27G.メイデンシップ ハンティング



 ワープ航行のテストを行う為に、トムナス恒星系グループ外縁にある『ビルクルス小天体群』まで飛んで来た貨物船パンナコッタ。

 ところが到着した途端、何故かその場にいた恒星系艦隊所属の戦闘艦22隻に総攻撃を喰らい、危うく沈められかけるという。


 攻撃を避ける為に小惑星帯の奥へ逃げたものの、買ったばかりの船はボロボロになっていた。

 急場にあっては冷静沈着な判断を見せていた船長のマリーン姉さんも、今は船の有様と抱えた借金の額に涙している。

 そして、センサー情報の統合されたレーダーを見て、しかめっ面をしているオペ娘のフィス。

 突然攻撃を仕掛けて来たトムナス恒星系軍の艦隊は、小惑星帯の外からしつこく捜索を続けていた。

 これに対し、パンナコッタの貨物船は小惑星に紛れて潜伏し、静止状態を保つ。


「クソが……。ダミーデータ流しているから暫くは見つからないだろうけど、こっからどうするマリーン姉さん?」

「船はー…………。船のステータスはどうなってるの?」


 恐る恐るオペ娘に確認を取る船長。先刻までのクールさの欠片も無い。

 買ったばかりの船がこれでは仕方ないだろうなぁ、とフィスも同情しながら、死刑宣告をしなければならない我が身を軽く呪った。


「えーと、右第2エンジンが完全にオフライン。多分大破してる。その辺の右舷側船殻もやられてる、結構大きく。周辺経路もダメ。シールドジェネレーターにも異常出てる。こっちはダナかエイミーに診てもらわんと分からん」

「そう…………。ダナちゃーん」


 ついさっき購入した船が、既に廃棄処分ものの損傷を負っているという惨状。

 とはいえ、どれだけ嘆いても危機的状況に変わりはなく、状況が好転する事もないのだ。

 ならば船長としては最善を尽くすだけで、マリーンもどうにか自分を再起動させた。精神のダメージはそのままだが。


「ダナちゃんとエイミーちゃんは船の応急修理をお願い。ユイリちゃんも手伝ってあげてちょうだい。誰も怪我してないわね? フィスちゃんはあちらの艦隊を監視して。スノーちゃんはいつでも船を出せるように準備しておいて」


 やや項垂れてはいるが、手早く各員に指示を出すマリーン船長。

 だが、問題はそれからどうするかだ。


 船は未改造で性能的を引き出し切っているとは言えず、ダメージも負い破損している状態。

 追って来ている艦隊は、足の速さから見て高速部隊らしい。加速力で負けているし、火力は言わずもがな。向こうは生粋の戦闘艦である。

 新しいパンナコッタも戦闘艇のライトクルーザーだが、比べるのもおこがましかった。


 どうしてパンナコッタを追って来るのか、というのはマリーン船長にも分からない。何かしら拙い物を見られた、と勘繰ったのだろうとは思うが。

 しかしどんな背景があろうと、仮にも正規軍が警告無しで沈めに来ているのだ。交渉の余地無し。

 単なるワープのテストに来たはずなのに、どうしてこんな事に。

 運が悪過ぎるとしか言えないが、そのワープも小惑星帯という高い空間密度のド真ん中では使えなかった。

 正規軍が関わっている以上、助けを呼ぶのも期待できない。通信波など出した日には一瞬で見つかるだろうし、救助要請自体が軍の上にいる政府などに握り潰される可能性もある。


 船を囮にクルーだけ救難艇で脱出させる、というのが今のところベターな作戦だが、これは最後の手段にしたい。

 最寄りのコロニータウンまで10億キロ以上離れている宇宙空間で救助を待つなど危険極まりないし、救助要請を軍に掴まれたら、船を沈められるのと同じ末路になりかねなかった。


 うーん……、と難しい顔で唸る船長のお姉さん。

 戦う事も逃げる事も出来ず、進退窮まった感がある。

 その姿を暫し見ていた吊り目のオペ娘だが、やや悩んだ末に自分の考えを口にする事とした。


                 ◇


 購入したライトクルーザーをテストするにあたり、場所を選定したのは通信オペレーターのフィスだった。

 要は、スクワッシュ・ドライブやレーザー等の武装、防御シールド、導波干渉儀をはじめとするセンサー系、推進系の機能など、船のシステムを実地テストするのが目的であり、周辺にコロニータウンや有人施設が無い場所なら、どこでも良かったと言える。

 よって、適当な障害物が大量に有り誰にも迷惑がかからない星系の果ての小惑星帯を選んだのだが、結果としてある物体・・・・の近くとなったのは、これは偶然か、それともあのデータ・・・・・を参照した為無意識にそうしたのか。


 当のフィスにも、よく分からない。


「それじゃぁ……あの船・・・と同種の物が、この付近に?」

「さっきチャートの座標を確認したけど、ここから30万キロちょっとの所にある…………。だいたい30分くらいかな」


 船長のお姉さん、吊り目のオペ娘、エンジニアのメガネ少女、小柄な操舵手、メカニックの姐御、そして赤毛のエイムオペレーター。

 船の船橋ブリッジには、双子の少女と船医以外全員が集まっていた。3人は念の為に救難艇へ避難している。

 皆が見ているのは、オペレーターシートのディスプレイに表示された星図チャートの画像だ。

 特に拡大されているのは、現在地であるトムナス恒星系外縁部。

 その星図チャートでは、ある一点の座標がマークされていた。


 座標データは、村瀬唯理むらせゆいりが謎の巨大戦艦『ファルシオン』から脱出間際に、船のメインフレームから引っこ抜いて来た物だ。

 そして、座標が示すのは『ファルシオン』と同類の船の在り処と思われる。

 つまり、この付近30万キロメートルに、15万体ものメナスを殲滅する程の船と、同じ物が眠っている可能性があった。


「どうしてそんな事を黙っていた」


 と怪訝な顔で問うのは、グラマーで体格の良いメカニックの姐御、ダナだった。

 別に怒っているという事もないが、危険な情報なら把握しておきたいと思うのも当然だ。


「正直知りたくもなかったし、ヤバい情報だし、もちっと調べてからマリーン姉さんの方に上げようと思ったんだよ。とりあえず新しい船が落ち付くまで」

「でも30万キロって……フィスはその船を調べるつもりだったんじゃないの?」

「んなワケねーだろ、偶然だ偶然」


 ダナに言った事は本心だが、メカニックのエイミーへの返答は正直微妙だった。

 さーてどこでテストするかなー、と星図チャートをさらっていた時に、もしかしたらフィスも気が付かないうちに、くだんのデータを参照していたかもしれない。

 しかし、面倒な事になりそうなので、あえてキッパリ「偶然だ」と強調した。

 宇宙空間のスケールで、30万キロという距離は偶然というには少々近いが。


「確かにフィスちゃんの言う通りね……。あの船、と同じ物かは分からないけど、少なくともあの『ファルシオン』っていう船は、わたし達の手には余る物よ」

「まさか艦隊の連中、その船を探しているのか……?」

「いいえ、それはないと思うわ。艦隊の中にそれらしい船は確認出来なかったし、捜索中だというならわたし達を追い払えば済むだけの話よ。

 アレは何か見られて拙いモノを、わたし達が見たと思っているのね」


 ファルシオンクラスと呼ばれた船は、既存の戦闘艦を遥かに上回る性能を持っていた。

 それこそ、軍や政府なら手段を選ばず、躍起になって手に入れようとするだろう。

 宇宙放浪民『ノマド』であるパンナコッタ勢には、扱いかねる代物だ。


 だが、トムナス恒星系政府や艦隊が、船の存在を知っているとは思えない。

 また、知っていたとしても、たまたま近くを通りかかったノマドの船が、同じ船を知っていると考える道理が無い。

 故に、艦隊はもっと単純に分かり易く、見られて拙い場面を目撃された、と思い込んでいるのだろうと考えられる。

 恐らく、「何も見てない」と言っても、話を聞きやしないだろうが。


「この船じゃ逃げられませんか?」


 黙って聞いていた赤毛娘の唯理だが、ここで最も単純かつ根本的な疑問を口にする。

 意外そうな顔をするのは、オペ娘のフィスだ。

 唯理の為に座標の船を調べるのも悪くないか、などと思っていたのに、この科白セリフである。若干腹が立つ。


「この船はほぼノーマルだから19Gくらいの加速が精いっぱいなのよね。加速力は向こうの方が上だし、遮蔽物の無い低密度空間に出たらレーザーで集中砲火されると思うし。修理してもシールドは1分持たないかも」


 そんな同い年のオペ娘の心境など知らず、エンジニアとしての見解を述べるエイミー。

 こうなってしまうと、手を入れるべき所を放置していたのが悔やまれるようだった。


「わたしは宇宙船の事は素人だけど……確かスペック上は20G以上出せるんでしょう? そこまでとは言わないけど――――――――」

「確かにブースター自体は5~60Gを出すだけの性能があるが、中の人間と船体が持たない。

 多分、重力制御の許す範囲プラス10Gくらいから船体にダメージが出始め、15Gで致命的な破壊が起こるだろうな。当然、乗組員はそこまで耐えられない」


 冷静に言うダナの姐御だが、その顔は何か恐ろしいモノを見るようだった。この赤毛娘ならやりかねないと思っている。


 原始的な反動推進ブースターエンジンは、しかし今や爆発威力をほぼそのまま推進力へと転換出来るほど老成するに至った。

 その理論値の最大は、1秒毎に時速24,840キロメートル――――――6,900m/s2――――――もの加速を可能とする。

 加速度にして、700Gを超えていた。

 これは、約12時間で光速――――――約30万キロメートル/秒――――――に到達する計算だ。

 だが、そんな加速度に耐えられる人間など居るはずもない。スピード狂の赤毛娘だって、流石に限度というモノがある。

 現代の宇宙船は、反動推進能力のほんの一部を利用し、重力制御で船体と乗組員クルーを守るというシステムを取っていた。


「制御範囲を30G超える……ってなると、重力制御はもう期待出来ねーな。それでもワープポイントまでは逃げ切れねーぞ。多分その前に沈む」

「エイムは――――――――」

「ダメよ……! ユイリのエイムは機動力が半分以下に落ちているんだから。それに艦隊と戦うなんて無茶だよ」


 遠い目をするフィスが、特に悲壮感無く予測だけを口にする。

 ならばエイムで応戦する、という唯理の意見は、口に出す前にエイミーによって却下された。

 こうなると、21世紀から来た少女に出来る事などありやしない。


「…………フィスの言う事も分かる。あの船は普通じゃないが、選択肢として考えざるを得ない状況という事だろう。

 移動するならアステロイド帯が荒れている今しかないんじゃないか?」


 ただでさえ船の性能で負けている上に、破損までしている状況だ。

 ならば、メカニックの姐御が言うように、危険な船であっても利用するのを視野に入れるべきかもしれなかった。


 以上のような意見が出尽くし、考え込む船長以下船橋ブリッジに集まる一同。


「……ここにいるワケにもいかないし、見に行ってみましょうか。乗り換えないでも、何かに利用できるかもしれないし」


 最終的にはマリーン船長の一言で、パンナコッタは船のある座標へ向かう事になった。

 傷付いた武装貨物船は、動き回り、衝突を繰り返す岩塊に紛れてる形で加速を開始。

 唯理がヒト型機動兵器で適当な小惑星を引っ張り込み、それに隠れて小惑星帯を移動する。


               ◇


 通常速度なら30分程度の所を、パンナコッタは2時間以上をかけ目的地点へ辿り着いた。

 上手く小惑星の玉突きに紛れ込めたようで、レーダー上でも星系艦隊が感づいた様子は無い。

 ところがパンナコッタ側も、肝心な船自体、それらしい物が見つからないという。


「座標はあってるのかしら?」

「チャート上の基準点5,300万ポイントで一致。ここだよマリーン姉さん」

「ねぇ…………あそこ、アステロイドがヘンに固まってない?」


 オペ娘が現在位置を確認するが、最新の星図チャートと座標データから見て、間違いはなさそうだった。

 無数に存在する天体の位置から導き出される三次元中の一点は、小惑星帯のど真ん中を指示している。

 そんなところで、船外カメラから周囲を見ていたお下げメガネのエンジニアが妙な物に気付く。


 小惑星アステロイドは大きければ直径1,000キロメートル以上にもなり、小さい物だと破片デブリと言って良い程度だ。

 組成も、氷、鉄、炭素、珪素と、様々で、恒星や惑星はこれらを材料に構成されていると言えた。

 トムナス恒星系外縁、ビルクルス小天体群は、主に珪素から成る大小様々な岩塊が無数に滞留している。


 その中で、不自然に小惑星が集中している一角があった。


 小惑星が自らの引力で他の小惑星を集めて惑星へと成長している最中、というには、少しおかしい。

 広範囲に影響を及ぼす引力を持つほどの質量ではないし、形も自然発生的な球形ではなく歪な縦長をしていた。


 オペレーターのフィスは、不自然な小惑星塊を船のセンサーで走査スキャン

 間もなく、中心部に組成の異なる物体が隠れているのを探知する。


「アタリだエイミー。小惑星の中に200メートルクラスの船…………らしき物。クルーザーか、ギリでライトクルーザークラスかな」

「普通の、大きさね…………」


 以前に見た超巨大戦艦『ファルシオン』が全長3キロもあった事を思えば、200メートルというのは個人所有としてはやや大きいと言った程度。

 船長は拍子抜けしたような声を出していたが、同じリスト内にあったというだけで、全てがとんでもない船というワケでもないのかも知れない、とオペ娘は思った。


 リスト内には全長5キロやら10キロという、目と常識を疑う船種も存在していたが。


「フィスちゃん、向こうからセンサー走査は受けてる?」

「ん? えーと…………いや、動力が動いている反応無いな。センサー

が動いている感じもない」

「近づいたら動き出すかも知れないから、目を離さないでちょうだいね。スノーちゃん、小惑星に近付けて。ユイリちゃん、エイムで出てもらえる?」

「了……解」

「格納庫で準備します」


 船長の指示で、小さな操舵主の少女は貨物船を小惑星塊へ接近させる。見た目に似合わず、素早く滑らかな操船だ。

 そして、赤毛の少女は船の停止とほぼ同時に、格納庫からヒト型機動兵器を発進させる。ブースターが破損し推力は半分以下に落ちていたが、船から小惑星塊への距離はゼロに等しく問題ない。


 小惑星塊に取り付くと、全体を走査スキャンしたオペレーターの指示に従い、岩の隙間をエイムの腕部マニピュレーターで抉じ開け内部へ進んだ。

 機体と同調する一方、手動インターフェイスであるIKアームを操る唯理は、岩の塊を脇に押し退ける。武骨な装甲を纏う機体の動きは、人間そのものだった。


 10メートル分も岩塊を除くと、隠された船の外殻らしき面が見えてきた。

 ヒト型機動兵器の頭部にあるライトが、前方の物体を照らし出す。


『ユイリ、右方向5メートルくらいの所にハッチないか?』

「ちょっと待って…………あ、これか」


 オペレーターが走査した通り、エイムの頭を右に向けると、船の表面にハッチらしき扉が確認できた。

 しかし、縦2メートル横1メートルと、サイズは人間用。

 全長15メートルのヒト型機動兵器では入れないだろう。


『エイムでギリギリまでコクピットに寄せて、直接インフォギアでアクセスしろ。ロックはこっちで開ける』

『ユイリ! コクピット開ける前にEVAスーツの気密確認するのよ!』

『減圧も忘れるな。空気ごと真空中に吹き飛ばされるぞ』

「分かってます分かってます気を付けるから…………」


 エンジニアのメガネ少女やメカニックの姐御に心配されながら、赤毛の少女はヘルムのバイザーを下ろし、スーツ内が気密状態にあるのを確認。

 コクピットから空気を抜きながら、機体を扉の前に寄せてエイム側のハッチを開放する。

 真空中に出ると、EVAスーツの背中にあるブースターを一瞬だけ吹かして前に進んだ。

 ついこの前まで――――――主観で――――――地球の高校生だった唯理だが、不思議と宇宙での活動も問題ない。

 21世紀ではいったいどんな人間だったのやら、と。

 何かを思い出しそうになる唯理だが、EVAスーツ内の酸素も決して潤沢ではなく、今は作業に集中する事とした。


 情報端末インフォギアからドアの端末ターミナルにアクセスすると、ロックが外され分厚いドアがせり上がる。

 そのドアが横にスライドすると、開かれた入り口から船内の気圧調整室エアロックに入る事が出来た。


『ユイリ……大丈夫?』

『セキュリティーが動いている反応はねーな…………。気圧ゼロ、温度は摂氏マイナス220度、他に動体反応もねーけど何か潜伏していないとも限らない。気をつけろよ』

『……やはりあの船に似ているな』


 唯理のEVAスーツを通して、船内の映像や情報もパンナコッタに届いている。

 内部は暗く静謐その物だったが、皆一様に心配そうだ。

 気圧調整室エアロックや通路といった船内のレイアウトは、『ファルシオン』とほぼ同じだった。装飾を一切省いたシンプルで打ちっ放しの宇宙船といった様子だが、一方で電装系や配管といった構造的な部分は全て壁の向こうに収まっている。

 洗練された作りだ。


 船の船橋ブリッジは先端にあり、唯理は10分程度で辿り着いた。

 例によって船橋ブリッジのセキュリティーは、やり手のウェイブネット・レイダーであるフィスにもワケが分からない代物。

 それを赤毛娘はほぼフリーパスで通るものだから、尚更意味不明さの度合いを増していた。唯理に恨み事を言われたって困る。


 そして、厳重な二重の強制閉鎖用ブラストドアが開くと、以前と同じように自動で船橋ブリッジのシステムが起ち上がった。

 ファルシオンが起動した際と同じ、ディスプレイには国連平和維持派遣防衛軍UN-PKDFのロゴが。

 ただ、管制人工知能AIによる文言が異なっている。


『マスター・コマンダーが艦橋ブリッジに入ります。凍結モードを解除し通常モードへ復帰しますか?』

『あれ? 認証は終わってる?』

『あなたのリップルパターンはダーククラウドネットワークに登録済です。稼働可能な全艦・・のネザーインターフェイスへ再設定を完了しています。本艦のステータスを参照しますか?』


 『リップルパターン』や『ダーククラウドネットワーク』というのが何を意味するのか、唯理は勿論フィスやマリーン船長らにも分からなかった。

 だが、とにかく既に初期起動は終わっているらしい。

 独自のネットワークで先の『ファルシオン』とも繋がっている為だろう、とオペレーターのフィスは考えていたが、船のAIが言う『全艦』というのが何を指すのかは、怖い考えに至りそうなので気にしない事にした。


 唯理は管制AIに船のシステム診断を指示。

 前回のファルシオンと違い、今回の『バーゼラルド』という種類の船は大方の機能が復元済みだという。

 復元を開始したのは、恐らくファルシオンの再起動と同時期。

 ならば、オンライン上の全ての・・・船が同様の状態である可能性は高いと思われた。


 一隻使えれば十分であるが。

 今後もそうであると思いたい。


『マリーン船長、問題なさそうです』

『分かったわ。みんな、念の為に「バーゼラルド」へ移ってちょうだい。フィスちゃん、エイミーちゃんは船が使えるようになるか試してみて』


 システム診断の結果を受け、マリーン船長はクルー全員のバーゼラルドへの移乗を指示。

 貨物船からガイドワイヤーが伸ばされると、EVAスーツを着た皆が20メートルほどの宇宙空間を渡って来る。

 

 トムナス恒星系艦隊の高機動巡視部隊が、パンナコッタとバーゼラルドに気付いたのがその時だ。


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