ナウシカア

 急いで体を起こしてスケさんの様子を確認する。どうもベッドに寝かせた位置から僕の枕元へ、少し移動しているような。スリープモードでも多少は動いたり、言葉を発したりする事ができるのだろうか。

 僕はポケットのケースからナノテク・コンタクトを取り出すと両眼に装用した。そして毛布から抜け出してスケさんの元へ歩いて行った。


『スケさんなのか? まさか、お前死んじまったのか?』


『私は生き物じゃないのよ……良かった、オカダ君。気付いてくれたのね』


『おお、スケさん。ちょっと話せるようになったのか』


『落下した時のダメージが思いの外大きくて……体はほぼ動かせないけど、脳内通信テレコミュぐらいはできる事に気付いたの』


『そうか、何か超常現象が起こったのかと思った』


『私はアニマロイドで、科学の粋を集めたような存在なの。誰よりも科学の力を信じているわ。よく映画や小説にありがちな超自然的な力で助かったとか、死んだ人のパワーで奇跡が起こって解決、とかは嫌いなのよね』


『オバケとかUFOとかオカルト嫌いだったな』


『いや、幽霊は今の私そのものね。宇宙人はケプラー22bのアマゾネス達の事になるんじゃない』


 シュレムの方を見た。皆熟睡しているようだ。ネグリジェから下着とか色々丸出しのマリオットちゃんには、毛布をかけ直してやった。


『明日にはゴールドマン教授の居場所を探し出して、必ず連れて行ってやるから』


『ええ、私も及ばずながら、途切れぎみのコンタクト・ドライブシステムを利用してインディペンデンス号の目から探ってみようと思ってるの』


『さすがだな』


『さあ、オカダ君、もう眠って頂戴。カクさんやアマゾネス達にもよろしくね……』


 

 僕は静かに寝床に戻ったが、マリオットちゃんとブリュッケちゃんが抱き合うようにくっ付いて隙間がなくなってしまった。

 どうしよう……体調不良なので看護師なら許してもらえるかもしれない。


「ちょっと失礼……」


 僕はシュレムの布団にもぐり込む決心をした。

 

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