第17章 パークス商会

カリスト


  第十七章 パークス商会


 マスクをしたランドルトの声が検査室に響く。スケさんの修復治療前の検査を特別に見学させてもらえた。


 ダイアグノーシスに繋いでみました。自己診断機能によると……。

 トラブルコード: 14・11・920・1137……。

 診断項目: 骨格系・循環器系・神経系・消化器系……。

 検出内容: 頚椎骨折・上腕筋挫傷・血管一部損傷・神経挫滅・横隔膜ヘルニア……。


「思ったより重症ですね。ゴールドマン教授が戻ってくるまでは、手が出せないほどです」


 ランドルトの的確な診断に僕は溜息が出た。


「素材からしてアニマロイドは強化されているから、このくらいで済んだとも言える」


 一般生物なら、とっくに死んでいてもおかしくないダメージだ。スケさんの状態を再確認しながら言う。


「ドック入りは大体何日ぐらいの見積もりを立てています?」


「たっぷり2~3ヵ月はかかりそうですね。万が一のバックアップとして、大脳メモリーを代車に移植予定です」


「……代車って何だ。車検じゃあるまいし」


「アニマロイドのボディの代わりになる受け皿ですが、開発中のヒューマノイド型ボディがあります。メモリーの引っ越しには数時間かかりますが、やってみる価値は十分ありますよ」


「よく分からないが、アニマロイドじゃなくてアンドロイドになるって事なのかな?」


「ただ人工的偽身体が、ハイティーン女子タイプしかないのですが」


「スケさんが女子高生? 中身は100歳オーバーの婆さんなんだぜ……」


「他の手立てがないのです。 至急ご決断を……同意書にもサイン下さい」


「う~~ん」


「そんな心配なさらずとも……まあオカダ査察官のチームのメンバー、シュレムさんとアディーさんでしたっけ? お二方がここにやってくるまでの間、お茶でも飲んで待っていて下さいな」


 ランドルトの気を使ってくれる言葉は、ありがたかったがスケさんが女子高生の姿になるってのがどうも引っ掛かるなあ。彼女自身どう思っているのだろう。

 それにしても人工的偽身体が10代の女子型ってモロにゴールドマン教授の趣味なんだろうな……スケべジジイなのかも知れない。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る