98G.ローグアラウンドブラザーフッド

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 共和国中央星系『フロンティア』、本星『プロスペクティヴァ』衛星『ユリアナ』近傍。

 ノマド『キングダム』船団、私的艦隊組織PFC『ローグ』本船。


 かつてひとつの船団の旗船フラグシップであった、全長950メートルの労働者船。

 上下と前後に長く、両舷に古いブースターエンジンを備えた船体は、大分痛みが目立つ古い船であった。

 しかし、船団丸ごとキングダム側に吸収される事となり、同船は最低限乗員が生存に問題がないよう改修を受ける。

 そうして新品同様とは言わないが、以前のように破綻する寸前なエンジン付きジャンクの塊ではない、まともな宇宙船となっていた。


 そんなレストア船の某所、ローグ大隊の集会場たまりばとなっているトラムステーション兼食堂は、現在大騒ぎの最中だった。


「オラァ! どうだぁ!? メナスのクソをクソデブリにブッ潰してやったぜファ○クオフ! ザマー見やがれ!!」


「あのメナスを4機だぜ4機ぃ! 文句あっかエリートどもがぁ!!」


「オメーの撃墜スコアはほとんど連携撃墜判定だろうが!!」


「ああ!? てめケチ付けてんじゃねーぞ!!?」


 テーブルに足をかけたチンピラふたり、単眼種族モノアイと犬種獣人類ライケンがガンを付け合っている。

 それを気にした様子も無く、食堂のそこら中でローグ大隊の人員が大声で先の戦闘の事を話していた。

 その手元には、どこからか調達したアルコールポーションのたぐいやデリカレーションの数々が。

 ある意味で誰よりも早く21世紀の文化に適応している野郎どもである。


 バカ騒ぎしているチンピラ集団は、主にメナス迎撃に出たローグ大隊第2中隊の野郎どもだ。

 出自不明の自律兵器群『メナス』は、遭遇すれば自力での生存を諦めなければならない、と言われる程には恐るべき脅威メナスである。

 回避し切れない速度と密度のデブリ、脱出不能の高重力圏、そういったモノと同列に語られる、宇宙の天災。

 それを正面から迎え撃ち、生き残り、勝利した事で、第2中隊のチンピラ兵士はテンション高止まりとなっていた。

 そして、戦闘には参加しなかった別の部隊の男達が、うざったそうな顔をしている。

 そういったテンションの落差はあれど、良質なアルコールと美味いデリカレーションが大量に並ぶステーションの食堂は、品の無い雑なパーティー会場と化しており、



 大股で乗り込んでくる赤毛の大隊長の姿に、場面転換したかの如く静かになっていた。



 乱雑に置かれた長テーブルとイス、それらを見もせずド真ん中に進んでくる赤毛娘に、直立不動となるチンピラども。

 上官と部下、さもなくば飼い主と駄犬。

 カワイイのは見た目だけ。叱責か命令か、そのおっかない少女が何を言うのか。

 ローグ大隊の野郎どもは、若干の緊張を滲ませながら身構えてしまい。


 赤毛の少女、村瀬唯理むらせゆいりは周囲の面子を鋭い目で見回すと、手近にあった樹脂製のカップを無造作に掴み、握り潰す圧力で中身を一気にあおった。


「――――――ッふう…………。どうした、続けろ!」


 そんな大隊長の科白セリフに僅かな間を開けた後、「イエー!!」とか大歓声を上げるチンピラ大隊。

 続く、


「24時間後から通常ローテーションだ! 第2中隊は訓練シフトになる! それまでに頭をクリアにさせておけ!!」


 という命令に、叫び声は更に膨れ上がっていた。

 明日から通常業務、という事は、今日はオフという意味である。


 ローグ大隊第2中隊の兵士たちは、存分に飲み食い騒ぎ、その後にひとり静かになった時に、自分が生き残った事を十分に噛みしめていた。

 それから徐々に、自分がそれだけの実力を持ち、それにより何を得たのかを理解するに至る。

 もっとも、それを素直に認めたり、口に出したりする殊勝なチンピラはいなかったが。


 なお、ローグ大隊第2中隊に非常に分かり辛い休暇を与えた大隊長はというと、


「んむー……エイミーいい匂いー…………」

「ひ……ひぃ~~~~!?」


 ノリで飲み干したボトルの中身により、母船パンナコッタに戻ってからマタタビ嗅いだネコのようになっていた。

 抱き付かれたマタタビことエイミーは、完璧に想定外なボーナスタイムに対応しきれず情けない悲鳴を上げている。


「エイミーぷにぷにして気持ちいい……ぬくい」

「ぐッ……!?」


 そして、赤毛娘の他意無き感想に、思わぬダメージを受けうめいていた。

 太ってはいないメガネのエンジニア少女だが、皮下脂肪が若干気になるお年頃。しかも最近の唯理のご飯がおいしいので体重も気になる問題。

 ぷにぷになのは一体誰のせいなのか、と恨み節を説きたかったが、胸に顔を擦り付けてくる赤毛の少女がカワイイので、そのままキャビンのソファで抱き枕に甘んじていた。


 そんなふたりを、入り口の陰から船長のお姉さんが至福の笑みで覗き見していた。


               ◇


 共和国中央星系『フロンティア』、本星『プロスペクティヴァ』。

 首都『グローリーラダー』某所。

 メナス強襲から、約18時間後。


 フロンティア恒星系内では、各惑星の防衛艦隊が体勢の立て直しで忙しく動き回っていた。

 その一方、今回の件で持ち上がった諸問題について、共和国政府内では対応が協議されている。

 無論、実質的には44の支配企業ビッグブラザーによる意思決定であったが。


「銀河中心側はメナスが来ない、などというのも、所詮は単なる『そうあって欲しい』という希望的観測でしかなかったな」


「統計ですらない。銀河の外からメナスが来ているなら、中心にある星系の方が被害が少ないのは当然の事だ」


「問題のターミナス星系グループやデリジェント星系の他、銀河外周部の星系での被害も目立ち始めていますからなぁ。全銀河でメナスの活動が活発になっているのが現実でしょう」


「中央での目撃報告も時間の問題だとは思ったが……。しかし周辺星系を飛ばしていきなり本星というのは、少々インパクトが大き過ぎるだろう」


「そもそも単艦に近い戦力でいったい何をしに来たのやら。我らへの嫌がらせ以上の効果が見出せない」


「メナスの行動原理が分かるのなら、即『ウィズダムメダル』を受賞できるでしょう。それが分からないまま、ビッグ3を上回る戦力が徘徊しているのですから問題です」


 赤と金の内装に、古風な調度の置かれた豪奢な大部屋。

 そこの大テーブルに着くのは、立体映像や仮想現実VRではない、本物の人間達だった。


 この時代、例え銀河の反対側であっても、導波干渉儀とウェイブネットワークの恩恵によりリアルタイムでの通信が可能だ。

 しかし、その通信映像がどれだけ高精細であっても、どれだけの補正や解析といった情報支援プログラムを間に噛ませても、そこに相手はいないのである。

 対話相手の生のデータが手に入る、直接対話という意思疎通手段。間に何も入り込む余地が無いという信頼性。

 結局どこまで技術が進んでも、人間はデータによる通信を完全には信じ切れないのだろう。

 ましてや、互いの腹を探り合う、共和国を支配する企業のトップ同士、あるいはそれに準じる者達にとっては、特にだ。

 会員・・は全員出席が原則であり、それが伝統という事になっているが、本当の理由はそんなところである。


当面は・・・艦隊の増強と再編成で凌ぐしかあるまいが……。対メナスプランがどれかひとつでも実用化できていれば」


「人事みたいに話しますな、マックマー会長。ハインデュークの『フェロン・ユニット』の方、成果は?」


「ハハハ……ローレル様、そこは言わないお約束でしょう。『メトシェラリアン』や『12天使』、『デウス・システムズ』、『アンティークドール』と…………他をつつく事にもなりかねませんよ?」


「やれやれ、銀河で最大の資本がこれだけ集まってこの有様とは。いっそブラックホール兵器の使用を合法化する方が遥かに容易く思えるな。今なら連邦政府も頭から否定はしないだろう」


「アノマリーから何か掘り出せないか、そんな事にまで縋りたくなるな……」


「アポカリプスの発現から、そちらの試行はどこも消極的となっている。よく分からない物を使うと、たいていロクな事にならない」


 共和国も今まで、メナスに対してただ見て見ぬフリを決め込んでいたワケではない。

 そもそも目を逸らしたところで、現実の脅威メナスは消えないのだ。各企業グループで、対策は打ち出していた。

 だが、その詳細は機密扱い。進捗も他の企業に知らせていない。

 共和国を支配する44社は、基本的に利害が一致するだけのライバル企業なのだ。

 メナスに対抗するほどの技術となれば、それはもう社運をかけるか企業に大きな利益をもたらすモノか、あるいはその両方である。

 各社の代表はその話を他者に振りながら、直接会談の利点である相手の観察を注意深く行っていた。


「艦隊の増強か……とりあえず何かした、メナス相手ではそれ以上ではないな」


「先の攻撃で喪失した艦艇や防衛兵器の補充もいる。来季の契約はPFCに損害の補填はしない旨、契約書に忍ばせておくべきか? 政府との契約を望むPFCはいくらでもいるのだ。増強以前に、そちらが大した支出だ」


「共和国艦隊を構成するPFCは、スポンサー企業から装備の提供を受けているモノも多いでしょう。出所は同じですから、大した経費削減にはなりませんね。

 その分の予算は税率を上げれば済むだけの話では? 装備更新にもなります。無駄にはなりません」


「メナスの攻撃では本星は被害を免れたが、こうなると少しくらいは被害を被っておけばよかったのだ。頭の上に攻撃が落ちてくれば、大衆も増税に口やかましく反対はしまいて」


「勝手な事を言う下々など放っておけば良い。増税も付帯予算も国家百年の計だ。文句があるなら共和国から出ていけば良い……」


「ははは、便乗予算も立派な経済効果なんだがね。まぁどうせ大衆にこの辺は理解出来ないよ」


「いっそメナス侵攻の事を知らせてやれ。公的に認めれば星系規模での対策が必要となり予算は天文学的数値に膨れ上がる。それで自分達の立場を理解するさ」


「そこまで大衆の頭は良くありませんよ。我々……いえ政府は粛々と法に則って進めるだけです」


 もっともらしい理屈を並べて歓談する、支配企業のトップ達。

 共和国における国民とは、その全てが価値創出の手段に過ぎない。

 それを動かす法も、税制も、全ては企業の都合の良いように回されるのが常だ。 

 そして共和国の国民は、そんな大きく企業本意に偏った秘密政治を、生活の端々に感じている。

 だが、権力者に都合良く整えられた法律故に反対も難しく、また反発が起これば強大な軍事力で以って封じ込められるのが常だった。

 故に、本来必要な何百倍もの防衛予算のツケを押し付けられながらも、国民に事実は知らされないのである。


「彼の船団の議題が出ないようだが…………」


 そんな支配者達の傲慢も、より上位の者の前では控えざるを得ないのだが。


 44社の企業グループは、即ち共和国の最上位企業という意味でもある。

 そこに上下関係はなくとも、厳然たる格の違いというモノは存在した。

 共和国における最大の企業グループ『カンパニー』。

 そしてグループの総帥、ハーマン=ヴィシー。

 この会合において、最も敬意を払われるべき人物であった。


 老いてなお衰えの見えない、厳しい顔の小柄な老人。

 その声は決して大きなモノではなかったが、室内の雰囲気を一変させる力がある。

 誰もが口を重くし、発言を慎重にさせていた。

 ただでさえ切り出し辛い話題に、暫し沈黙が続く。

 問題の自由船団『キングダム』は、様々な点で共和国の当初の予想を大きく外れた、扱いに困る代物と化していた。


「…………例のノマドの交渉はユルドが名乗り出ていたが? シラー会長」


 比較的利害関係に薄いハインデューク社の会長が、ユルド社会長の妙齢美女に質問を飛ばす。

 ユルド・コンクエストの不興を買うのを恐れる企業は、この問題に触れたくない。


「先日のメナスとの交戦で、キングダム船団の擁する特殊艦艇が報告書通りの戦闘力を持つ事は皆様確認できたかと思います。

 船団へ対する強硬手段は現実的ではありません。引き続き、内部浸透工作と懐柔交渉であたるべきかと……」


「どのような条件交渉を行おうというのだ、共和国艦隊以上の力を見せるあの船団に」


「相手の要求は共和国に帰属しない上での全面的な支援……。ノマド如きが増長したモノだが、アレだけの軍事力を持つならそれも当然か」


「ノマドがノマドのまま共和国の後ろ盾を得るなど論外だな。同様の権利を他の者が求めはじめれば、国家の体制にも関わりかねない」


「船団の責任者は一切譲歩する気がないようだね? ターミナス星系の厄介者を押し付けておいて見返りを得ようなどと、随分と都合のいい事を言う…………」


「ミレニアムフリートを入手した経緯が一部不明瞭だが、機動戦力の高さも報告書は無かったぞ。これはどういう事なんだ」


「ローグとかいう最底辺の船団が、メナスとの戦闘に耐える戦闘集団になるとは。いったい何があればこういう事になるんだか。こんな事が出来るなら、わざわざ膨大な資金を投入してPFCを組織する必要は無いよ」


 ユルド社会長のシラーが、大テーブルの上にキングダム船団の資料画像を出す。

 はじめて公開される情報も多く、特に私的艦隊組織PFCとして新設された『ローグ大隊』に関しては、企業のトップ達が怪訝な顔を見せていた。

 キングダム船団の保有する26隻の特殊な宇宙船に関しては、共和国でも『千年王国の艦隊ミレニアムフリート』としてその正体を把握している。

 だがローグ大隊の方は、なんら特別ではない普通の人間と普通の兵器による戦闘集団だ。

 それが共和国の最精鋭でも難しいメナスの撃墜をやってみせるというのは、ある意味で『千年王国の艦隊ミレニアムフリート』よりも脅威だった。


 支配企業ビッグブラザーはキングダム船団を強く警戒している。

 少し前までは「所詮自由船団ノマド」という意識があったが、今となってはそれも無い。

 高い独立意識と堅実な運営をされている船団内、高い練度と戦力を保持する防衛部隊ローグSQ、そして桁違いに強大な攻撃能力を持つ『ミレニアム』の戦闘艦艇。

 事前に正確な情報を得ていたにしても、まさかそれらが共和国艦隊を上回る力を持つとは信じられないだろう。

 今となっては、取り込むよりも排除するべきだと考える企業のトップも何人か出ている。

 もっとも、力押しが効く相手ではないのも認めざるを得ない事実だが。


「メナスの攻撃で共和国艦隊が後手に回ったのも問題だ。アレでキングダム船団が出しゃばる余地を与えてしまった」


「…………キングダム船団の立場が強くなり過ぎていますね。現状でもまだ組織が最適化されているとは言えないのに、これから態勢が整えば更に強力になりますよ。共和国に対して、より強硬な姿勢に出る事も」


「何らかの対応を取るべきだ。ユルド社はこのまま、ノマド相手に不利な状態で交渉を続ける気なのか」


 最後のハインデューク社会長の科白セリフに、40社ほぼ全ての代表の目がシラーへと向けられる。

 妙齢の美女の表情は涼しげだったが、内心は少々気分が悪かった。今まで情報は十分に渡していたし、半ば押し付けるように対応を丸投げしてたのだから、いまさら口を出すなと。

 無論、それを表に出すような隙は見せないのだが。


「メナス対応においては言うに及ばず、ミレニアムフリートは共和国の中枢戦力とも成り得る存在です。キングダム船団は刺激せず、共和国の古き良き伝統に則り迎え入れるべきではありませんか?」


「『共和国の伝統』、とは?」


「それはもちろん、『友のように、兄弟ブラザーのように迎え入れよう』と…………」


「45社目にでもすると!? ノマドだぞ! 圏内のリベラル派がここぞとばかりに騒ぎ出す!!」


「少なくとも我々は、連邦の『ユニコントロール主義』への反抗と、健全な・・・人類文明圏発展の為に団結しているはずだ。しかし、自由船団が我々の理念を理解する事はないだろう」


「ノマドが指揮権を我らに預ける事はありえない。よって、制御できない戦力などナンセンスだ」


 本心はともかく、万が一にも敵対しないよう最高の待遇で共和国に招くべきだと言う勧誘美女シラー。それこそ、共和国の支配企業と同格を以ってするに相応であると。

 対するお歴々の反応は、予想通り非常によろしくなかった。

 銀河を支配する44社のプライド、実質的な独裁体制の維持、自分達に匹敵する者を取り込む事への危機感。


 とはいえ、科白セリフと異なり、何が最善かはこの場にいる全員が分かっているのだが。


「あくまでも、最終決定権は我々が持たなくてはならない……。この銀河は広すぎる。偽善や夢想に惑わされず、真に合理的効率的に人類社会を運営できるのは、連邦でも皇国でもない我々以外にあり得ないのだからな」


「強過ぎる力は御し難い。操るには適度に戦力を削りたいところ。何か名案は?」


 誰へ問うでもない質問は、交渉を任されているはずのシラーの頭越しであった。

 面子が立たないユルド社会長であるが、それに文句を付けもしない。

 キングダム船団に関しては、付け入る隙が無いと皆分かっているのだ。

 迂闊な事を言えば、今度はその対応を自社いいだしっぺが行わなければならなくなる。


 シラーだって、他に目的が無ければ手を出したくない。

 同様に、自分からキングダム船団と44社ビッグブロスから睨まれるような役目を負いたい者が出るはずもない、と考えていた。



「僭越ながら……偉大なる兄弟の方々ビッグブラザーに申し上げたい事がございます」



 ここで部下が名乗りを上げるとは、ユルド社会長としては少々予想外だったが。


 大きな丸テーブルに着く44社の代表は、少数の部下を連れてきており壁際に直立不動で待機させている。

 その役割は、護衛や後継者としての見学、または上司と同じ情報を共有した上での見識を問う為。

 そして、基本的に44者の代表以外に発言権は認められていなかった。口を開く事ができるのは、いずれかの代表にそれを求められた時だけだ。

 故に、ユルド社のフリートマネージャー、ギルダン=ウェルスはその伝統と慣行を破ったという事になる。


 当然、場違いな上に身の程を知らない行為により、室内の空気に緊張が走った。

 左右の壁際にいる幹部社員たちは微動だにせず、44人の代表は白けた目を向ける者や、上司のシラーに意味ありげな視線を送る者と、様々だ。

 誰も、一社の役員の立場にすらないギルダンに、発言など認めはしない。

 それどころか、この場の秩序を乱す者として、シラー共々ユルド社の粗相として43社から糾弾されかねない事態だった。


 しかし、ギルダンは考えていた。


「他に意見が出ないようなら……聞こう」


 44人もいるのだから、会議に行き詰まればひとりくらいは話を聞こうとするのではないかと。


「ヴィシー大老……!?」


 果たして、ギルダンは賭けに勝ち、最も大物を釣り上げていた。

 驚き、真意を問いたい他の代表もいたが、カンパニーの長老に意見を言える者も少ない。

 それこそ、ギルダンの上司を含めて数名ではないだろうか。

 そんなギルダンも、冷静なツラの裏では背筋が緊張で引き攣っていた。





【ヒストリカル・アーカイヴ】


・ウィズダムメダル

 人類の英知と知識に関して大きな功績を残した者に授与される賞と、象徴となるメダル。

 21世紀で言うノーベル賞のようなモノだが、全銀河に轟く栄誉であり、また研究者以外にも与えられる。


・ブラックホール兵器

 人工的にブラックホールを発生させる兵器。主に爆弾の形を取る。

 規模によっては星系ひとつを崩壊させるほどの破壊力を持つが、重力圏崩壊による周辺星系の影響も計り知れない為に、銀河航宙法条約の他あらゆる法で製造、使用、所持を禁止される兵器である。


・アノマリー

 異常存在。あらゆる解析や調査の末に正体不明とされる物体、または現象の事を言う。

 好事家の収集物から大企業や国家の研究対象まで、その範囲は幅広い。


・ユニコントロール主義

 シルバロウ・エスペラント惑星国家連邦の統合統制下において、人類全体の平和と自由が実現されるという主張。

 実質的には連邦政府が支配域を拡大する名目に過ぎない。




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