じょおう
今や、"くるくる"の威光は数百頭にまで広がっていた。朝貢で得られる食糧は余りに余り、やがて側近が分け合うようになった。"くるくる"は面会に来た者の触腕を軽く撫ぜ、忠義を労った。この目下への『あいさつ』は、徐々に暗黙の上下関係を形作った。ピラミッド状の地位が形成し、"よわのろ"のような初期から寵愛を受けていた者を除けば、力のない者はみな片隅へと追いやられていった。"くるくる"よりも力の強い配下も現れたが、頭脳では叶わず後塵を配した。
女王"くるくる"の命令は絶対だった。昔話でしか聞いたことのないような、寒冷地方の植物さえも、望めば手に入ったのである。"くるくる"の名前自体にひれ伏す者すら現れた。群れを持たぬ者にも、伝聞によってその権力が及びつつあるのだった。
幸いなことに、"くるくる"は退屈を堪える必要がなかった。いくらもしないうちに、こんな報せが届いたのである。
「おお"くるくる"、我が主。私は境界帯を二週も進み、住民を勧誘して参りました。ですが……」
「何があったのかしら。いってみなさい」
「奴はこう言ったのです。『"たかけり"様の許しなく行くことは出来ない』と」
それは、この星の上で同時多発的に、いくつものコミュニティが形成されていることを意味した。"くるくる"としても、自分以外に王がいることは新鮮な驚きだった。しかし『更にその先』に目を付けたのは、持ち前の負けず嫌いのおかげであったと言えよう。
彼女は諦めなかった。
「触腕が強い者をなるべくたくさん集めなさい。食糧をありったけ持って、"たかけり"とか言う奴に会いにいくわよっ」
「僕は?」
「ついて来なさい、私が"たかけり"とやらに勝つところを見なさい」
「?」
「私がそいつより上になるのよ。わからないの?」
「わからない」
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