キュベレー
窓にバリケードを築いていたスケさんが呆れて言った。
「コラー! オカダ査察官! じゃれ合ってる場合じゃないのよ!」
「すみません、姉御」
シュレムの美しい下着姿を目に焼き付けようと思ったが、コンタクト・ドライブシステムによって本当に資料映像として報告書に焼き付けられてしまった事実は黙っておこう。
「こっちを見ないでって言ってるでしょ!」
さっさと服を着ればいいのに、シュレムは屈んで下着姿のままだった。隠しているつもりだろうが、色々と丸見えだ。
「オイオイ、今踏み込まれたら……」
僕が台詞を言い終わらない内に、ひと際大きな破壊音が部屋に響いた。とうとう市長室のドアは完全に破壊され、戦闘員がどっと、なだれ込んできたのだ。
「畜生! 彼女を守り切れるか……」
シュレムを背にじりじりと後退する。机を盾代わりにしていたが、容赦なく数十本の矢が貫通。突入してきた集団は、ボウガンを装備しているのだ。
どんどん数を増す戦闘員に、スケさんとカクさんが果敢に挑む。
「オカダ君、逃げた方がいいわよ!」
スケさんは久々に
野生じみた咆哮を上げると、眉間に皺を寄せ牙を剥く。
戦闘員達……B級奴隷の男達は己の目を疑った。
壁と天井を三次元的に跳ね回り、目にも留まらない速さで襲いかかってくる斑の化物がいる。牙と爪の地獄の舞が繰り広げられ、天井に血糊の付いた獣の足跡がいくつも付いた。
カクさんも負けてはいない。片っ端から戦闘員に噛み付いて武器を落とすと、そのまま振り回し、人形相手のように軽々と蹂躙してゆく。
二頭は信じ難いほどの神速であちこちに移動し、重力や慣性をまるで無視したかのような軌跡を描くのだ。当然、ボウガンなどは狙いを付ける前におしゃかにされるのがオチ。
部屋の中は縦横無尽に跳ね回る二頭の勢いによって燃え盛るようだ! あちこちから断末魔のような叫び声が飛び交い、様々な防具や武器が足元に転がっていくのをシュレムは、ぽかんと眺めるだけだった。
彼女の前にも屈強な戦闘員が電光石火で次々と倒され、傷だらけの男の山が築かれてゆく。
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