13 王城攻防戦(後編)

 アーデルハイトを人質に取ったクロトは、彼女の髪を無造作に掴むと、無理矢理メイナード先生の方へと向けます。


審判下す雷帝インクイジター!この娘の命がどうなってもいいのかっ!」


 懐から取り出した短剣を。アーデルハイトの首筋に当てながら、クロトが叫びます。


「くっ......」


 メイナード先生が動きを止め、苦悶の表情を浮かべます。


「卑怯者め!」


「その子を離せ!」


 クロトの余りに卑劣な行動に、周囲から非難の声が上がります。


「なんとでも言うがいい、異端者どもよ。正義の為ならば、神もお許しになられる!」


 ......全くもって狂人の理屈ですね。神とやらがそんなに偉いのでしょうか。


審判下す雷帝インクイジターよ。娘の命が惜しければ、武器を捨てよ!」


「くっ。......やむを得ませんね」


 そう言って、メイナード先生が手にした杖、"ケラウノス・トネール"を足元に落とします。


「メイナード先生!どうかわたくしに構わ――」


「黙れ!小娘!」


「あうっ!」


 クロトが突き付けた短剣の圧力を強めます。

 切っ先がアーデルハイトの柔肌へと刺さり、僅かですが血が流れています。


「言われた通り、武器は捨てたでしょう!乱暴はやめなさい!」


 余裕を無くした表情で、メイナード先生がそう叫びます。


「ああ、そのまま動くなよ?審判下す雷帝インクイジター


 そう言って、中空へと水の塊を生み出します。

 それは、メイナード先生へと向かって直進し、そのままの勢いをもって殴りつけるようにぶつかります。


「ぐぅっ」


 メイナード先生がうめき声を上げますが、クロトは、そんなのお構いなしとばかりに、次々と水の塊をぶつけていきます。

 片手でアーデルハイトを取り押さえたまま、魔法を放っているせいか、一発一発の威力は弱く、それが逆に嬲り殺しのような様相になっています。


「メイナード先生っ!」


 クロトに捕まったままのアーデルハイトが、悲鳴にも似た嘆きの声を漏らします。

 自分のせいで、また他人が犠牲になる、そんな思いが彼女の表情からは伝わってきます。

 己の無力さを嘆き、苦悩しているのでしょう。


 ......これ以上は見ていられませんね。

 フォローをすると約束していましたし、何より大事な友人の危機です。

 少々タイミングは悪いですが、私は助けに入る覚悟を決めます。


「......もう嫌」


 私が、動こうと一歩踏み出した時です。

 そんな呟きが、耳に届きます。


「......もう、絶対に嫌ですわ!」


「小娘ぇ!黙れと言っているだろうがっ!」


 クロトが厳しい口調で脅しをかけますが、アーデルハイトの目には強い意志が宿っており、怯みません。


「刺すなら刺しなさい!さぁ!わたくしはそんな脅しには屈しませんわ!」


 覚悟を決めた表情で、そうアーデルハイトが叫び、クロトへと抵抗します。


「くそっ、暴れるな!」


 アーデルハイトが激しく動いた為、突き付けられた短剣の切っ先が、肌へとめり込み、そこから血が流れてきます。

 ですが、そんな事などお構いなしに、アーデルハイトは抵抗を続けます。


「いいから、その手を離しなさい!」


 2人がもつれ合うようにして動き回っているせいで、下手に手を出すとアーデルハイトまで巻き込む危険がある為、私は黙ってその様子を眺めているしか、出来ませんでした。


 その時です。

 クロトが手に持っていた"ケリュケイオン・ヴァッサ"が突然、震えだします。

 湖のようなその表面が、いくつも波紋を広げながら、揺らめいているのが見えます。


「な、なんだ!?」


 やがて、その揺らめきが頂点に達したかと思うと、今度はそこから水色の輝きを放ち始めます。


 誰もが突然の出来事に息を呑む中、ケリュケイオン・ヴァッサが意志を持ったかの様に輝きを爆発させ、クロトを弾き飛ばします。

 それによって解放されたアーデルハイトの元へ、ケリュケイオン・ヴァッサがフワフワと浮かびながらゆっくりと近づいてきます。


「これは......」


 アーデルハイトの目の前で一度停止し、それから2度3度、瞬くように光を放ちます。


「わたくしに......使えと言ってるのですか......?」


 その言葉に頷くように、ケリュケイオン・ヴァッサが強めの光をもう一度放ちます。

 アーデルハイトは、釣られるようにして手を伸ばし、それを掴み取ります。


「これが......神器......」


 ケリュケイオン・ヴァッサを撫でるように、その感触を確かめながら、アーデルハイトはそう呟きます。


「小娘がぁ!我が神器を返せぇ!」


 そんな叫びを上げながら、起き上がったクロトが、アーデルハイトへと迫ります。

 アーデルハイトもまた手にしたケリュケイオン・ヴァッサを構え、迎撃の姿勢を見せます。


「させませんよ!」


 そんな二人の間へと割り込む影があります。


「これ以上の狼藉。この私が許すとお思いですか?」


 そうメイナード先生です。

 攻撃を何度も受け、ボロボロの姿になりながらも、クロトの前へと立ち塞がります。

 その隣には、ケリュケイオン・ヴァッサを構えたアーデルハイトの姿もあります。

 その動きに呼応するかのように、他の先生方も、クロトを取り囲むように動き始めています。


「くそっ!」


 味方はおらず、頼みの綱だった"ケリュケイオン・ヴァッサ"も、もはやその手には無く。

 クロトは完全に追い詰められていました。


 ......今がチャンスですね。

 私もそろそろ一働きしないと。


 では行きましょう!


「っがはっ!?」


 クロトが突然態勢を崩し、口から血を吐き出します。

 その原因は一目瞭然。

 彼のお腹から生えている私の愛剣"シュタイフェ・ブリーゼ"によるものです。


 何が起こったのか分からない顔のクロトに対し、隠れてずっと待機してあった風の刃を次々と差し向けます。

 それらによって為す術もなく、全身を切り刻まれたクロトは、全身から血を垂れ流し、やがてゆっくりと倒れました。


 刺さった剣をグリグリと動かし、クロトの死を念入りに確認した私は、自身に掛けていた隠蔽魔法を解除し、その姿を表へと出します。

 その時、弾みで血溜りを踏んでしまい、靴が汚れてしまいました。

 むぅ、これは後でしっかりと洗わないといけませんね。


「これは......」


 メイナード先生が、呆気に取られた顔でこちらを見ています。

 見れば隣のアーデルハイトも似たような表情です。


「お二人の見せ場を奪ってしまい、申し訳ありません。ですが、この方が安全確実だと思いましたので......」


 2人の為の行動とはいえ、少し空気を読まないことをした自覚はあります。

 ですので、その点はきちんと謝罪しました。


「姿を見ないと思っていたら......。一体今まで何を?」


隠形隠蔽ステルスハイドの魔法を使って、クロトの背後に陣取っていました。攻撃の準備を整えながら、隙を窺っていたのですが、中々チャンスがありませんでしたので......」


 結局、今になってようやく隙を見出し、無事、クロトに止めを刺すことに成功しました。

 変な悪足掻きをされる可能性を潰した、という点では、そう悪くない働きだったのではないでしょうか?


「......そう、ですか。いえ、まあ......。そうですね、無事に終わったのです。良しとしましょうか......」


 メイナード先生が、かなりお疲れの表情でそう言います。

 隣のアーデルハイトに至っては、何か口をパクパクとさせているだけです。

 声も出せない程に疲れたのでしょうね。クロトもかなりの強敵でしたし、それも仕方ないことでしょう。

 後始末が済んだら、ゆっくりと休むといいですよ。


「終わった......のか?」


 部屋の奥に立っていたラウラ団長が、緊張の糸が切れたのか、気が抜けたような様子で、そう呟いていました。

 それと同時に、ずっと維持していた結界が、ゆらゆらと揺れるように消えていきます。


「ええ、終わりましたよ。......お疲れ様でした。ラウラ団長」


「うん......ゴホン。......ええ、助かりました。救援、感謝致します、マクスウェル教授」


「皆さんの頑張りのおかげですよ」


「うむ。全くもって、その通りであるな」


 ラウラ団長の背後から、ツカツカと王冠を被った50代程の男性が前へと進み出てきます。


「皆の勇戦しかと見ていたぞ!王族を代表して、儂からも礼を言わせてもらおう」


 威厳に溢れた声で、そう礼を述べます。

 叫んでいるわけでないのですが、とても良く通る声です。


 あれは、アードリアン・グランフォール陛下、ここ正統グランフォール王国の国王様ですね。

 大きな剣を腰に下げており、一瞬、護衛の騎士かと見紛うほどのガタイの良さです。


「良くぞ参った。其方らが来なければ、今頃どうなっていたことか......」


「いえ、陛下。救援が遅くなってしまったこと、誠に申し訳ありません」


 メイナード先生が、皆を代表して王の言葉に答えます。


「良い。其方らが懸命であったことは、余も理解しておる。しかし、多くを失ったな......」


「今の王族方の無事な姿を見て、皆、本望であったと思っていることでしょう」


 王の呟くような声に、ラウラ団長がフォローを入れます。


「そうだと良いがな......」


「ホントにそうかな~?」


 王の悲し気な呟きに茶々を入れる声が、どこからか響き渡ります。

 その口調はとても軽く、少年のような声色と併せて、どこか場違いな感じを覚えます。


「誰だ!」


 誰何の声を上げつつも、ラウラ団長が即座に"絶対遮断結界アブソリュートサンクトゥム"を発動させます。

 王族たちの周囲に再び、半透明の膜が出現します。


「そんな、やわっちい結界で安心してると危ないよ~?」


「なっ!?」


 シュッと黒い影が、視界を過ぎったかと思うと、次の瞬間には破砕音と共に、鋭利な刃物で切られたように結界がパッカリと真っ二つに割れます。

 結界のギリギリ内側にいた陛下が、突然の変事に驚き、2歩、3歩と後退ります。


「ねっ、言ったでしょ?」


 そこには、全身を黒で包んだ小柄な人間が立っていました。

 背格好と声から察するに、恐らく少年でしょうか。


 恰好こそ、セブンズベトレイヤーの人たちと似てはいますが、受ける印象は全く異なります。

 彼らをただの黒とすれば、目の前の立つ少年のそれは、光をも吸い尽くす漆黒の闇と言ったところでしょうか。

 現に、照明により明るい室内にあって、その少年の顔立ちは判然としません。


「あなたは一体......?」


 そう問いかけながらも、杖を構えるメイナード先生の手が、震えています。

 私はその事実に驚きます。

 メイナード先生程の方が、恐怖するなんて、あの少年、一体何者なのでしょうか?


「そんなに怖がらなくてもいいよ~。玩具オモチャを回収しに来ただけだからさっ」


 そう言うやグルンッと首を急旋回させ、アーデルハイトの方へと顔を向けます。

 見た目の印象に反して、口調や動作はいっそコミカルといってもいい程に、軽いものです。

 そのギャップが、その少年の得体の知れなさを、わざと演出しているようにも感じられます。


「へぇ......!」


 少年はアーデルハイトの傍まで、瞬間移動でもしたかのように、一瞬で間合いを詰めます。


「きゃっ」


「ふんふん」


 少年は顔を寄せ、アーデルハイトが持つケリュケイオン・ヴァッサを、軽快な動きによって様々な角度から見回しています。


「凄いね~。ちゃんと懐いてるや。君、名前は?」


「へっ?......わたくしですか?あ、アーデルハイト・ブラントミュラーと申します、わ......?」


 何を素直に答えてるんですか!アーデルハイトのお馬鹿!


「ふーん。そっか~。キミが~。へ~。成程ねぇ」


 何だか分かりませんが、少年は一人で勝手に納得したように何度も頷いています。


「よし、決めた!アーデルハイトちゃん、だね。......ボクはキミを応援することに決めたよっ!」


 何か良く分からないことを色々と言っていますが、その背中は隙だらけです!


 私は、魔法によって気配を絶ったまま、その少年の背後へと忍び寄ります。


 どなたかは存じ上げませんが多分、敵なんでしょうし、とりあえず斬って黙らせましょうか!


 "シュタイフェ・ブリーゼ"に風を纏わせ、それを私は思いっきり振り下ろします。


「残念。ボクの隙を突くには、その程度じゃ、ちょっとお粗末かな~」


 振り下ろした剣戟が"ガツン"と弾かれます。

 見れば、いつの間にか手に持っていた大鎌によって、私の奇襲は見事に防がれてしまいます。


「とは言え、この状況でまともに動けただけでも、褒めてあげないといけないのかな?」


 その言葉に、周りを見渡せば、皆が一様に腰を抜かしたように、へたり込んでいました。

 あのメイナード先生ですら、辛うじて杖を支えに立っているような状態です。

 言われてみれば、全身が鉛のように重たい感じを受けます。

 これは、少年から漏れ出てくる魔力の威圧によるものですね......。


「普通の人間じゃ、こんな風になるのが当たり前なんだけどな~。君、名前は?」


「名前を聞くなら、先に名乗るのが礼儀では?」


「う~ん。残念だけど、ボクの名前は教えて上げられないんだよねぇ。......代わりにボクらの組織を紹介することにしようかな」


 少年が芝居がかったような仕草で手を振り上げると、その後方に黒い人影がぽつぽつと現れます。

 その姿は、全員、影がかかったようになっており、シルエットだけしか分かりません。


「おい、ろくな用事もない癖に呼び出すんじゃねぇよ!」


「マスター、このような無意味な行動、時間の無駄だと存じます」


「全く、僕もそんなに暇じゃないんだけどなぁ」


「ねぇ、私今仕事中だったんだけど、何、邪魔してくれてるの?」


 人影たちは、どうやら少年に対して何かと不満があるらしく、各々好き勝手に文句を言っています。

 組織だと名乗る割に、どうも纏まりに欠ける人たちの様ですね......。


「へぇ。これがあなたの組織、ですか......。へぇ」


「む、君、今ボクのこと、馬鹿にしたでしょ!全く失礼だな!」


「で、この人達が一体なんなんですか?」


 余り興味は湧きませんが、話の流れ上、一応聞いておくとします。


「そう、この子達が、ボクが造った組織"ブラックカーテン"の栄えあるメンバーだよ!」


 自信満々な口調で、少年がそう断言します。

 ブラックカーテン。言い換えれば黒幕。......また安直なネーミングですね。


「そんな組織名を名乗って、実は今回の事件の黒幕は、自分たちでした~。なんて言うつもりなんですか?」


「そう!そうなんだよ。実はクロト君がリーダーをやっていた、えーと、そう!セブンスなんちゃらってとこも、実はボクらが操ってたんだよ!」


「へぇ、そうなんですか。それは凄いですねぇ~」


「あ、この反応。この子、絶対に信じてない!......ホントに失礼な子だなぁ」


 確かにこの少年は、実力者なのでしょうが、どうにもそういった裏から操るなどといった小細工が、得意なようには見えません。


「ともかく、組織の名前は教えて上げたんだし、そろそろキミの名前も教えてよ」


「はっ!誰が、いつ、名前を教えるなんて言いましたか?......そもそもあなたの組織になんて、私はこれっぽっちも興味なんてありませんし」


「あ、騙したな!卑怯だぞぉ!」


「はぁ......。別に騙してなんかいませんよ。あなたが勝手に喋っただけでしょうに......」


 なんでしょうか、このノリ。なんだか相手にするのが疲れますね。


「はぁ。もう面倒臭い人ですね......。エステル。エステル・クロドメールですよ。以後お見知りおかなくて結構です」


「ふ~ん。そうかー。キミがあの、ねぇ......。エステルちゃん、キミってちょっと、いやかなり気持ち悪いよ?」


「いきなり、気持ち悪いとはなんですか!......全く、失礼な人ですね」


「うーん、アーデルハイトちゃんとは違ってキミのことは、なんか応援したくないなぁ......」


 アーデルハイトは良くて、私はダメですか、そうですか。

 別に構いませんけどね。


「わざわざあなたから応援なんて。別にして貰わなくても結構です」


「応援しないっていうか、むしろ今ここで、キミを始末しちゃいたいくらいだよ。......でもそれやったら、絶対、後で怒られるし......」


「何をごちゃごちゃと......」


 今度こそこの少年を黙らせるべく、再び剣を構えます。


「はぁ、もういいや。今日は帰ることにするよ。またね。アーデルハイトちゃん。エステルちゃん」


「逃がしませんよ!」


 私は、突撃し、少年へと剣を振り下ろします。

 今度は、大鎌によって防がれることはありませんでしたが、そこには既に少年の姿はなく、ただ宙を斬るだけに終わってしまいました。

 見れば、少年だけでなく、後ろにいたはずの黒い人影も、一人残らず綺麗サッパリ消えていました。

 どうやら全員逃がしてしまったようです。


 背後から"ドサッ"という音が、いくつも聞こえてきます。

 振り返ってみれば、そこは死屍累々な有様でした。

 誰も彼もが、地に膝を付け、あるいは横たわっています。

 先程の少年の威圧のせいか、あるいはそれから解放された安心感からかは、わかりませんが、気を失っている人の姿も数多く見受けられます。


「エステル君......本当に君には驚かされる」


 メイナード先生が、呆れ半分にそう言います。


「エステル!余り無茶をしないで下さいませ!」


 アーデルハイトの方は、どうやら純粋に私の身を案じてくれていたようです。

 その目尻に、涙が溜っています。


「ご心配お掛けして、申し訳ありません」


 ここは素直に謝っておくことにしましょう。

 そんな私に、後ろから声が掛かります。


「むぅ、なんと命知らずなことよ。其方はたしか、クロドメール家の娘だったな?」


「はっ。その通りです、陛下。私は、クロドメール侯爵家の3女、エステルと申します」


「成程のぉ。ロベルトの娘に、斯様な剛毅な者がおったとはな......」


 父のことを思い出しているのでしょうか?

 何故だか陛下が、少し遠い目をしています。


 少しの空白を置いて、陛下はアーデルハイトへと視線を向けます。


「そして、其方がケリュケイオン・ヴァッサに認められたと。......確か、其方はサイラスの孫娘だったな」


「は、はい」


 アーデルハイトが緊張した面持ちで、ケリュケイオン・ヴァッサを握り締めています。

 そう言えば、正統王国の至宝たる神器の一つを、ナーミア教国出身の彼女が手に入れることになりましたが、もしかして、それってちょっと不味いんじゃないでしょうか。


「それは長く使い手が居なかった八星神器アハトシュテルンだ。どのような権能があるのか、余り記録も残っておらぬ。上手くそれを御すること、期待しておるぞ」


「そ、それでは?」


「うむ。何、教国と我が国は、強固な絆で結ばれておる。ならば構わぬさ」


 ですが、そんな私の危惧は、どうやら杞憂に終わったようです。

 辺りに、ホッとした空気が流れます。


「さてと、余り雑談に興じている余裕もないのう。後始末をせねばな......」


 そして、陛下の指示の元、城内に残党の捜索、怪我人の治療などが行われました。


 こうして、多数の犠牲者を出しながらも、ようやくこの一件は終結を見ました。

 ですが、この一件が、これから先に起こるもっと大きな事件の、ただの序章に過ぎなかったと私が知るのは、もっと先のことでした。

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