ルーメン

 僕とカクさん、パリノーそしてブリュッケちゃんで洞窟探索隊を編成した。残されたシュレムとアディー、マリオットちゃんの護衛はスケさんに任せる。


「ブリュッケちゃん……赤いヘルメットはいいんだが、いくらなんでも白ワンピースにベストという服装でのケイビングは、よしたほうがいい」


 洞窟内は気温が一定で、夏は涼しく冬は暖かい……とはいってもな、怪我しちゃうよ。


「大丈夫。下にブルマをはいているから」


 カクさんが妙な所で食い付いた。


「何ぃ! ブルマだとぅ! 久しぶりに聞いたぜ」


「フフフ……カクさん、そんなに見たければ後で見せてあげてもいいよ」


「こらこら、お前ら何アブない約束を交わしてるんだよ! 頼むぜ……二代目ヒコヤン」


 無理矢理ジャージの体操服上下に着替えさせた。防水性が低いけど仕方あるまい。

 装備はヘルメットに軍手、フラッシュライト、非常食に、医薬品、後は武器とザイルといったところか。地下ならば、コンタクト・ドライブシステムは使えないので、地上との通信手段がないのが痛い。


 車外に出るとガソリン火災は、ほぼ鎮火したようだった。火の付いた棒を一本拾い、油をしみ込ませた布をぐるぐる巻きにして松明代わりとした。

 僕は車内のスケさんに言う。


「一時間以内に戻らなかったら、何かあったと思っていい。二時間経っても出てこなかったら、南のオーミマイバラ市まで後退してもらっても構わない」


「縁起でもない事を言わないでよ」


 シュレムが突っ込む。そして思いを込めたような表情で言葉を続けた。


「すぐに皆で戻ってきてね。私、待てない人だから!」


「まったく、装甲殻類カルキノスがうじゃうじゃいる事が分かっているのに洞窟に入るのは命知らずの行為だ。パリノーの荷物を発見したら、すかさず引き返すぞ」


 ブリュッケちゃんは、僕の発言にやや不服そうな顔をした。

 狭くなっている怪妖洞の入口から、カルキノスがいないのを見計らって探索隊は潜入する。入口を過ぎたら、急に広くなった。ライトや松明をかざすと……大小の道が網の目のように入り組んでおり、右に左にずいぶんと奥の方まで続いていた。


「ダンジョンってのは、こういうのを言うんじゃないのか?」


「まあね! 俺が臭いを嗅いで調べるから任せときな」


「頼もしいね、カクさん」


「私の荷物……私の荷物は……どこ?」 


 四人の声が洞窟内で反響する。あれほどいたケプラーシオマネキは、どこまで潜って引っ込んでしまったのだろう……。

 カクさんによると、どこにもパリノーの荷物はおろか、手がかりになりそうな臭いまで全く存在していないらしい……一体どういう事?

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