ジョ-ジア

 振り返ると、そこにはライオンのようなヘアスタイルのワイルドな女性が、腕組みをして柱に寄りかかっていた。装飾が散りばめられた高級スーツの裾の汚れを気にしている。


「あんたは確か……湖賊のリーダー、ビルショウスキー! 何でここにいるんだ?」


「何でって、フフ……久々なのに、ずいぶんとつれないわね! オカダ査察官、いつかの借りを返しに来たのよ」


 周囲を改めて確認すると見覚えのある面々が揃っていた。

 

 元ザイデルD-15部隊員だというヒゲの兵隊くずれは唯一の兵士らしい人物。タバコが欠かせない。イシハラという名を初めて名乗った。

 鉄道敷設員用KRマークのヘルメットを被ったずんぐりむっくりの作業服男。ゲスな野郎だったな。名前はワースというらしい。

 くねくねと歩く筋肉男は、説明しづらいが漁師らしい格好をしていた。ベレンスという名を訊いてもいないのに教えてくれた。

 蛇顔の異常に細長い高身長の男は、相変わらず気味が悪い。迷彩のカーゴパンツにシャツ、ミュージシャン風の髪型をしていた。マドックスと呼ばれている。


「ヒヒヒ、本当に殺したいのはオカダ査察官、アンタなんだけどな。だがそれ以上に気に食わないのは、あいつらA級奴隷なのさ」


 マドックスが歪んだ笑顔で舌を出した。する事なす事いちいち薄気味悪い。


「そうよ、あいつらも男が好きみたいだけど、見た目を女らしくするのは、あざといわ。女になりたくて、なりたくてしょうがないみたいで」


 ベレンス……今、あいつらって言わなかったか?


「姐さん、Aクラスに向かって何か言ってやって下さいよ」


 ワースが拡声器をビルショウスキーに手渡した。そんな事をすると狙い撃ちにされるぞ。


「えー、我々は湖賊ビルショウスキー一家である!」


 マコトとヒロミは湖賊の急な登場に戸惑っているようだ。何事かと発砲を止めて様子を伺っている。ビルショウスキーは遠慮もなく大声で威嚇した。


「私は! これでも女だけど、奴隷解放には賛成だね。本来、人はもっと自由であるべきだ。A級奴隷の皆様は、何で反対なんでしょうか? そうだろうねェ、デュアン総督の下で女性に次ぐ存在として手厚く保護優遇されてきたからだろ。利権を得るためとはいえ、そこまで見苦しく、しがみ付く気なのかい?」


「だ、黙りなさいよ! 湖賊の分際で、何をえらそうに!」


 マコトとヒロミも口で負けてなるものか、と言い争いが勃発した。

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