

 船団長が唯理を呼んだのも、そういう意味だ。


「率直に言って反対です。船団もローグ大隊も練度がまるで足りていません。そこは船団長も把握していると思いますけど、それでもこの件、受けるほどのメリットが?」


「ターミナス星系の難民受け入れも条件に入っている。フロンティア内の惑星のテラフォーム事業で対応するそうだ。

 難民船団から解放され、キングダム船団も共和国所属のPFOとして圏内の航行や停泊がかなり楽になる。特権も認められているからな。

 船長会議にはかけるが、既に事務局の方や船長の何人からかは検討すべきという意見が来ている。こっちは共和国側からのリークだろうが…………。

 共和国は硬軟織り交ぜた戦略に出た。恐らく我々が失敗する事や、あるいは大損害を被る可能性も想定した上での要請だろう。

 それを踏まえても、現状の打開としては魅力的だ。向こうの狙い通りにな」


 ハイリスクハイリターンはなはだしいが、ディラン船団長としてはこの件は挑戦するに値すると言う。

 当然それも、クレイモア級をはじめとする26隻の性能ありきであり、またメナスと戦える戦力を率いる赤毛の少女次第であるのだが、


「…………共和国からはどれだけの支援が引き出せるんでしょうね?」


「…………と言うと?」


 何やら勢い込んで振り向く唯理に、船団長のさじが止まった。


 その後、交渉窓口であるユルド社のギルダン=ウェルスに通信が入り、キングダム船団からの要求に少々絶句させられる。

 ローグ大隊隊長の赤毛の少女より、デリジェント星系での救出作戦に先駆け必要とされた装備が、ヒト型機動兵器を最低でも、1,000機。

 それも、大気圏と重力環境下での運用に問題がなく、宇宙からのノンオプションでの進入降下が可能な機種。

 共和国企業の大量販売モデルではなく、軍での採用実績がある主力として用いるのに耐えるだけの性能があるエイム。

 これを可能ならば予備機も含め1,200機ほど。全機分の火器も一緒に。

 という、非常に具体的な内容であった。


 正直、ギルダン=ウェルスはキングダム船団がデリジェント星系での救出作戦を引き受ける可能性は低いと考えていた。

 44社の代表に、この提案をしたのもギルダンだったが。

 ところが現実には、キングダム船団はフル装備を以ってこれに当たろうとしているのが分かる。


 結論から言うと、この要求は通る事となり、キングダム船団へ共和国から大量の装備が引き渡される運びとなった。

 共和国と企業の内部は相当騒がしくなったようだが。


 相手にどんな思惑があろうとも、キングダム船団の状況が改善され、またデリジェント星系に残された住民を救助する為だと言うなら、唯理に否があるはずもなく。

 それがどれだけ困難であろうとも、自分の全能力、そして鍛えた兵士を含めた全兵力を以ってして、これに臨むのみであった。





【ヒストリカル・アーカイヴ】


・アイランド

 艦橋構造体の通称、艦橋を含む艦体の上部に設置される構造物。

 それ自体が独立した宇宙船となる場合もあり、主に船の沈没など非常事態に用いられる。


・レッドビール

 秘密結社アンダーバーで製造されるアルコールの一種。ビール復活プロジェクトの産物。切れ味重視。

 他にもゴールド、ブラック、イエロー、ホワイト、などが試作されている。




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