アポロニア

「アツシ! よくも平和で美しい街だったオーミモリヤマ市をメチャクチャにしてくれたわね」


「そうよ! 街は戦場になってたくさんの死傷者も出たわ! どう責任取るつもりなの」


 僕は、あり得ないほど大声で叫ぶ二人の声に耳を塞いだ。


「しかも私達が心から敬愛するデュアン総督を失脚させたあげく、追放したわね! 絶対に許せない」


「男女平等なんて幻想よ、幻想。男は女に支配されてこそ本当の幸せを得る事ができるのよ」


 聞きたくもないような言葉が、心に重くのしかかってくる。


「全ての市民が、いやケプラー22b全ての人間が奴隷解放に賛成していると思ったら大間違いよ!」


「アツシ! 革命に正義なんてないわ。私達は秩序を大切にする保守派の平和主義者なの。自分が歴史的なヒーローになれると考えているのなら、思い上がりも甚だしいわ!」


 僕はこう言うしかなかった『もう止めてくれ』と。胸が張り裂けそうになる。

 カクさんはメンタル的な攻撃を仕掛けてくるA級奴隷達に舌打ちした。


「同じ男のくせに何なんだ、あいつらは! オカダ君……耐えろ、迷うな。たとえ世界中が敵でも俺は最後まで側にいてやるぜ」


「ああ……」


「査察団だけじゃない、君が好きなシュレムだってそうさ。……ええい! 俺が戦うきっかけを作ってやる」


「どこに行くんだ?」


 カクさんは遮蔽物から飛び出して、A級奴隷に向かってジグザグに突進した。


「やめろ! カクさん、無茶するんじゃない!」


 無数の弾丸がカクさんを襲う。だがカクさんは果敢にも弾道を計算して全てかわすと、きわどい服装のA級奴隷の一人に襲いかかった。女とは違う低い悲鳴と共に銃声が交錯する。


「マコト! ヒロミ! もう奴隷解放革命は実現間近になっている。無駄な争いは止めてくれ!」


 僕が頭を抱えていると、一際激しい銃声が周囲から湧き起こった。カクさんは無事なのか?




「ずいぶんと、お困りのようね。オカダ査察官」


 男っぽいが、女性特有の艶のある声が背後から聞こえてきたのだ。

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