ユスティティア

「久々だな、カクさんよ、例の計画の進捗状況は?」 


 僕が真面目に訊くとカクさんは答えた。


「アディーとチトマスの前だぜ、いいのかい?」


 二人は顔を見合わせて僕らの方へ向き直った。


「いいさ、いずれバレる流れだしな……オーミオオツ・クサツ連合のラング市長との話し合いは?」


「ゴールドマン教授によると、ケプラー22b総督府からの完全独立の見返りに奴隷制度を廃止する方向で意見が一致したそうだ。もはや前時代的な制度なんだと」


「さすが。教授はだてに年齢を重ねている訳ではないようだな。本当にすごいよ。これで強大な後ろ盾ができた事になる」


「ただ、悪い知らせもある」


 アディーとチトマスは耳をそばだてた。


「デュアン様が噂の特殊対人兵器の使用にgoサインを出したようだぜ」


「何、正気か? ウィルス型自己増殖ロボット、キラーTファージ……過去の遺物と思っていたが、あれを引っ張り出してくるというのか」


 チトマスとカクさんは同時にコメントした。


「まともじゃ、ないよね」


 来客用のクッションに座り、紅茶で落ち着きを取り戻したチトマスは、奴隷解放の野望や革命の希望を語った。警官は普通取り締まる側なんだけどな。


「私も地味ながら男の奴隷解放運動を先導しています。仕事柄、B級奴隷とよく話すのですがケプラー22bの男達には覇気がない。奴隷根性が染みついて目が死んでいる。こんなでは過酷な植民惑星でこれからも開拓移民が、いや人類が発展していく保証はありません」


「中央政権をどうこうするよりか、まずは開拓移民の意識改革だな」


 僕は戦わずして革命を成し遂げる困難さを実感した。


「そこでオカダさん」

 

 チトマスがずいっと顔を近付けてきた。まとめられた髪の毛一本一本が判るほどに。

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