スヴェア
それからシュレムとスケさんはペアになって建物の陰から外の様子を伺う。付き添う隻眼のタッキーは鼻水を垂らして残念なイケメンオオカミになっている。
二人は例のエレベーターシャフトからキラーTファージの新手が、ちらほらと登ってくるのを発見した。
「シュレム、あのへんてこな奴がまた来るよ!」
「よし、見てな。私の実力を見せたげるわ!」
シュレムは学生時代ソフトボール部の投手だったのだ。腕を回して肩を慣らすと、絶妙なコントロールでキラーTファージの集団の中央に爆縮手榴弾をポトリと落とした。次の瞬間、キラーTファージは全て爆縮に吸い込まれ粉々に砕け散った。
「さッすが! まだ実力は十分のようね」
シュレムはスケさんからの甘美な称賛の声が届いたのか、得意げに笑顔をほころばせる。
「よし、二投目もいくよ!」
今度はエレベーターシャフトを狙う。もはやシュレムの頭の中は、すっかり現役時代の感覚だ。白衣から下着や生足が露出するのも気にしない。華麗なるフォームの下投げで地下に通ずる穴に放り込む。
ワンバウンドし、転がった爆縮手榴弾は見事、エレベーターシャフト内にカラカラという音を残して落下していった。しばらくして地下で鈍い音が反響し、笛のような吸気音が響いてくると、思わず彼女達は耳を塞いだ。煙を吐くエレベーターは完全に沈黙したようだ。
「シュレム、私にも投げさせてよ!」
シュレムとスケさんは調子が出てきたのか、ありったけの手榴弾を投げ始めた。
せまりくる足軽やザイデルD-15部隊残党の頭上で次々と爆縮させる。敵の男女が空中でラグビーのスクラムのようにお互いの頭を前後左右にぶつけ合い、鼻血を出して倒れる。
魔法を思わせる不可解な武器を駆使する謎の看護師とネコミミの登場に、敵は恐れをなして徐々に退却を始めた。
「お二人共、お見事ですが、ほどほどに……」
護衛役のタッキーが心配そうにつぶやいた。
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