第4章 オーミモリヤマ市

アグラヤ

  第四章 オーミモリヤマ市


 海洋惑星にして人類初の太陽系外植民惑星ケプラー22bの大陸上には、鉄道で結ばれたコロニー都市がビワ湖を中心にいくつか飛び石状に分散して存在している。 

 その中で実質的に首都と言って差し支えないのが、最も早くから建設され、人口8万人を擁する都市でもあるオーミモリヤマ市。

 ケプラー22b総督府を有し、開拓移民を統率する中心的役割を担っている。


 この惑星の最高権力者は、ケプラー22b総督府におわすデュアン総督らしい。ちなみにハリウッド女優並みの金髪巨乳美女との噂。かつて星間移民船メイフラワー号で当惑星に到達した初代総督から、ほぼ世襲制である。大がかりな選挙もなく代々続投的に任命されており、結果的に民主主義が育たず、事実上独裁制となっているのは誠に残念だ。

 

 地球からの監視が届かないのをいいことに、やりたい放題になっていないのか……。

 我々植民惑星査察団は約30年ぶりに、この惑星の植民達成評価を下して地球に報告しなければならない。


 もっとも地球から600光年離れた距離は、いかんともし難く、大切に保存された情報を地球に届けるためには、ケプラー22bの人口をもっと増やし技術レベルを今より更に上げて、空間固定型ワームホールゲートをこちら側にも建設しなければならない。

 地球側から資材がどんどん届けられるようになればいいのだが、地球規模の不況で、どこの国も国家予算に余裕がなくハイリスクな投資など夢のまた夢だ。


 今のケプラー22bの文明レベルを見てみよう……衛星ソドムかゴモラに対消滅発電所を設置し、空間固定型ワームホールゲートを建設する事など、とてもじゃないけど無理だ。どう考えても、最短でも、あと100年ぐらいは地球に報告書が届きそうにない。

 僕が死んだ後、インディペンデンス号に残されたケプラー22bについての報告書を一体誰が読むのだろう……。

 カクさんがコレクションしているという天文学的な量の秘蔵エロ画像と動画。報告書のデータにそいつが上書きされてたりしたら、本当に死んでも死にきれないよ。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る