2-6 ぼくの決意と敬礼と

 ぼくは、生まれて初めて覚える得体の知れない感情に全身をわななかせながら、一度だけ長い深呼吸をしたのちに、頭を下げている大人たちに向かって言った。


「……大君大臣、葵さん、どうか頭を上げてください。ぼくには、断る理由がありません——いえ、ぼくが、ぼくこそが、必ず枢機を見つけ出します! 洗脳を解いてみせます! 連れ戻してみせます!」


 数拍の間を置いたあと、赤いつむじを見せたままで大君大臣が言った。


「……ありがとうございます、稀殿」


 そして葵さんと共に頭を上げて再び制帽を被ったあとで、キリンとぼくを力強く見つめながらこう続ける。


「それでは、お二人に託させて頂きます。我が国と、人類の未来を。平和を」


 ぼくは一旦横を向いて、キリンと目を合わせたあとで前を向き、


「「『はっ!』」」


 と言って、一緒についに、敬礼をした。予想していた通りちょっとだけ恥ずかしかったけど、でもさっぱりとした、誇らしい気持ちの方がずっとずっと大きかった。

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