ロクサネ
僕はスケさんに頼んで武器として同田貫と称する日本刀を渡してもらった。質素な拵えの黒鞘から抜くと鈍い光を放つ刀身が現れた。飾りっ気は無いけれど、よく手入れされた本物の武器だ。
「うかうかしてられないぞ。もうすぐ奴が嗅ぎつけて、ここまでやってくる可能性がある」
シュレムにアディーとチトマスか。いざとなれば守りきれる保証はどこにもない。この場所からゴールドマン教授を引き連れて撤退するか、それとも打って出るか。婦警コンビは大丈夫だろう。だが、シュレムは……彼女を危険な目に会わせたくはなかった。
看護師さんの姿をチラリと見ると、戦場の負傷者の数に頭を抱えているようだ。今は何もできない状況である。
「ランドルト、教授と女性陣の護衛を頼んだぞ」
「え? オカダ査察官。まさか、本気でブエルムと戦うつもりなのか? アンタ地球人だから奴の恐ろしさを全く理解していないようだが、あっと言う間に瞬殺だ。確実に殺されちまうぜ」
「S級のモンスターと戦って何分持ち堪えたか、新記録を作ってみせるさ」
「ばっか野郎! リーダーが死んだら革命はどうなっちまうんだ」
掩体壕代わりに使っていた鉄道関連施設からスケさんとペアになって飛び出した。メインの武器はいつものM4カービンだ。なるべく軽装の方がいい。
「オカダ君、ランドルトの言う通り、むやみに戦って勝てる相手じゃないわ。こちらの長所や有利な状況を引き出して最大限に活用しないと」
「ああ、奴の狙いはどっちかな? 俺か、それともゴールドマン教授か」
両手のチェーンを巧みに振り回しながら、周囲の敵を次々となぎ倒す大男がいる。筋骨隆々であるが、意外や顔つきは整っており美しいとも思えた。それが逆に不気味さを強調している。戦いに酔いしれる口元は微笑を含ませているのだ。
「地球人はどこだ! 逃げ回ってないで出てこい! オカダ査察官! トップとして恥ずかしくないのか。俺と戦ってくれ!」
スケさんは困ったような顔を見せてネコミミを向けた。
「オカダ君、一旦引いて態勢を整えてから出直すのも一つの手よ。君子危うきに近寄らずってね」
「ご指名されたんだ。戦ってから考えてみるよ」
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