パウリーナ

 シュレム様はナイフとフォークでシガラキ焼きを食べた。僕より早起きして身支度していたから、髪型を始めメイク以外はばっちりだ。スッピンとはいっても下地はできているので、誰に見られても恥ずかしくないような状態になっている。さすがだ、自分のだらしない姿を見られたくないのかな?


「このシガラキ焼きだけど、魚のパイ皮包みみたいで面白いわ。でも魚の形にする必然性が全く感じられないんだけど。スイーツなのに何で魚の形なのよ。すり身でも混ぜてあるの?」


「いやいや、材料に魚の要素はゼロなんだよ。しかし俺はこのお菓子を評価している。世界中見渡しても魚のデザインをした甘い物なんてないはずだ。このオリジナリティに拍手」


 まごつくブリュッケ様にも食べ方を教える。


「手で持って食べてもいいって事? ……熱い!」


 あろうことかブリュッケ様はシガラキ焼きをマリオット様の紅茶の中に落としてしまった。


「や~ん! 着替えたばかりの制服のシャツに染みが! 布巾! ナフキン!」


 マリオット様の悲痛な叫びに僕は思わず口走った。


「あらあら、まあまあ! 魚が紅茶の海を泳いでるわよ」


「……うまい事言ったつもりで、ほくそ笑んでいるけど、あんまり面白くないよキミ」


 シュレム様に鋭く口撃された。でもマゾッ気がある僕には痛くも痒くもないのだった。むしろご褒美と言ってもよい。


「ちなみにシガラキ焼きのバリエーションとして丸い太鼓の形をした今川義元という焼菓子も存在するらしい」


「オカダ君、蘊蓄はいいからテーブルの上を拭いたり、私の制服を何とかしてよ」


 マリオット様が立ち上がり、テーブルの下まで滴り落ちる紅茶の流れを手で阻止している。

 僕は布巾を持ってテーブルの下に潜り込んだが……ふと見るとシュレム様の長くて真っ白な生足が視界の中に目一杯広がった。そう、彼女は長めの開襟シャツを着ていたが、下にはまだ何もはいていなかったのである。


「ぐわあ!」


 驚いた僕はテーブルの底に思い切り頭をぶつけてしまった。その拍子にテーブルが傾き、今度はブリュッケ様のパジャマの下に紅茶がこぼれた。


「わっ! まだ熱いってば!」


 ブリュッケ様は急いでズボンを脱いでパンツ一枚になった。見てはいけないと思いつつテーブルの下から覗き見ると、小さなハート模様がたくさんプリントされた柄のようだ。

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