ローザ

 その時サイレンを鳴らしたパトカーが数台、現場に到着したのだ。


「ちょっと遅いよ、アディー……」


 僕はホッとして思わず呟いた。


「オーミハチマン警察だ! 銃を捨てて投降しろ!」


 放水器付きの機動隊のバスに分乗していた武装警官隊が、装備をガチャガチャと鳴らしながら一斉に展開してきた。

 アディーと武装警官隊の女隊長は、つかつかとパークスの元へ無表情のまま歩み寄る。


「パークスさん、ちょっとやり過ぎましたね」


 目が細い日焼けした女隊長の言葉にパークスは居直った。


「あんたの首ぐらい、私の力でいつでも飛ばせるのよ」


 その時スケさんは、噛みついたままパークスの首を捻った。他人より、むしろ自分の首を心配すべきだ。


「威力業務妨害罪の疑いがあります。オーミハチマン警察署まで任意同行願えますか?」


 隊長の言葉に、パークスは苦し紛れに吐き捨てる。


「い、今の私の状態は無視なの? 傷害の現行犯でしょ?」


 僕は彼女の元まで、落ち付いた態度で説明しに向かった。


「スケさんは人間じゃないんだ。よく見てみ」


 パークスは、やっと首筋に突き立てられた犬歯から解放された。歯型の跡が深々と赤く変色している。

 スケさんはパークスと目が合うと、ニコッとして頭上に寝かせていたネコミミを数回プルッとさせた。

 何も言えず唖然とするパークス……。


「とにかくパトカーに乗ってください」


 パークスは警官に身柄を拘束され、フレネルと共にパトカーの後部座席に乗せられたのだ。武装解除させられた他の社員も、この場から解散となったのである。


「終わったね、スケさん、カクさん」


「ええ……」


 最初アディーは、セーラー服の女子高生スケさんが誰なのか全く分かっていなかったが、事実が伝えられると腰を抜かさんばかりに驚いた。


「本当にスケさんなの? 私より若いじゃない! という事はゴールドマン教授に会えたのね、良かった」


 四つんばいのままペロッと舌を見せたスケさんは、アディーの視線にちょっと恥ずかしそう。


「いや……まだお会いしてないけどね」


 新生スケさんの初手柄にアディーは惜しみなく称賛を贈ったのだ。


「ご協力ありがとうございました。パークスについては余罪を追及され、当分の間は表に出てこれないと思われます」


 アディーは再びパトカーに乗ると、オーミハチマン警察署の警官隊と共に署まで戻って行ったのだ。



 

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