ゴベルタ
悲観的な教授に喝を入れたのは、愛弟子とも言える婦警のチトマスだった。
「ゴールドマン教授、しっかりして下さい。我々が腰を据えて、どっしり構えていないとB級奴隷の男達が総崩れになりますよ! ほら、あの支配の象徴だった総督府が崩れました。やっとここまで来たんじゃないですか! 覚悟を決めて下さい」
チトマスは精悍な顔で教授を見据えた。するとイイ歳こいた爺さんが、情けない声を出して婦警さんに抱き付いたのだ。しかも師匠の手前かチトマスの方ではなく、隣で様子を見ていたアディーの大きな胸の中に顔を埋めた。
「こらこら! ドサクサに紛れて何やってんですか、教授殿!」
ランドルトが羨ましそうにゴールドマン教授の服を引っ張った。
「俺も死ぬ時は、その胸の中でと決めてるんですよ!」
心優しいアディーは苦笑いしている。これにはシュレムも呆れてそっぽを向いたままだ。
スケさんだけは、戦場の敵の尋常でない動きを読んだのか緊張して呟く。
「オカダ君、確かにブエルムとやらは普通じゃないわ。B級奴隷の革命軍を巧みに蹴散らして、一直線にここへ向かってきているように思えるのよ」
「すごいな。この大軍勢の中から俺や教授を首謀者として探し出し、抹殺するつもりなのか?」
「オカダ君は命を狙われるターゲットと化している事を自覚して」
「そういう事だね!」
両腕に装着したチェーンを高速回転させ、縦・横方向に広い攻撃の有効範囲を誇るブエルム。友軍の革命戦士が勇敢にも飛びかかる。
「死ねや! この化物が!」
日本刀を頭上に構えながら、そのままブエルムに突進。するとマスターキラーは天性の攻撃センスを発揮した。左腕のチェーンで刀身を弾き飛ばすやいなや、回転させる右腕のチェーンで簡単に絡め取る。剣を難なく入手したが、両手剣の日本刀がブエルムの巨体の前では片手剣にしか見えない。
「鬼に金棒、俺に武器」
左腕のチェーンを敵の首に巻き付けたブエルムは、手にした刀で敵を斜めに斬り裂いた。
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