メデア
「……何? 何事なの? 騒々しいわね~……事故かしら?」
やがて営業所前に停車した青いトラックの荷台から、お揃いの白いヒラヒラした服を着た声の低い女性二人がステップを降りてきた。するとランドルト弟が、二人の顔を見るなり悲鳴を上げて逃げ出した。スタリオン高機動車の陰に隠れて息をひそめ、様子を伺っている。
「ん? 何やってんだアイツ?」
好奇心旺盛なカクさんは、そう言うと綺麗な二人組に近寄っていった。
「ううっ! 男?! でも見た目は美女のペア……ひょっとしてA級奴隷と呼ばれる人達なのか」
さすがはカクさん、少し臭いを嗅いだだけで、二人をすぐオネエと見破ったのだ。
僕はお二方の顔を凝視して唖然とした。
「嘘だろ! 今日はどうなってるんだ! もはや何が起こっても驚かないぞ」
いち早く気が付いた、茶髪の方のオネエが僕の顔を見るなり、両手を頬に当てて驚嘆の声を上げる。
「あら! びっくりした~! お久しぶりー。アツシじゃないの!」
色白で長い髪をアップにした方のオネエも、嬉しそうに顔をほころばせて白い歯を見せた。
「ええ~アツシなの?! 会いたかったわ~」
そう、僕が初めてケプラー22bに降り立ったその日、オーミモリヤマ市民病院の地下で一緒になったA級奴隷の人達だった。忘れもしない、その名もマコトとヒロミだ。
マコトは相変わらず僕と同じ性別とは思えず、小さい顔の女性にしか見えなかった。黙っていると、少し憂いのある深窓の令嬢のようだ。
「アツシ~、聞いたわよ。あなた地球人だったのね~。後から知って驚いたのよ」
一方ギャルっぽい茶髪のヒロミは興奮気味に僕の顔を覗き込んで言った。
「そうよ、アツシ! アンタやっちゃったね。ミカミ山を崩してしまったそうじゃない。オーミモリヤマ全市民、いやケプラー22b全てのコロニー都市に顔と名前が報道されて、一躍アナタは有名人なのよ」
「ははは……二人とも、元気そうで何よりだな」
僕は戦闘のハイテンションが冷め切れないままだったが、照れ臭くなって鼻の下を人差し指で横に拭った。
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