ルーツィア

「それが何だって言うの! ここは地球とは違うのよ、私を舐めないで!」


 パークスは、かろうじて冷静さを失わないでいた。だがその目は内部から湧き起こる、煮えたぎるような怒りに満ちた感情に支配されているようにも見える。


「うちの秘書を酷い目に会わせたそうね! 他にも被害者がたくさんいるわ。残念ね、オカダ査察官。あなたには本当に失望させられました!」


 パークス商会の社員は、背中に回していたFN P-90を一斉に構えて僕の方に銃口を向けてきた。小口径だが今でも通用するデザイン、貫通力に優れるおっかない銃だ。


「おいおい、戦争でも押っ始める気かい? おっかないアマゾネスさん達だ。でも装甲殻類カルキノスに比べりゃ言葉が通じる分まだ少しは、ましな方か……」


「だまれ! だまれ地球人! その減らず口を永遠に黙らせてやろうか」


 本気度を示すため、目配せされたフレネルは壁に向けて威嚇射撃をしてきた。数発の5.7×28mm 弾が深々とコンクリートに食い込んで破片が散らばった。

 平和的解決は望めそうにないな……。


 突如ふわりと地面に降りたスケさんが、二本足で立って歩きフラフラとパークスの方に向かって近付く。


「助けて、パークスさん……」


「???」


 パークスはセーラー服姿の知らない娘が何を言っているのか分からず、一瞬発砲を躊躇してしまった。

 スケさんの眼光が輝く。瞬時に四つ足となると、ジャガーのように右に左に目にも止まらぬ早さで距離を詰め、人間業とは思えないスピードと柔軟性でジャンプした。瞬きが終わるころにはパークスの両肩に手を付き、一回転して背後に回ったかと思うと、彼女の首筋に後ろから、がぶりと噛みついた。


「ぎゃあぁ!」


 パークスは信じられない早業に何が起こったのかも、しばらく認識できない状態だった。

 カクさんは唸り声を止めると、牙をしまって叫んだ。


「おっと、皆動くなよ! 動くとボスの首の骨が折れちまうぜ!」


 さすがに秘書のフレネルも、おいそれと手が出せない状況だ。凍り付いたように動けないでいる。

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