マーヤ

 シュレムは看護師の本能で、血まみれの戦闘員の山から重症患者をトリアージして止血していく。清潔な布もなく自分の白衣を破いて使っているようだ。下着姿のまま一体何をやってるんだ!


「スケさん、カクさん! あと5分だけ持ちこたえてくれ!」


 僕はフルオートでこっちに向かっているスタリオン高機動車の操縦を、ナノテク・コンタクトレンズを通した遠隔操作に切り替えた。すぐ自分の視界の中にスタリオン搭載カメラからのライブ映像が届く。

 唯一の搭載武器、40mmマルチグレネードランチャーから発煙弾を市役所方向に連射した。


 間もなく外部からの爆発音が、窓を通して連続で響いてくる。凄まじい量の煙幕が光を遮り、周辺を暗黒に染めたのだ。

 なおも数を増す、デュアン総督直属の軍勢。


「オカダ君、これじゃあキリがないわ!」


 スケさんは、そう言いながら戦闘員の肩に馬乗りになるや、ヘルメットに牙を立てて穴を開ける。


「あと3分だ、がんばれ!」


 僕はシュレムの方に駆け寄って、無理矢理服を着させた。戦闘員の服は大きすぎて少々汗臭かったが、ブラとショーツ姿のままでは絶対にヤバい状況だ。


「もう止めようよ……これ以上ケガ人を増やさないで」


 シュレムは、スケ・カクコンビが自分を守るために奮闘している事は、よく分かっているはず。自らも戦っていたというのに、どうした……。


 そうこうしている内に、また一人のイケメンな戦闘員が、カクさんの牙の犠牲になった。振り回されて壁に容赦なく叩きつけられた後、ずるずると床まで落ちてヘルメットを転がす。

 カクさんは雄々しく吠えた後に、心から叫んだ。


「俺はイケメンが大嫌いなんだって覚えとけ!」


「心が狭っ! あと1分で脱出だ」

 

 スタリオンが、ようやく市役所前に到着した。

 戦闘員が火炎放射機で前面を攻撃してくる。だがそれぐらいではビクともしない。むしろ火のついた車は、見た目にも派手になって脅威となるはず。大軍勢の中を突き進み、戦闘員どもを次々と跳ね飛ばしながら市役所にお目見えだ!

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