チュ-レ
「ちょっと、さっきからどこ見てんのよ!」
シュレム様が椅子を引いてローキックを浴びせてきた。だがパンチラを気にしている分、腰の入っていないヘナチョコキックだ。
「朝食の用意だけで、ここまでバタつくなんて先が思いやられるわね」
「オカダ君、私の制服を洗濯しておいてよ。紅茶の染みが残らないようにね」
「皆、オカダさんは精一杯やっていると思う。査察官から奴隷になったばかりなのに、最初から上手にできる訳がないよ」
それぞれ好きな事を言ってやがる。それに僕はB級奴隷に転職したなんて、これっぽっちも思っていないぞ。もう様付けなんか、やめだ。
「今から私は出勤するし、マリオットは自転車で中学校まで通学、ブリュッケちゃんは集団登校なの。早く食べて食器はオカダ君に渡して」
「さあさあ残さずに食べてね。顔を洗ったら歯磨きも忘れないで。ブリュッケちゃんは自分で髪をとかす事ができるのかな?」
「うん、大丈夫だよオカダさん。後、言うとしたら『忘れ物に気をつけて』ってところかな」
ブリュッケちゃんは着替えに自分の部屋に戻った。大人びているのでランドセルをしょっている姿を想像できないな。
トイレに入ったマリオットちゃんからドア越しに大声で呼ばれる。ピタッと変質者のようにドアに聞き耳を立てると、水を流す音と共に声が聞こえた。
「私の自転車、チェーンが外れやすくなっているから、帰ってきたら見てくれないかな~?」
シュレムは長いシャツの裾を引っ張り、さりげなくムッチリとした美尻を隠しながら洗面所に向かった。
「天気がいいから、たまっている洗濯物を何とかして欲しいの。あと夕飯の買い物に行ってくれると助かるわ。お金なら生活費が引き出しの中に入っているから、無駄遣いしないようにメモ書きの通りに買ってきてもらえる?」
「ああ、お安い御用さ。留守は任せておきたまえ。掃除もしておくぜ」
「料理は帰ってきたマリオットが担当してくれるはずだから、後はよろしくね」
行ってきますの声と共に3人が、それぞれ通勤と通学に家を後にした。嵐のような時間が過ぎ去ったのだ。
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