レト

 市長室は手榴弾の爆発で噴煙が上がり、窓からは調度品の破片も飛び散ってきた。


「スケさーん!」


 僕とシュレムはスタリオンの屋根に無事着地した。戦闘員が群がってきており、すでに何人かが車によじ登ろうとしている。


「伏せろ! シュレム!」


 彼女の頭を押さえつけた。ボウガンの矢が、僕の背中に付けた防具に突き刺さる。


「こいつら、俺の身柄の拘束だけかと思ったが……」


 シュレムを天井ハッチから車内に押し込み、スタリオンを急加速させた。戦闘員どもを押し退けて進むと、急に開けた場所に出た。

 戦い続けるカクさんを兵達が遠巻きにしているのだ。


「迎えに来たぞ、カクさん!」


「ちょっと遅すぎるんじゃないのか!」


 そう言いながらカクさんは、噛みついた戦闘員の両脚をハンマー投げのようにスイングした後、空中に放り投げた。……今回は彼も文句なしに大活躍だな。どさっという音と共に戦闘員は、仲間の頭越しに落っこちた。

 カクさんはボンネットのまだ消えない炎を飛び越えてスタリオンに飛び乗る。


「スケさんもすぐに迎えに行こう」


 僕が言うとカクさんは、呼吸を整えながら答えた。


「姉御なら大丈夫だと思うが……」


 車内を引っ掻き回し、シュレムが尻の下に敷いていた生温かいギター・ライフルレスポールを取り出す。レーザーの出力を非殺傷レベルにまで絞って車上に出た時、カクさんがいきなりピンチ。


「オカダ君! ヘルプ、ヘルプ!」


 密かにスタリオンの後部に取り付いた戦闘員が、投げ縄をカクさんの首に引っ掛けたのだ。そのままぐいぐいと引っ張り、引きずり落とそうと躍起になっている。

 すぐさまレーザーのトリガーを長押しして縄を焼き切った。小太り中年の戦闘員は、尻もちをつき目を丸くする。続けて背中にレーザー光で『デブ』と書いてやったら、悲鳴と共にオッサンは車から転がり落ちた。

 市長室の下に群がる戦闘員にも片っ端からレーザーを連続照射して火傷を負わせる。


「ぐわあぁ!アチチチ……!」


 甲殻類の殻や甲羅から作ったプロテクターは熱に弱く、すぐに一直線状の穴が開いた。今行くから待ってろよ、スケさん……。

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