第6話 働け!仁昭、そして全員集合!
登場人物紹介
主人公
容姿:短髪の黒髪に黒いジャケットを着た青年、時系列が夏なのでTシャツだけの恰好の時も多い。その顔つきは18相応の物とは思えない顔つきで経験の多さが窺い知れる。
幼い頃に「怒龍組」に拾われ鉄砲玉をしていた生まれつき不死身の肉体を持つ青年。
他の組からも「不死身の幼龍」として恐れられている。
現在は休養のため、丘ノ下橋の喫茶店「immortal」に下宿している。
面倒事と偽善が嫌いな性格で、不死身の肉体を持ったおかげで心が冷めきっている。
丘ノ下橋に住む住人
容姿:メープル色の髪で、出会った際は白と水色を基調とした可愛らしい服を着ていた。死にたがっている時でなければ顔は人形のような綺麗さを持つ。
仁昭と同じ不死身の少女であり、仁昭に自殺を目撃されたことをきっかけに彼の妹となる。
感情の起伏が激しく、性格も親しい人と親しくない人とでは対応も異なる。
不死身で死ぬ事ができない事を不幸だと思っている。
容姿:仕事中はこげ茶色のお洒落な革のジャケットを着ているお洒落そうに見える白髪の老人
怒龍組の組長の怒龍大三郎の元片腕であり、現役の頃幼い仁昭を拾って育てていた。
現在は喫茶店「immortal」のマスターである。仁昭に対しては程よい距離を取る理想の父親像を演じている。
しかし、実の孫に対しては激甘であり、性格も変わってしまうほどに溺愛している。
彼の実子の
容姿:おでこを出すように前髪を上に結んだ少女。何時も小学生の女の子らしい恰好をしているが時と場合によってズボンもはいている。
會澤紳の孫娘で、喫茶店「immortal」で祖父に引き取られ暮らしている。
7歳の頃に父親を亡くしている。しかし、性格に暗いところはなく明るく元気で人懐っこい性格である。
時折、自分にとっての闇となる部分に触れたとき、ヤクザの孫である事を思い出させるような殺気を見せることがある。
容姿:若干茶色に見えるセミロングヘアーをしている。同年代の女子と比べて胸は大きいが、少しぽっちゃりしている。
仁昭に丘ノ下橋駅で怒龍組の組員に絡まれていた所を救ってもらったことで仁昭と知り合う。
父親はサラリーマン、母親は専業主婦だが、祖父は代々続いてきた焼き芋屋であり、彼女も焼き芋が好物。
食べることが好きで、ダイエット宣言をよくしているが続かない。
ありすからは『芋女』と呼ばれている。
怒龍組関係者
容姿:スキンヘッドにサングラスに黒スーツ。説明する必要もないくらいにヤのつく自営業の人。
怒龍組の幹部で、仁昭の上司。スキンヘッドにサングラスとその道にいる事がすぐわかる格好をしている。
ある理由により仁昭に休養を与えた。
怒龍組の組長。怒龍組は都内で顔を利かせているヤクザで本拠地は真宿。
堅剛組の組長、「
第6話
「おまえさぁ、ここ来てから1週間……遊んでばかりだよな」
會澤が唐突に放ったこの一言が引き金だった。
「ったく……人が休養中なのに……なんで働かなきゃいけねぇんだよ」
「うるさいぞ!文句を言う暇があったら手を動かせ!」
「へーい……」
下宿先の1階にある喫茶店「immortal」、カントリー調な造りの喫茶店である。
下宿してから1週間近くが経ち、今は8月7日である。
俺は休養中、仕事は全く探していなかったし、するつもりもなかった。
しかし、毎日遊び続けている俺の様子が気に入らなかったのだろうか?理由は分からないが會澤の勝手な思いつきで喫茶店の手伝いをすることになってしまった。
とは言え、寂れた喫茶店だ。お客が沢山入って店が回らない訳でもない。正直な話、會澤1人でも余裕で回していける。
では俺が何をさせられているのかと言えば、店内の掃除だ。午前11時、客が誰もいない中、會澤はただ椅子に座って俺の仕事ぶりを眺めているだけで俺だけが働いている。
「そういや、おまえのいう妄想の妹が今日来るんだってな……」
「妄想じゃねーよ!」
ありすには今日は喫茶店のお手伝いがあるから、一緒に出掛けられないと言うと、私も喫茶店に行くと言ったので場所を教えたのだ。
會澤は妹の姿を見たことがないので、妹の話をいくらしても妄想と言って聞く耳を持たない。
「おまえ、今からでも……遅くないんだぞ……
嘘でした、すみませんって言えば許してやるから……と言うかおまえも思春期なんだしそう言う妄想しちゃうのも仕方ないだろうしな……」
諭される様に言われてしまった。
俺は本当にいるから関係ねーよと會澤の言葉を切り捨てた。
12時15分、おかしいな。12時に来ると言っていたのに妹が時間に遅れるのは珍しい。
「おい!約束の時間になっても来ねーぞ!もうやめとけって意地張るのは」
この時ばかりは遅刻してもらいたくなかった。何故ならこの會澤が調子に乗ってしまうからだ。
しかし、何時も集合時刻30分前に来てしまうありすが遅刻とは珍しい。
気になるのでメールをしようと携帯を取り出そうとした瞬間。
カランカラン!!と店の扉に備えられた鈴が大きな音を立てて扉が開く。
「お兄ちゃん遊びに来たよ!」
そこにはいつも通りのありすの姿があった。
「は?……お兄ちゃん……」
會澤は俺の言葉を妄想と切り捨てていたので、状況が呑み込めず固まってしまっていた。
しかし、俺も何故ありすが遅刻してきたのか理由が分からないので、全ての状況を把握できている訳ではなかった。
お互いに事情を説明しあう時間が必要な事は明白だった。
「という事は君も同じ不死身の身体を持っていて......
それで共通点があるから兄妹になった……よく分からないけどこれで良いんだよな……」
「俺もよく分かってないから、大体そんな感じって事が分かれば良いんだよ、オヤジ」
俺達は固まっていた會澤に対して事情を話した。
とは言え俺自身も兄妹になった理由を論理的に明確に説明できる訳ではないので、會澤も大雑把な話を聞かされただけであまり俺たちの関係を理解できていなさそうである。
「うーむ…...こいつと同じで不死身か……
にわかには信じがたい、本当に不死身なのか?」
「はい、そうですお父様」
「おおおおお父様!!こいつ行き成りとんでもない事を言いやがったぞ!」
お父様と言う言葉に対して0.001秒単位で會澤は反応して驚いている。
もう俺は身に染みて分かっている事である。控えめに見える口調や、容姿とは異なり、かなり積極的な妹なのだ。
「だって會澤様は、仁昭お兄さんの育て親なのでしょう?
だとしたらその妹である私はあなたの事をお父様と呼ぶべきかと……」
「まぁ……確かに……
って違うだろ!?なんか突っ込む所いっぱいあってどっから突っ込んだら良いかわかんねーけどちげぇよ!!」
どうやら、ありすの積極性に會澤は見たこともないくらいタジタジにやられている。ノリツッコミまでしてしまう始末だ。
こんなヤクザに全く見えない姿を晒している會澤はあかねが絡んだ時以外では初めて見る。
やれやれ、どうやら會澤にも初めての娘が出来た様だなと心の中で皮肉を言ってみた。
ちなみに彼女の事情を説明する際、俺の事情も怒龍組に関する情報だけは話さず、會澤との関係だけをはっきりさせている。
「大体、本当におまえは不死身なのかっ!
そこの所をはっきりさせておきたいんだが!」
「はい、わかりました」
そう言うと、會澤がその言葉の意味を把握する前に財布の中からカミソリの刃の様な物を取り出した。
「これで今から脈を切ります」
「いや……別にそ……ってはえーよ!人が喋る前に切るなよっ!!」
俺も彼女に自分が不死身である事を証明するために同じ事をしたが、彼女が他人にやる際は俺よりも思い切りがよく有無を言わさない様な雰囲気があった。
しかし、同時にこれは切り慣れているなと言う事がはっきり分かるので、彼女が自殺未遂を数えきれないくらいしてきたと言う事を改めて認識してしまった。
脈を刃で切っても彼女の腕からは血は思い切りよく飛び出さない、少量の血液が彼女の手を装飾するだけである。
傷も深くはないのですぐにその血の装飾は傷に吸われていき、傷もすぐに回復した。
「どうですか?まだ信じて頂けませんか?」
「……ふぅ、全くとんでもない妹を連れてきちまったな……
その様だな、仁昭、ありすとやら……
疑って済まなかった」
會澤はやれやれと言いたそうな雰囲気で煙草を取り出して落ち着きを払うと、何時もの調子に戻り謝罪をした。
ありすはやり過ぎと言えばやり過ぎだったが、會澤があんなタジタジになっている様子を見る事ができたので良しとしよう。
「仁昭と同じ……不死身か……もしや……
いやしかし……」
ふと煙草を吸っていた會澤が何かを呟いた気がしたので、俺はめざとく突っ込む。
「何か言ったか、オヤジ」
「いや、何でもない。
おまえらが馬鹿みたいな事してくれるから俺も思春期特有の妄想をしちまっただけだ」
「オヤジも思春期か、エロ本の隠し場所には気をつけろよ」
「お互いにな」
會澤は何か呟いていたようだが、その先を話す気はない様で上手くかわされてしまった。
今のやり取りを見てありすはふふふと笑っていた。
「仲が良いんですね、お父様」
「ふっ……勿論、小生意気でたまに水の底にコンクリで沈めたくなる時もあるが
基本的には親子仲は悪くないぞ」
たまにそんな恐ろしい事を思われていたのか俺は……
それで死なないのだから余計に恐ろしい。
もうお父様と呼ばれる事すらスルーしている會澤のスルースキルにも感服していた。
流石は元怒龍組の幹部と言った所か。
「私は孤児院出身でわけあって今の家族に拾われました、でも今の家族は私の事をただの厄介者としか思ってないですし…..」
ありすは孤児院出身なのか、今まで一緒にいて初めて聞いた情報であった。
今の家族がありすを厄介者扱いしている事は大体予想はできている事であったが、彼女本人の口から聞くとそれは重くのしかかってくる。
「それは……大変だったな
まぁ今はこいつって言う兄がいるんだ、いくらでも頼りにしてもらって構わない」
組の中ではこう言ったベタな身の上話を聞かされる度、そう言う話は聞き飽きたと切り捨てていた會澤が素直にありすを励ましている姿に正直驚きが隠せなかった。
勿論、組の中ではないからとか、組を抜けた時より穏やかになった等の理由は考えられるが、會澤のありすに対する態度には先ほどの豹変していた態度とは違った違和感がある。
しかし、俺にはその違和感の正体は分からないし、そもそも初対面であるはずの2人に接点はない。俺の考えすぎと言う可能性の方が高いのかもしれない。
「おじいちゃん!コーヒー3つもってきたよ~」
俺の考えを遮る様に、あかねはお盆にコーヒーを3つ載せて少し重たそうにしてこちらへとやってくる。
俺はゆっくりで良いからなと優しく声を掛ける、そしてあかねは見事3杯のコーヒーを配り終える事に成功した。
「大成功じゃないか!」
「うん!ありがとう!ひろあきおにいちゃん!
そっちのおねえちゃんはだれ?」
「私はね、この仁昭お兄ちゃんの妹のありすって言うの」
ありすは突然何も知らないあかねに対して妹宣言を行き成りしてしまった。
一応あかねは俺が會澤に拾われた事を知っているし、一から説明が必要だと言うのに。
「そうなんだ!じゃあひろあきおにいちゃんの妹だから私のおねえちゃんだね!
わたしはあかねだよ!
よろしくね!ありすおねえちゃん!」
純粋な子は何て呑み込みが早くて、何でこんなに仏の様に事情を聞かずに信じてくれるのだろうか。
それに比べて……
「何だよ、男の顔なんか凝視してきもちわりぃな」
「いや別に…...」
出来の良い孫に比べて、この男は人を疑う事しかしない。疑り深くて面倒くさい人間であるなどとは微塵にも思っていない。
「す、すいません!はぁ……はぁ……
はぁあ、ありすちゃんとはぁ……んはぁ……ひ、仁昭さんいますかぁー!」
またもや扉の鈴が大きく鳴った。それと同時に大声を出しながら息が上がっている梨芋が入ってくる。
「おっそーい!てか何息上がってんの芋女!
喫茶店から家までそんな遠くないのに走ってきただけでこれって……」
しかし、梨芋は店には呼んでいなかった。梨芋は特にジョギングを断ったとき分かりましたと素直に引いて、明日からよろしくお願いしますとしか言わなかったのでわざわざ會澤の所に召喚するのも面倒くさいと考えて声は掛けていなかった。
「そう言えば色々あって言い忘れちゃったけど、お兄ちゃん遅刻してごめん!
こいつと会って、ああなってこうなって、あんなところにつれてかれて、まさかああなるなんてって感じで気づいたらこいつに喫茶店の場所知られた上に遅れちゃった」
正直ありすの説明では1ミリたりとも状況が分からないが、結果的にありすは梨芋と会ったことで時間を取られて遅刻をした。そして梨芋は俺が喫茶店で働いている事を知り、急いで家の用事を済ませてこちらに来た。
今までの話をまとめた上で、俺の想像を少し交えるとこんな解釈になるだろう。
「なんかすっごくにぎやかでたのしいね!
それで、おにいちゃんこの人はだれぇ?」
「わぁ、ちっちゃい娘がいます~
仁昭さんこの娘は誰なんですか?」
あかねが梨芋の事を指さして名前を聞くと、梨芋もあかねに近づいて俺に名前を聞いてきた。
何時の間にか俺がこの賑やかな大所帯の中心になってしまった様だ。
「このお姉ちゃんは梨芋って言うんだ、わけあって毎日ジョギングに付き合っている
この娘はあかね、俺の下宿先のマスターの孫娘さ」
俺が紹介を挟むと、あかねは梨芋の近くにとことこと近づいてくる。
やはり、あかねは初対面の人間に対しても人懐っこいな。
「よろしくね!あかねちゃん」
「うん!よろしくね!」
自己紹介が済んで直ぐの事である。ありすはあかねに耳打ちする様に、かつ梨芋にも聞こえる様な大きさで話し始めた。
「あかねちゃん、この娘は梨に芋と書いてりうだから
親しみをこめてイモおねえちゃんって呼ぶと良いよ」
「もう勝手な事を吹き込まないで!ありすちゃ~ん!!
あかねちゃん!わたしの事はりうおねえちゃんで良いからね?」
先ほどまで寂れていた喫茶店はこうして騒がしい物へと変わっていった。
「あかねちゃん、ここもう少し丁寧に折らないと綺麗な鶴ができないよ
そしたら、ここはこうして、後はこう開けば!」
「すっごーい!!ありすおねえちゃんっておりがみとくいなんだね!」
あかねは折り紙を持ってきて、ありすと一緒に鶴を折っている。
前、あかねは学校の宿題で折り紙を折ることになったと話していて、それを手伝って欲しいと言われた事があるが、俺は折り紙を折った事がないので役に立たなかった。
ありすはあっと言う間にあかねと仲良くなった様だ。
ありすはあまり他者に心を開かない性格だが、あかねの明るさの力なのかありすはあかねに対して心を開いている。
こんな感じで梨芋にも心を開いてくれれば良いのだが、梨芋の事は相変わらず芋女と突き放した態度を取っている。
「今度は、少し遠くに行ってみるか。
『南丘ノ外公園』は広いし、そこを全て回れば痩せられると思うぞ」
俺はありすに突き放されて手持無沙汰になってしまった梨芋にどの様にダイエットしていくべきか話をしていた。
まだまだ本気で痩せたいと梨芋が思っているかは微妙だが、前よりは本気になっている様だ。
「そうですね!景色も広いですし!
後……南丘ノ外公園には名物のアイスクリームの屋台が……」
せっかく俺が大きな公園でジョギングを提案しても、この様子だとアイスクリームを食べ過ぎて無駄になってしまいそうだ。
やはり、本人は本気ではないようだ。
一時期は本気で彼女のダイエットに協力すべきだと考えて、心を鬼にしていたが、今では現状維持ができれば十分だろと言った意識の低い目標でやっている。
「おい!芋女、勝手に私のお兄ちゃんを連れて遠出しないでよね
南丘ノ外公園に行くなら私も付いていくからね」
折り紙をあかねと折っていたありすは目ざとく話題に入ってきた。
しかし、その様子を気にすることもなく梨芋は笑顔でこう言った。
「ありすちゃんはお兄ちゃん思いなんだね、じゃあ今度3人で行こうか」
その言葉を聞いてありすは、えっ……ああ……うんと微妙な態度を取りながら言葉を漏らす。
「あれ……どうしたの?ありすちゃん」
「いや……別に、その様子なら安心したと言うかまだなんだなって思って……」
お昼を喫茶店で食べ終えて、雑談の時間が始まっている。しかし、雑談の時間が始まってからもかなりの時間が経過した。
もう15時だ。梨芋には用事がある様なので、そろそろありすと梨芋はここを出て、また寂れた喫茶店へと戻る時間が来ていた。
俺は店を出て二人を見送った後、そのまま店へと戻った。
戻ってくると會澤は何時もとは違う優しい雰囲気で俺の肩を掴んできた。
「休養から1週間、初めての表の世界で上手くやっているみたいだな……
正直、心配していたから、まさかここまでおまえを中心に賑やかな面子が揃っているとは思わなかったぞ」
會澤は俺の事を拾って育ててくれた人間。俺にとって會澤は父親であるし、會澤にとって俺は今では唯一の息子だ。
會澤なりに俺が新生活を営むと言う事に心配はあったのだろう。
しかし、今見た光景で彼はどうやら安心をしてくれたようだ。
「まぁな……そのありがとな、下宿させて貰って
あんたが休養中ここで過ごして良いと言ったからこの出会いがあったんだ
あの時あんたがこう申し出てくれて感謝してるよ」
俺は素直に會澤に感謝を伝えた。
彬鷹から休養を言い渡された時、俺はどうすれば良いのか分からなかった。
今まで裏の世界で生きてきた俺が表の世界で生活をする。休養中、どこに住むか、何をするか何も分からない。
そんな時俺が頼る人間はいなくなっちまった春海を除いたら、たった一人しかいない。
それはこの男『會澤紳』、ただ一人だけだ。
會澤に休養の事を相談すると、その間自分の家に下宿することを申し出てくれた。
息子が就職するまで住んでいた部屋を物置として使用しており、その部屋を掃除すれば部屋として使用できると言い、俺が来るまでに準備をしてくれた。
ちなみにその準備にあかねが協力してくれていて、俺が来るまでどんなお兄ちゃんが来るのか楽しみとずっと言っていたそうだ。あかねにもきちんとお礼を言いたい所だ。
俺は拾ってくれた會澤に恩を返すために組で仕事をしてきた。俺は不死身だから、何度でも命が掛けられる。実際普通の人間ならば既に100回くらい死んでいるだろう。
この無制限にある命を會澤のために使う。それが俺の生き方であり、會澤に対しての恩返しの方法だった。會澤が組を抜けた後でも、それが會澤のためや、いなくなった春海のためにもなると思い戦い続けてきた。
勿論、普段は會澤に対して感謝の気持ちを示すことは滅多にないが。今がお礼をするタイミングだと思い俺は感謝の意を伝えた。
「珍しいな、おまえから感謝の気持ちが聞けるなんて
それにしてもおまえ……表の世界の繋がりが女ばかりとはな!
男の友達とかいなかったのか!まさかおまえ固そうなキャラして下心で一杯だったとか……」
「うっせーよ!成り行きとか色々あんだよ!」
と心で思いつつも数秒後には軽口を言い合っているのが會澤とのやり取りだ。
「しかし、それでは俺のサプライズもあんま受けねぇかな……
そろそろ来るかな……」
サプライズとは何の事だろうかと思った刹那、鈴の音が扉の開いた衝撃が大きかった事で何時もより大きな音で鳴り響いている。
そこには、昔から良く見慣れているあの顔があった。
「久しぶりだなぁ!仁昭、元気にしてたかよ!」
「まぁぼちぼちな……おまえも相変わらずみたいだな『恭介』」
続く
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