アドリア
カクさんは口に何か咥えていた。何か図が描かれた羊皮紙だ。
「ん? 何だそれは」
「ええもん見付けたで~」
羊皮紙を広げてみると、何と怪妖洞の詳細な地図が丁寧に記入されていた。
「ナイス! カクさん。どこから見付けたんだ? これでこのダンジョンの抜け道や危険地帯が一目瞭然になったぞ」
パリノーと一緒に地下迷宮の地図を辿っていると、予想通り最深部には地底湖が存在していた。スケールが分かりにくいが、全長50メートル級の深いプールが暗黒の世界に広がっている感じなのか。
危険を冒してまで最深部まで行く必要性はないな。第一何が待ち受けているのか分からない、あまりに怖すぎる。
部屋の壁に飾られている、超巨大カルキノスのハサミの剥製と言うか脱皮した抜け殻が、恐怖感を煽るのだ。
カクさんは部屋の匂いを嗅ぎまくり、どんどんお宝を発見してゆく。
「……オカダ君、すごいぞ。手入れが必要だが、ロッカーに武器・弾薬も大量にあるぜ」
「おお! フランキ・スパス12! 近接戦闘用にショットガンが欲しかったんだ」
「ショットシェルは湿気で、もう発火しないかもしれないぜ。それにこれを見てみろよ」
「おおお! 不用心にも金庫には現金がワンサカ!」
「うへへへ……何だか盗賊にでもなった気分だな」
ハッとしてブリュッケちゃんの方を振り返る。
ブリュッケちゃんは、机の上に置いてあった写真立てに見入っている。……黙ったまま手に取って、彼女は一葉の古びた写真を見つめ続けた。
カクさんが邪魔しないように覗き込んだ。
「オカダ君、この女の子の赤ちゃんの写真は……」
「間違いなくヒコヤンに抱っこされた、幼いブリュッケちゃんだろうな」
ヒコヤンは男らしいイケメンで、絵に描いたような理想の父親だった。
いつの間にかパリノーがいなくなっていた!
ブリュッケちゃんによると隠し部屋の扉を開けたまま逃走したらしい。急にトイレにでも行きたくなったのかな? と思って全力で入口に向かって走るパリノーに声をかけなかったとのこと。
「確かに部屋にはトイレが付いてないな」
僕のコメントを聞いた後、カクさんが扉の外へ様子を見に出た。
「危険な単独行動は止めた方がいいのに……って! オカダ君、すぐここから脱出しよう」
自家発電機のエンジン音か振動を感じ取ったのか、ケプラーシオマネキ軍団が遥か奥の崖下から続々集まってきていた。
働きガニとは明らかに甲羅の赤色が違う……いわゆる兵隊ガニかもしれない。おまけに反対の入口方面からは、緑色の働きガニが大群で押し寄せてきた。やばい、迂闊に出られなくなったぞ。パリノーは無事に地上に戻れたのかな?
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