ヘスペリア
スケさんを残して、この場から逃げ出す事はできない。再び市役所の市長室直下に向かって車を回した。
前にも増して戦闘員が人海戦術を仕掛けてくる。
「こりゃあ、多勢に無勢だ。さすがに数には敵わないぜ」
カクさんはスタリオンの操縦担当になったが、群がる敵のあまりの多さに圧倒されていた。シュレムは初めて乗る地球製の車に慣れてきたのか、喋る余裕が結構出てきたようだ。
「カクさん、何とか相棒を救出する方法はないの?」
シュレムもスケさんの事を心配をしてくれるのか。
「無論、考え中だ」
煙が上がる市長室は、内部で何が起こっているのか、ほとんど把握できない。
「オ、オカダ君……でいいのかな? スケさんを何とかしてあげて」
ハッチから顔を出すシュレムは多分、初めて僕の名前を呼んでくれたのだ。
どうする? もう一度危険な市役所内に突入して、彼女を見付け出すか……それは、いくらなんでも危険すぎる。一旦撤退した方がよいのか、どうか考えあぐねている時。
「あっ! ……」
にわかにシュレムが叫んだ。
僕は二階の市長室の窓を見た。だが何も変化は起こっていない。それもそのはず、スケさんが猛スピードで一階のメインエントランスから飛び出してきたのだ。
「スケさん!」
戦闘員の隙間を縫うようにかわすと、大きくバネのようにジャンプしてスタリオンの屋根に無事着地したのだ。後は市役所から高速離脱のみ! 轢かれまいと戦闘員の集団は、海が割れるように道を開けた。彼女、体には一切傷を負っていない。おお、スケさんさすが!
「発想の転換よ! 男達の頭を踏み台にして壁を伝いながら、元来た階段を下りてきたの。それでも攻撃を完璧にかわすのに、かなり時間がかかったわ」
カクさんが首にロープを巻いたまま、ひょっこり出てきた。
「あらぁ! あなたいつから首輪をはめるようになったの」
「いや、俺にはSMの趣味はないんだがな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます