グドルーン

 白狼のタッキーが長い毛皮をひるがえし、戦況を報告しに来た。


「キラーTファージは無差別攻撃なのですが、その影響かデュアン側の勢力が、やや持ち直しつつあります」


「やってくれるな、それにしても総督は無慈悲だ!」


「オカダさん、これを使って下さい」

 

 キャプテンのブラックジャガー“翼”が、爆縮手榴弾を背中の箱に詰め込んで大量に準備してきた。


「さすがキャプテン、この武器をゴールドマン教授達にも届けてくれ」


「了解!」

 

 獣の眼力で一瞬の内に革命軍の中心の位置を見定めると、黒い突風と見紛う早さで敵を蹴散らしていった。


「シュレム、スケさん、こいつを使ってみろ」

 

 僕はアボカドにそっくりな爆縮手榴弾の安全ピンを引っこ抜くとレバーを飛ばして着火させた。

 おもむろに都合よく現れたアマゾネスとザイデルD-15部隊の男兵士に向かって投げつける。

 敵の男女は投げつけられた物を盾で弾き飛ばして気にも留めなかったが、数秒後に足元で爆縮が起こった。何だか聞いたこともないような轟音が起こる。

 周囲にいた四・五人の敵が、空間に吸い込まれるように引きずられ、団子状に頭や体をぶつけ合い気絶した。特にヘルメットなどの防具・武器などの重い物を持っている奴ほど、ぶつかった時の衝撃は慣性で激しく、骨折してしまうほどだ。


「くれぐれも味方に向かって投げるなよ……戦う看護師さん」


「分かったわ。オカダ君」

 

 二人に危険なアボカドをプレゼントする。


「タッキー、シュレムとスケさんの護衛を頼む」


「承知いたしました! えっ? ……スケさん?」


 タッキーはスタリオン高機動車から降りたスケさんにまとわり付き、素肌の臭いを嗅ぎまくる。


「やん! やめてよ、くすぐったいわ!」

 

 スケさんは胸の谷間に隠し持っていた小さな香水をタッキーにひと吹きした。


「ごああああ!」


 タッキーは自慢の鼻を押さえて地面に擦り付けたのだ。

 

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