第27章 狂戦士ブエルム
フラテルニタス
第二十七章 狂戦士ブエルム
ケプラー22b総督府の正面からちょうど反対側にある通用門、ここにザイデルD-15部隊の本陣が置かれてあった。ここは石造りの台形ピラミッド部の基盤に当たり、インディペンデンス号のレーザー照射攻撃にも十分持ち堪えている。母星のペルーにあったインカの石組みを参考に造られており、カミソリの刃も通らないほど精密に組まれた石垣である。
ザイデルは装甲列車ドラケンの爆沈を確認すると、その美しい顔の眉間に皺を寄せた。アマゾネスの強さと内・外面的な優秀さを象徴する生粋のエリートでもある彼女に、敗北の文字は似つかわしくない。カーキ色の糊が効いた軍服に同色のタイトスカートを着用する彼女は、乱雑に敵情報が積まれた机の野戦シートに乱暴に座った。
「ちっ、上空からの攻撃は卑怯だぞ」
モニターに視線を落とすザイデルの傍にはナンバー2のシルマーがいた。“傷だらけのシルマー”の異名を持つ彼は歴戦のB級奴隷の戦闘員だ。初老の彼は、娘ほどの年齢差があるザイデルに常時付き従っている。
「包囲殲滅作戦は破綻しましたが、敵勢力の半分を削ぎ、大いに士気低下させる事には成功しました。概ね作戦は成功と言えるでしょう」
「敵のトップは結局誰なんだ? 地球人のオカダ査察官か、それともゴールドマン奴隷長なのか?」
「“釣り野伏せ”をいち早く察知したところをみるとゴールドマン奴隷長の可能性が高いです。オカダ査察官は航空機による攻撃に専念する必要性から陣頭指揮は執れないでしょう」
「くそ、あのゴールドマンか……裏切り者め。デュアン総督から特別に目を掛けられているゆえ、チェックが杜撰だとあれほど進言していたのに」
「身も心もすっかりケプラー22b人だと言っていたのは我々を油断させる虚言でしたね。やはり地球人は信用ならない」
「勝利の暁にはS級奴隷の称号を剥奪して処刑してやる」
ザイデルのエメラルドがかった瞳には怒りの炎が見え隠れしていた。
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