イソルダ
「スラグ弾でも食らいやがれ!」
すばやく移動しつつ、ショットガンのフォアエンドをスライドさせて次弾を装填した。ここからは以前、怪妖洞でゲットしたスペシャル弾が続く。
道路に躍り出た瞬間、ゴツいワゴン車の正面グリルに向けてピタリと銃を固定する。ボンネット下のエンジンに狙いを付け、トリガーを引いたのだ。派手な撃発音と、硝煙を吐き出す銃口から飛び出た鉛の一粒弾は、正確にエンジンのシリンダーブロックを貫いた。
キャァアアアアっと聞こえてくるのは、車のブレーキ音か乗員の悲鳴か区別が付かない。風穴が開いたフロントグリルから白煙を噴き出しながら走行している。
「まだまだ、次こそはドラゴンブレス弾!」
僕は続けざまにショットガンのフォアグリップを軽やかに後退させた。ショットシェルが独楽のように空中を舞う。次の瞬間、ヒコヤンの遺産ドラゴンブレス弾を相対するワゴン車のフロントウインドーに向けて浴びせた。
「ひよおぉ~!」
ランドルト弟とカクさんは、マグネシウム入り焼夷弾による花火のような25mにも及ぶ火炎に舌を巻いた。
視界を失ったワゴン車のドライバーは運転を誤り、右にステアリングを切ると道路を飛び出し、堀に向かって一直線。数メートル下の堀池に水飛沫を上げながら、車ごと飛び込んだのである。
僕はドライバーの無事を確認しながら後ろに振り返ると、新たな異変に気付いた。今度はトラックに乗ったパークス商会の女社員二名がランドルトを発見し、営業所前に急停車するのが見えたのだ。裸の彼を取り押さえようとワルサーPPKを抜いて飛び出してくるのが見て取れる。
「女に銃口を向けるのは心苦しいが……怒りの火炎竜じゃ!」
僕は黒いパンツスーツのアマゾネス達を狙って、2発目のドラゴンブレス弾をショットガンから放った。
「キャアアッ」
そう悲鳴が聞こえてきた頃、眩しい火柱は消失した。彼女らはスーツのジャケットの裾や袖などに引火している事に気付いたのだ。
「イヤァーッ! 熱い!」
パークス商会の社員達は、道路を隔てた向かい側にある堀に死に物狂いで自ら飛び込むと、濁った水で服の火を消し止めたのだった。
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