ビビリア
我々は隠し部屋から脱出すると、ヒコヤンが残した地下迷宮地図に従って、カルキノスが通れないほどの細い道を選んで進んだ。
「こういう時、松明の方が役に立つ。風が流れて行く方向に炎がたなびくんだ」
カクさんは先導していたが、ライトなしの暗闇でも臭いを嗅いでどんどん進んでいける。さすがオオカミだな……地下水のせいで臭いがボヤけているらしいが。
「ぐえ。いやな臭いがしてきたぜ。カルキノスの糞の匂いかな?」
地下は入り組んでいたが、カクさんと地図のおかげで迷いなく結構進めた。別の出口に向かうには、地底湖を経由しないといけないらしい。
20分ほど行くと……最終的には這って進んでいかないとダメなぐらい狭くなってきた。
先頭はカクさん、真ん中にブリュッケちゃん、最後はリュックの荷物が倍以上に膨れた僕。ショットガンも気を付けないと壁に引っかかる。
「ぷう?……誰だ、オナラしたのは。カクさん、止めてくれよ!」
「ごめん、ボクだよ」
「ブリュッケちゃん!? それはそうと、もうすぐ地底湖のはずだが……」
最後は垂直降下に近くなった。カクさんが器用に飛び降り、次に僕。下でブリュッケちゃんを待っていたが、彼女は足を滑らせて落ちてきた。
「ぐは! ぐへ!」
我々はブリュッケちゃんの下敷きになった。彼女が軽くてよかったが、背負っている銃の精度が狂っちゃうぞ。
やけに広い場所に到達した……しんと静まり返り、水の流れるような音だけが響いている。
松明をかざすと、目の前に信じられないほど大きな地底湖が広がっていた。
「うわ~……地下にこんな所があったなんて!」
僕の声が洞窟内に反響する。
ライトで照らすと、恐ろしく澄んだブルーの水がたたえられており、深さ10mぐらいはありそうな湖底が透けて見えている。何だろうか、底にはビー玉みたいな丸い物が大量に沈んでいた。
「とっても綺麗……」
「でもブリュッケちゃん、ブルーの色が綺麗すぎて逆に不気味じゃないか?」
「いやいやオカダ君、これが見れただけでも来てよかったと思うぜ」
「写真に撮って皆に見せてあげようよ、ねえ」
「そうだな……って……オイ! 底のビー玉が何だか動いてる」
「あ~……オイラが思うにあれは……」
「ボクは、ケプラーシオマネキの卵だと思う」
「うわ~~!!」
「騒ぐなよ、オカダ君……うわー!!」
一番奥の底が見えない最深部から、正体不明の真っ白な物体Xが、ゆっくりと浮かび上がってきた。鏡餅の化け物なのか?
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